ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書 212)
- アスキー・メディアワークス (2012年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048863322
作品紹介・あらすじ
伸び悩むゲーム業界の中で、唯一破竹の勢いを見せるソーシャルゲーム。業界の双璧のGREEとDeNAはそれぞれ3000万以上の会員を獲得し、高い収益率を維持し、急成長を遂げている。今なぜ若者が、このソーシャルゲームに夢中になっているのか?
ソーシャルゲーム業界の成り立ちから従来のゲームビジネスとの違い、ユーザーの変化など、その人気の秘密を紐解く。また、ユーザーがアイテム課金やRMT(リアルマネートレード)にのめり込む様が、「パチンコ的」という批判もある業界の負の側面についても現状とその背景を探りながら、ゲームビジネスのあるべき姿を考察する。
感想・レビュー・書評
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少し古いですが、mixiやGREEの歩んだ射幸心を煽る仕組みづくりを俯瞰できました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
色々とお世話になっている、まつもとあつしさんの著書。
最近、コンプガチャの件で世間を騒がしている、ソーシャルゲームについてわかりやすくまとめたもの。
当然、子供がたくさん課金してとか、射幸性の問題とか色々とあり、そういった部分を指摘しつつも、可能性も書きつつ、といった形で、「ソーシャルゲーム=悪」と思っている人にはオススメします。
充分な取材をしているのと、ネットで聞きかじって実際に触ってなくて批判するのとは天と地の差はあると思いますので。
個人的におもしろかったのが、第三章においてmixiに対する分析。
あと、第五章の「ゲームの未来」は特にソーシャルゲームに限らずゲームの未来ということが書かれていて、ここも良い締めだったと思いました。
この本はコンプガチ規制の話が出る前に書かれた本でとても、良いタイミングで出た本だと思います。 -
今のタイミングで業界関係者は読んでおくと、ソーシャルゲーム全体が俯瞰できる
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昨今ニュースになっている、GREE及びDeNAのガチャ問題。これをきっかけに手にとってみた。が、ゲームにはすっかり疎くなり、ソーシャルゲームにも全く興味がない以上、なかなか主題を把握するのには苦労した。特に第三章は、mixi、Facebookやっていない私にとってちんぷんかんぷん。ただ、ソーシャルゲームも曲がり角にきていることは確かなのだろう。
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コンプガチャが問題になる直前に書かれているが、その仕組みと課題についていたずらに問題視するのではなく、ビジネスとしてきちんと整理されている。
GREEとDeNAの競争は激しい物の、本書を読んでいるとこの競争によってソーシャルゲームの発展が急激になされていることがわかる。
DeNAが1日20億以上の行動tデータから変幻自在にかつリアルタイムにゲームバランスを操っていることが触れられているが、驚きだ。
またゲーム通貨のインフレーション現象にも触れている。
一見デジタルな世界と思われがちだが、実は人の心理を理解して巧みにビジネスが実践されていることが理解できる。
個人的にはあるソーシャルゲーム企業のCSについて最近ヒアリングをさせていただいているが、ネットから離れた素晴らしい活動もされており、コンプガチャ問題でやりだまにあがった業界ながら、それはある意味マスコミの過度な影響であることが冷静にわかった。
コンプガチャ問題が冷や水を浴びせた格好だが、著者の考え方を取り入れると、むしろアナログ的な楽しさや人間本来の興味をうまく活用した、クリエイティブな世界に展開する可能性を大きく秘めた業界であることがわかる。 -
仕事でデータを拾うために読んだ。基本的にはソーシャルゲームの市場は2011年には3400億円を突破するらしく、ケータイを中心にゲームを展開するグリーは売上415億円、営業利益225億円、前年比35%増で、4割程度の非常に高い利益率をほこるそうだ。野球チームを買収したDeNAはもともとネットオークション会社、グリーはSNS運営会社で、ながく2番手の苦渋を舐めてきたため、獰猛に利益を獲得しようとする筋肉質の会社で、互いにゲームが似ているということで訴訟も起きている。また、ゲーム制作会社の「裏切り」に対してリンク停止などの制裁をとるなどの行為が不正競争防止にあたるということで訴訟合戦になっている。ソーシャルゲームはパッケージゲームとちがいゲームバランスを毎日蓄積される2億件もの「ビックデータ」(プレイヤーの行動データ)をもとに日々バランスが調整され、離脱者がでないように運営している。その利益はアイテム課金・確率でアイテムを出す「ガチャ」(ゲーム内貨幣のインフレ抑制機能)であり、ソーシャルなつながり(折角盛り上がっているのに先に進めないのは困ること)によって課金を促し、確率の調整(最初は簡単だがコンプリートするのは難しい)でガチャに没頭させる。とはいえ、無料の範囲で遊んでいるのは75%とのこと。ソーシャルゲームはパチンコであるという指摘があるが、その通りだと思う。アイテムの不正複製やリアルマネートレード(ゲームのアイテムを現実の金で交換すること、詐欺も起こりうる)や、出会い系として利用されるなど、問題はてんこ盛りである。パチンコは国家公安委員会の風営法のもと1玉=4円という枠が決められているが、ソーシャルゲームにも消費者庁が2011年10月に無料プレイでできる範囲と有料課金が発生する範囲を明瞭に表示せよと留意事項を示している。「アイドルマスター」のコンプガチャの例ではカードコンプリートにかかる料金が15,000〜35,000であり、最高値は195,000円くらいかかるそうだ。つまり、「つながり」「射幸心」「ゲームバランスのリアルタイム修正」などで、ユーザーをひきとめているわけだ。簡単にいえば「家畜化」である。海外にも展開しようとしているらしいが、日本のビジネスモデルが通用するとは限らない。ソーシャルゲームのマーケッティング(ゲーミフィケーション)を他に応用しようとの動きもあり、「ソーシャルゲームは社会の役にたつ」と主張する人もいるようだが、著者もぼくもそうは思わない。震災後の南相馬でGama Jamが行われており、比較的小さい投資で始められるゲーム産業に復興の足がかりをもとめる向きもあるようだが、これも疑問である。
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わかりやすくまとまっている。けど、目新しいことは何もなく。
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マネタイズとしてのガチャには厳しい目を向け冷静にその終焉を予期しつつも、コンテンツとしてのゲームには期待し可能性を見る筆者の目は、以前も指摘したように複眼的。
予想通り訪れた消費者庁による規制=コンプガチャ・ショックに揺れるGW明けの今こそ、次の一文が重い意味を持つのだろう。
「筆者はマネタイズの課題がクリアされたとき、この「面白さ」によってゲームというコンテンツの存在がさらに際立つものになることに期待を寄せている。たとえれば焼畑の後に若葉が芽吹くような、そんなイメージを持っている。」 -
ソーシャルゲームにハマらせる仕組みと不毛さをゲーム未体験の人間にもわかるような内容。ソーシャルゲームが流行した時代背景や面倒でない決済システムの重要さに溜息。
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「コンプガチャ」に対する消費者庁の見解が注目されるソーシャルゲーム業界。
個人的には好きではないが、ビジネスモデルは興味深い。
パッケージソフトが重視してきた世界観や物語性を排除したシンプルなゲームを、大規模データマイニングによってリアルタイムに調整しながら、ユーザーリテンションと単価向上を実現する。
ある意味では本質的なビジネスだけど、マネタイズのやり方が強引で、業界の成長性には疑問。グローバル展開も厳しそうな気が。。。
細かい掘り下げはないものの、ザッと歴史と現状を把握するのに最適。