ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

著者 : 森達也
  • 角川書店 (2003年8月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048838283

作品紹介

王位を継ぐ代わりに、祖国解放の独立運動に身を捧げたクォンデ。革命家ファンボイ・チャウとの運命的な出逢いによって、一九〇六年日本を訪れる。犬養毅や玄洋社の頭山満、新宿中村屋相馬愛蔵・黒光夫妻ら、留学生を支えた日本人との交遊、そして満州国建国に奔走したアジア主義者大川周明、松井石根の暗躍-。「僕らの王子は日本に殺されたようなものなのに、どうして日本人は誰もそのことを知らないのですか」ひとりのベトナム人留学生の呟きに導かれ、日本に憧れて翻弄されつづけた王族の数奇な生涯が鮮烈に甦る。

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラーの感想・レビュー・書評

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  • ベトナム

  • 史実と小説が混じって書かれている。あの時代にこんなことがあったのか。知らなかった。フエに行ってみたくなかった。

  • 図書館で借りてきた本。

    実は「森達也」コミュをこないだ発見して入ってるんだけど、過去ログ読んでたときに森達也自身が(自分のコミュに入ってる、この人)この本に対して「僕の最高傑作かもしれない」って書いてたんで、それじゃ、と思って借りた。

    確かにこの本、いつもの「構成」じゃなかった。まぁ既に半世紀前に亡くなってしまっている人、と言うことで生前を知ってる人がほとんどいない、と言うのと、本人も自分の身の回りで起こったことを周囲に語ってるわけじゃないから、今までのように関係者から話を聞いて、、というドキュメンタリーにはできなかったのだと思う。

    しかし、今さらながら思うのが日本は非西欧諸国の人にとって「憧れられる国」だったんだよね。わたしはそこに対しては徹底的に無自覚だった。そしておそらくこの「無自覚さ」が「日本に憧れている外国人」の存在に気が付かないか、無視しても大丈夫と思っているか、、そういう罪を犯していたのかな、という気がする。

    自覚できなかった理由は簡単で、明治維新以降の歴史をわたしは知らなかったから。こんなに非西欧諸国の人から日露戦争に勝利したことが評価されていたことを知らなかったから。

    ただ、だからといって手放しに「日本万歳」になってはいけないのはもちろんで、こういう事実もある一方、その事実が今度どういうことを引き起こしたのかは十分に知った上で自覚すべきだと思う。わたしたちは誇れる歴史と誇れない歴史の両方を持っていたのだ。そしてそれを作り上げた民族性は「優しくもありながら凶暴性も併せて持っている」ということ。それを自覚しなければならない。

    しかし、ベトナムから来た、このクォン・デって人は何を思いながらずっと日本にいたんだろう、と思う。もちろん、自分の故郷に帰りたかったのだろう、それは分かる。しかし、それにしてはこの人は何も考えなさすぎる。もし、日本が戦争に負けるのがもう少し遅くて、この人がベトナムに凱旋(?)したとしても、日本の傀儡政権になるのは目に見えている。

    それが後世のベトナムで「クォン・デは日本に頼りすぎていた」という評価なのだと思う(もちろん、この人の評価はそれだけじゃないし、あと複雑なベトナムの歴史も絡んでくると思う)。

    あー、なんかこういうことが書きたかったんじゃないのに。なにかうまく言葉にならない。

    「時代に翻弄され続けていた人」なんだと思う。それはある程度仕方がないが、それにしても「目的を達成するためには何を自分はしなければならないのか」と言うことを戦略的に考えることができなかった人なのだと思う。

  • 再読(2011/04/03)

  • 正直、タイトルを見て期待した内容、イメージしたベトナムのラストエンペラーの人物像と実際の内容には乖離があった。志は確かだが革命家として不可欠な行動力に乏しく、情勢を読む目も持たない。

    読後のクォン・デに対するイメージはあまりに頼りなく不運な男。

    しかし、祖国独立のために日本に亡命したベトナムの皇族に対しての日本の扱いはあまりにひどい。自国の情勢によって利用したり、見捨てたり、また利用したりと。
    それはそのままクォン・デを崇拝し、クォン・デによる祖国解放、独立を信じ続けたベトナム国民に対する扱いでもあると思う。

    最後の最期までベトナムを裏切り続けた日本でこの人物、この事実を知る人はほほんどいない。
    そして祖国ベトナムでもクォン・デの存在が忘れさられようとしている。

    著者の言う「無自覚に忘れさる日本人」の一人に自分はなりたくない。

  • 森氏の著作はどうしてこうも個人の感傷に満ちているのか。そこがどうしても馴染めない。
    学生時代にベトナム史と浅からぬ縁はあったものの、「最後の皇帝の弟」のことは知らなかった。その存在を知ることができたことは大きい。当時の日本の政策を絡めて推論していく筆致は楽しめる。
    とはいえ著者個人にひきつけた記述が多すぎる。それが著者のスタイルなのだとは承知しているものの、本書に関してはもう少しドライな内容であってほしかった。

  • もう一人のラストエンペラーというタイトルに惹かれて手に取った。
    日本で客死したベトナム王朝の末裔であるクォン・デを取り上げた一冊で、今まで知ることの無かった近代史中のエピソードに触れることができる。

    越南国の皇帝になるはずだった男、クォン・デ。王族の身ながらベトナムの独立を志し日本へ渡った。歴史に埋もれてしまった軍部の謀略と、彼の波乱万丈な人生を掘り起こす。そんな内容を期待して読み始めた。しかし、本書で彼の人生は中途半端な物としてしか描かれない。

    本書で描かれるクォン・デにはそれほど人間的な魅力を感じられない。彼は何をどうしたかったのか。日本に来れば即それが革命へと繋がると信じていたのか。その部分は本書の中でも「日本に依存しすぎた」という表現で幾度と無く語られる。

    そうだろうか。彼は日本に依存していたというよりも、独立を求めるベトナムの王族だということに依存していたのではないだろうか。そして、そこから先に進むことをしなかった。神輿であることに甘んじて革命家になろうとはしなかった、そう思える。酷な言い方をすると、彼は何もしなかった。

    すばらしく魅力的な題材だが、資料の少なさからも本著自体も中途半端なものとして終わっているのが残念。どこまでが史実でどこまでが創作なのか不透明な構成や、突然入り込む作者の主観や紀行にも最後まで抵抗があった。単行本として出す以上、主題ははっきりするべきだと思った。

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