ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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本棚登録 : 429
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048865593

作品紹介・あらすじ

戦争嫌いで怠け者で女好き。そんな少年が、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。戦乱渦巻く世界を行き抜く彼の波乱万丈な半生を描く、壮大なファンタジー戦記、いよいよ開幕!

感想・レビュー・書評

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  • おもろいです。ずっと以前アニメおもろかったので原作もと思ってました/後に「常怠常勝の智将」と呼ばれるイクタ、自らを剣とするヤトリ、イクタすら驚愕した計画を秘めているシャミーユ皇女を軸にカトヴァーナ帝国の滅びが描かれる(たぶん)/かなしい結末が予測されるが?/ちょっと不安定なところもあるけどイクタの現実的かつ飄々とした態度などキャラと会話が魅力的/イクタの作戦も魅力のひとつ。

    /幹部候補生試験に向かう船が沈没、嵐の闇夜にボートひとつで投げ出されたイクタ、ヤトリ、ハロ、マシュー、トルウェイ
    /なんとか流れ着いた島は敵国キオカ共和国の領地だった
    /シャミーユ姫を救った件で異例の帝国騎士の称号授与、軍人にならざるを得なくなったイクタ
    /えーかげんなことと口の悪さと実技の悲惨さと女癖の悪さで士官学校での信頼を失っているイクタはそれでも飄々とした態度は崩さない
    /イクタを嫌う現役士官&ヤトリ隊との模擬戦
    /シャミーユ皇女の考えていたことはイクタですら驚愕するものだった
    /かなしい結末を予感させる始まり方…どうなる?

