誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048850896

感想・レビュー・書評

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  •  本書の主張を粗くまとめると以下の通り。

     国益を追求した政治家・小沢一郎を、それによって利権が侵される国内・外の勢力が結託して政治的影響力をほとんど潰した。
     国内の利権勢力の中心は中央官僚機構。実は日本の政策決定のほとんどは官僚機構がになっていて、ほとんどすべての政治家は政策を打ち出すことはほとんどない。極論すれば選挙地盤へのバラマキしかやっていない。
     このようなあり方を小沢一郎は変えようとしたが、アメリカと日本の中央官僚組織が一致協力して小沢潰しキャンペーンを行った。これが表題の「誰が小沢一郎を殺すのか?」の意味。
     中央官僚が国の政策を決めるという形は他のOECD諸国には見られない日本独特な形だが、法律のあり方も日本独特。自由な解釈が出来るように作った法律を官僚が恣意的に駆使するという形だ。これらのしくみと官僚が飼い慣らしたメディアを使って、スキャンダルによってターゲットにした人物の影響力をほとんどなくすことができる。

     以上が本書の主張の大まかな内容。講演をするたびに「あなたがなぜ小沢氏のファンなのか、私には理解できません」という奇妙な(と著者が感じた)質問を投げかけられたエピソードを紹介していて、このことが、著者に本書を書かせたのかも知れない。

     評者の見るところ、本書の説明は非常に筋が通っていると思う。ただし、多くの人の政治観とまったく異なる説明なので受け入れられにくいかも。しかし人々の政治観は、テレビ局を含めた日本の利権勢力のキャンペーンによって作られているのだという説明も本書の中でされている。
     評者の意見をつけ加えると、民主党下野後は「野党は頼りない」言説をバラ撒くキャンペーンもされた。いやキャンペーンなどではなく実際そうだったではないかと思う人が多いかも知れないが、自民党政府がいかに拙劣なコロナ対策をやっても、ダメダメなマイナンバーカードを推し進めても「自民党政府は頼りない」という声が聞こえたことはない。この意味を考えれば政治観が変わってくると思う。

  • かなり感情的な小沢擁護論
    こういう本が出ることは小沢にとって助けにならないような気がする

  • 孫崎享「戦後史の正体」を読んで関心をもったもの。発行は民主党政権菅内閣時代の2011年3月。さらっと読めそうだと思ったが、日本人の伝統的な行動にまで踏み込んでいて、結構読み応えがあった。

    著者は、日本には憲法も法律もあるにもかかわらず、実際には慣習や不文律の上に成り立っているという。日本には、独り歩きする権力システムに対して異議を唱え、改革を加えようとする者を阻止する仕組みがある。日本の官僚は、日本の非公式な政治秩序を維持するために、自らが法を支配し、法律を権力システムの枠外に置いている。

    日本では、社会の掟に従順であることが権力者の慈悲に報いることであると理解されてきた。明治時代に議会が導入されて登場した政治家は、社会の調和こそが至高な善であるという価値観を汚すものとみなされた。1898年に初めて誕生した政党内閣は4カ月しか続かず、この後に首相になった山県有朋は、内閣が次官や局長の地位を政治家に与える権限をなくし、政党と官僚機構を隔離した。

    日本の官僚は、自分の目的を達成するために、法律の中から適切なものを選び出すという習慣を続けてきた。法律は意図的にあいまいな表現を用いることによって、自分たちが自由に解釈できるようにしている。政治資金規正法も条文があいまいに記されていることによって、野心的な政治家に違反があったと主張することができるようになっている。

    超法規的な秩序を維持しようとするために用いる手口は、対象とする人物を辱めて世間の見せしめにすることであり、検察が陣頭指揮をとって新聞が支援している。検察は、法務省の記者クラブに情報をリークして記事を書かせることによって、政治家をスキャンダルの対象とする。

    自民党が長く政権を維持できたのは、日本の政治システムを維持しようとする保守的な姿勢を検察が支持し、政治資金や選挙などで違反しても騒ぎ立てることがなかったためである。田中角栄は、既存の日本の体制を脅かす存在とみなされたため、ロッキード事件によって逮捕された。小沢一郎も、日本が必要とする抜本的な改革に取り組む能力を持っており、現体制の脅威となりうる人物だったが故に人物破壊の対象となった。

    アメリカは、日本が超法規的で非公式な権力システムを存続させることを支援する代わりに、日本をアメリカに隷属させようとしている。鳩山内閣が退陣に追い込まれたのは、アメリカのジャパン・ハンドラーたちと日本メディアのエリートだった。小沢は、対米関係を対等な形にして日本の主権を確立し、非公式の権力システムや超法規的なやり方を撤廃しようとした。