    ■カトヴァーナ帝国についての簡単なメモ

    【アナライ・カーン】史上初の「科学者」。人造精霊を作った。教団からは瀆神者扱いされている。《自然物には全て「ままならなさ」があるとおもわんか》第一巻p.334。さまざまを総称した「超古代文明論」として追究する。
    【アルシャンクルト・キトラ・カトヴァンマニニク】皇帝。四十代の壮年のはずだが枯れ木を思わせる。
    【アルデラ教】カトヴァーナ帝国の国教。技術立国を標榜するキオカですら国教ではないものの八割以上がアルデラ教徒。
    【イクタ・ソローク】主人公。後に「常怠常勝の智将」と呼ばれる。パートナーは光精霊のクス。本当の名前はイクタ・サンクレイ。普段は怠け者で女好きのナンパ野郎で食いしん坊で呑兵衛でおちゃらけて飄々としているが必要があれば現実的で残酷にもなる。アナライの弟子の一人。アナライいわく《わしの唱えた「科学」という方法を踏襲するのみでなく、独特の哲学に昇華して実践しおった。》第一巻p.18。《僕は徒労が大嫌いで、その分、自分が怠けるための適切な努力を惜しまない》第一巻p.42。「バダ」という人物の息子? なりたくないもののトップ3は貴族、軍人、英雄だったが一度に全部を得てしまった。「子供っぽさ」「未熟さ」「若さゆえの過ち」には不思議と寛容。《イクタ・ソロークの部隊はいつだって楽に戦って楽に勝つ! 常怠常勝、怠惰上等! 僕に付いてきた奴には、ひとり残らず楽をさせてやるっ!》第一巻p.278。ヤン・ウェンリーの若い頃という感じやけど、もっと屈折してるしあれほど優しくはなく(ヤンも切り捨てるべきことは平気で切り捨てはするけど)、不安定で脆そうだ。
    【イソン・ホー】叩き上げの帝国大尉。
    【エアシューター/風銃】風精霊の空気圧縮能力により鉛玉を撃ち出す現代兵士の主力武装。トルウェイとマシューは難破した船から脱出するときにも抱えて持ち出した。
    【科学】イクタの「科学」は《合理的で無駄のない、結果として大いに怠けられる素敵な考え方。それが科学の本質。》第一巻p.278
    【カトヴァーナ帝国】教団がある。暑い国のようだ。砂漠地帯? 人口二千万人。
    【キオカ共和国】技術立国を標榜する。カトヴァーナ帝国とは戦争状態。
    【宮殿】王宮。三つの建物がある。黄砂堂、新緑堂、白聖堂。
    【教官】士官学校の鬼教官たちは自由意志や個人の尊厳といった幻想を粉々に砕く。
    【教団】アルデラ教。「全ての論理の根底には神がいなければならない」という教義を持つ。それゆえにアナライを異端とした。
    【クス】イクタのパートナーである光精霊。
    【黄砂堂】王宮にある建物のひとつ。国外からの客と会う。
    【光虫/こうちゅう】炎も熱も伴わず光を出す虫。
    【高等士官試験】幹部候補生選出試験。
    【魂石/こんせき】精霊の意志の源。これがあれば教会で復活できる。
    【サリハ・レミオン】トルウェイの長兄。イクタにバカにされ根に持っている。
    【三人組】マッチョのアゴラ、出っ歯のコーサラ、ギョロ目のニーラ。高等士官学校でなにかとイクタに嫌がらせをしかけてくるが相手にしてもらえない。
    【シア】ヤトリのパートナーである火精霊。
    【シャミーユ・キトラ・カトヴァンマニニク】カトヴァーナ帝国第三皇女。幼いが先を見通し国を救おうとしている。高等士官試験に向かう船が遭難しイクタに救われた。《余は生きて帰らねばならぬ……。大樹が腐り倒れる瞬間を一秒でも早めるために、なんとしても戻らねばならぬ……。》第一巻p.119。《敗戦で国を救う。》第一巻p.327。後に「カトヴァーナ帝国最後の皇女」と呼ばれる。
    【人材】何よりも重要な人材を政策の尻拭いで使い捨てているような帝国に未来はないと言える。わかっていても、軍人は従うしかない。イクタもやがて軍人になるのだろうがどう対処するのか?
    【新緑堂】王宮にある建物のひとつ。臣下の奏上を聞く。
    【スーラ・ミットカリフ】高等士官学校でイクタの部隊に配属された曹長。母親のアミシアは以前イクタの恋人だったようだ。
    【スシュラフ・レミオン】トルウェイの次兄。寡黙で根に持つタイプではない。
    【精霊】身近にいる。四大精霊としては風、水、火、光がいる。
    【帝国騎士】シャミーユを救った褒章としてイクタ、ヤトリ、トルウェイ、ハロ、マシューの誤人に与えられた称号。至上の栄誉であり、一代限りだが貴族の位置づけとなる。平民が貴族になる唯一の方法。ついでに高等士官試験合格も得た。
    【テトジリチ家】マシューの実家。帝国西部エボドルク州駐留部隊を預かる家柄。
    【天空兵部隊】キオカ軍の新兵科。気球に乗った兵士によって編成される。地上軍しかないカトヴァーナにとっては脅威。
    【東域】キオカの辺境領土だったが帝国が戦勝で入手、開拓を試みるも大失敗した。水害が多い土地。
    【トルウェイ・レミオン】帝立エミル高等学校卒業生。パートナーは風精霊のサフィ。旧軍閥のレミオン家の三男。美形。どうやらヤトリに憧れているようだ。他者を愛称で呼びたがる。マシューは「マーくん」でイクタは「イッくん」。風銃使い、それも狙撃手系。兄はサリハスラグとスシュラフ。
    【ナズナ】アナライの弟子。難しい話を噛み砕いて説明できる。
    【ネジフ・ハルルム】生丘軍第6シチ小隊指揮官。名将ではないが堅実。
    【白聖堂】王宮にある建物のひとつ。国家の功労者を称える。
    【バジン】アナライの弟子。
    【バダ・サンクレイ】キオカ戦役において「戦犯」とされた元大将。
    【ハローマ・ベッケル】通称「ハロ」。淡い水色の髪。パートナーは水精霊のミル。ミン・ミハエラ看護学校卒業。身長百七十六センチと長身。イルフ、ショーカ、エチリという弟たちがいる。日記をつけているようだ。
    【バンハタール】カトヴァーナ帝国首都。
    【氷菓】カトヴァーナにとってはとても希少で魅力的なスイーツ。
    【マシュー・テトジリチ】イクタやヤトリと同じシガル高等学校卒業生。パートナーは風精霊のツゥ。旧軍閥のテトジリチ家出身でその家柄に誇りを抱いているが格としてはイグセム家やレミオン家よりは低い。ヤトリやトルウェイをライバル視し、イクタにからかわれ続けている。ぽっちゃりした体系だがそれなりに動ける。風銃使い。《次はおれが勝つ。もし次がダメでも、次の次はおれが勝ってやる。……絶対にいつか、マシュー・テトジリチの本当の実力を見せてやる!》第一巻p.317
    【水精霊】カラカラのカトヴァーナにとっては重要な精霊。
    【ミルバキエ】アナライの弟子。極論好き。
    【ヤトリシノ・イグセム】通称「ヤトリ」。帝立シガル高等学校首席卒業の優秀な軍人。旧軍閥の名家イグセム家の一員。パートナーは火精霊のシア。
    【ユーカ・サンクレイ】イクタの母。今上がキオカから召し取った美女をバダに賜った。
    【ヨルガ】アナライの弟子。算術に滅法強い。
    【リカン】ハザーフ・リカン中将。東域鎮台(守備専用部隊と思われる)の司令長官。船の遭難で敵領土まで流された主人公たち一行を迎い入れた。人格者。東域での戦闘は負け戦だとわかっているが立場上撤退できず戦死するしかなかった。

  • 厳しくて容赦ない世界観での戦争もの。

  • めちゃくちゃ面白かった。
    昔ーにアニメで見た時面白かった記憶があって、原作を買い集めたまま読まずに置いてたけどもっと早く読めば良かった。
    1冊一気に読み切るの間違いなし。1巻目から2部構成の豪華さ。姫さんはトラブルによく巻き込まれますね、コナン並み。
    それぞれの主要キャラが非常に立ってる。
    イクタは主人公らしく、やる気なし才能ありのテンプレ。
    自分はマシューのような、劣等感を押し殺して成り上がってやるって立ち位置キャラにいつも感情移入しちゃうから、次巻以降にどう成長するかも楽しみ。
    というわけで、早速2巻も読みます。。。