    日本には欧米とは異なる伝統的な統治システムがあり、明治以降に導入した欧米式の社会システムは表向きのものであるという指摘は的を得ていると言えるだろう。仮に、その伝統的なシステムを官僚が維持していることを認めるとしても、法律をあいまいなものにして、検察が自らの判断によって政治家の生死を決めているとしたら、現実にこの国の権力を握っているのは検察ということになる。さらには、アメリカがその背後で影響力を及ぼしているとなると、無力感さえ感じてしまう。マスコミが報じる政治家のスキャンダルには裏があると考えなければならない。

  • 1993年の政治変動こそは連綿と受け継がれてきた日本の政治システムの仕組みに大きな風穴を開けた。小沢さんの行動が単に政党政治というシステムの構造を変えるにとどまらず、日本の一般人の政治に関する間gなえ方までも一変させてしまった。

    政治の本質とは権力であり、それをどう行使するかということであり、さらには個人やグループが自らの考えに従って権力を行使するために地位を獲得しようと争いあうことである。

    小沢氏は政治を熟知した辣腕家なのである。

  • 日本の政治システムの特異性について、ウォルフレン氏によれば、明治の元勲・山県有朋が、選挙で選出された政治家の活動を妨害するように官僚機構を作り上げたとしています。これは天皇に滅私奉公する官僚という形で体制側を作り、その体制側の守る秩序を脅かす存在として政治家を対立させる構図にしたことによります。
    日本人は、‘調和こそ至高なる善’とする民族だったので、秩序を乱そうとするものは自動的に敵視する性質があり、徹底的にパージされます(怖っ)
    第2次大戦を経た今の体制側は米、官僚、既得権益者層(マスコミ、大企業)で、これが日本の政治を動かしていると解説しています。

  • 『働く君に送る25の言葉』と内容的にさほど違いはないが、より残業をせずに帰ることの重要性、有益生を感じることができた。会社の為に働くのではなく、自分の為に働く。自分の人生の為に働くからこそ、必死になるべき。常に最短で最大の結果を出すことを考える。

  • 以前から何となく感じていたことが、きっちりわかりました。是非読んで欲しい本です。

  •  事実に基づかず、イメージで人を見てしまう危うさ。
     犯罪の事実が無い人を、犯罪者にみたててしまう恐ろしい印象操作。
     わざと悪いイメージの写真を多用し、わざと悪い印象の言い回しをし、
     わざと暗いイメージの音楽を流しながら、異常なまでに悪感情をむき出しに するコメンテーターたちを冷静にみつめると、一体この人たちを何なのか? と報道の仕方を疑ってしまいます。
     これは、小沢さんの報道の時だけに顕著に表れる悪質な報道の仕方です。
     その異常性を、客観的に外国人記者の目で見て書いた『誰が小沢一郎を殺す のか?』カレル・ヴァン・ウォルフレン著という本がありますから、興味が ある方は、ぜひご一読下さい。

  • 小沢一郎氏の政治資金規正法違反に関するニュースはある時期は連日報道されていたが、政治家の不正にはすっかり慣れっこだったので、「またやらかしたのかー」と軽く考えていた。しかし、ネットや一部の週刊誌では、小沢氏を擁護する動きが強く、少し気になっていたので本書を読んでみた。
    読んでビックリ、こんなにも分厚いバックグラウンドがあるとは思わなかった。本当にいろいろあるので省略。


    感想としては、「和をもって貴しとなす」という道徳観は、欧米の政治システムを導入した現代では、むしろ毒なのかもしれない。
    本書を通して、政治家・官僚・検察・メディア・経済界などが相互に絡み合い、歴史や日本人的常識によって雁字搦めの状態から抜け出せない今の政治構造を、少し理解できた。そしてどこの組織もその組織なりの正義のもとに行動し、それらを総合した結果が日本に喜ばしくない結果を招いているという事態に、焦りと哀しさを感じた。


    小沢氏個人がこれまでどのような活動をしてきたか、もう少し掘り下げてもらえれば、どうしてここまであらゆる組織に目の敵にされるのか、もうちょっと理解できたのではないか、と。例えば記者クラブの撤廃とかね。


    ただし、これでFAにしていいのかはまだ分からない。個人的にはもうちょっと勉強が必要だと思った。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1941年、オランダ・ロッテルダム生まれ。「NRCハンデルスブラット」紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長等を務め、世界の各紙誌に寄稿している。

「2012年 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カレル・ヴァン・ウォルフレンの作品

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