  • 9/10.
    これぞ、探し求めた傑作だ!いろいろ苦労して日本語を勉強してよかった!
    ストーリーは次から次へと展開して、特に前半はワクワクがたまらなかった。
    キャラクターは一人の例外を除けば全員よく描写されている。最初はマシューはあまりにも将校に向いてないなとは思ったけど、成長は期待できそう。姫殿下の「余」に萌えました。ハロみたいなおっとり系のお姉様も素敵!彼女に看病されたい!やっぱり衛生部隊に入るやつはみんな心が綺麗だ。

    文句といえばイクタに関わる事(本人の人格も含めて)はほぼすべて有り得ないことっていうか、真実味が皆無だった。主人公みたいな立場にいるのに、「このキャラクターいなかったらいいのにな」って思っちゃった事何回もあった。彼の行動やセリフのせいで、没入感が切り裂かれる。後、精霊の必然性も感じなかったな。
    とはいつつ、二巻はめちゃくちゃ楽しみ!!

  • 電撃文庫で戦記ものという帯の文句からして
    いつもの実は有能な主人公が影で大活躍するようなのかと
    あんまり手が伸びないような引きだが
    内実はわりとかなりちゃんと戦記ものしていて驚き
    キャラクタの役分けも一風変わって
    戦記ものとして重要な
    複数に主人公視点を置ける群像ものとしても
    対応でき得るようになっているようみえる
    科学と宗教の対比は扱いが難しそうだが
    改革を促す戦争目的のところははったり利いて楽しい
    『皇国の守護者』という良い例があるのだから
    ライトノベルでももっと戦記ものがあってもよいと思うが
    半端なく決着つけるのが難しそうに見えるのも確か

  • 倉下さんの評を見てサンプルを読んでみたら面白そうなので読みたくなったのだけど、電撃文庫は買ったことがなくおまけに既に長いので、迷った末に図書館で予約。ようやく届いた。

  • 何でも楽するというすばらしい思考の主人公が、残念ながら軍属になってまう話。
    戦術もおもろいし、飽きさせへんように適度にイベントがあるんもええな。
    ただ、お姫さんの期待通りのエンディングにならへんことを期待するわ。

  • 図書館で。
    少し前にアニメ放映されていて面白かったので原作も借りて読んでみました。それにしても表紙と挿絵が違う人なのは何か大人な事情があったのだろうか…

    そう言えばこんな話だったな~と思いだしながら読了。お姫様が当たり前なんだけど上から目線で大分感じ悪い。まあ殿上人だし仕方ないんだけど…
    お姫様側のイクタを巻き込みたい事情はよくわかるんだけどイクタ側のメリットが無さそうってのが交渉の余地無し感強いんだよな~ まさか、皇族に頼まれて頷かないはずないとでも思って居るとか?そこまで偏った思考の持ち主には思えないんだけど…

    ラノベと言えばハーレム要素…というような作品が多い気がするのですが出てくる登場人物が全て主人公にベタ惚れで、頭の中身が恋愛しかナイ女性キャラがいない事でとても読みやすかったです。そういう意味でも斬新だな~

  •  俗に言う軍記・戦記ファンタジー作品の一に位置づけられそうな作の第1巻。

     エピローグ前のラストの2人語りで読み続けることを決めた。いったいどんな風に転がしていくのか…。

     サブヒロインをして主人公を「マザコン」と言い切らしめたことには笑ってしまったが…。

     「銀英伝」のヤン・ウェンリーの如き将器と、ラインハルトの如き帝室への怨恨を備えた、女誑し主人公イクタ・ソローク。
     ベッドシーンも含め、真なるドンファンぶりを見てみたいが、さすがに無理かな。

  • ラストで示された主人公の最終目的がありそうでなかった感じで衝撃的。小説とは言えそんな上手くいくのか、そこに至る経緯はどうなるのか、何をもって成功とするのか、この先の展開が非常に気になるー冊です。

  • ビバなまけもの。バンザイ科学。そんなリスク高い作戦で行かなくても、イクタ先生に権力与えて内政させれば解決する気がする!

  • 面白かった~!!
    久々のラノベ大当たりかな
    エロ要素がないのが好感度大
    騎士団仲よしなのもいい

    軍隊もの(国家間の戦争もの)でサバイバルでファンタジー
    なにやら壮大な話の予感

    続きも読みたい!と思った良作でした。

    ブクログはAmazonと提携?を組んでいるからか
    登録するときにセットででてきたりするのがなんだかなと思う

    これも表紙イラストがちがうのはなぜ?
    途中?で変わったの?
    まぁいいけど…

    [追記](なんとなく修正しないで追記にしてみる2月2日)
    挿絵が変わったのはイラストレーターさんの体調不良らしい(wikipediaで目に入った)
    こわいなー無知って怖いなー(わたしのこと)

  • 献本にて頂戴しました。
    冒頭からぐっと引きこまれる入りで、通勤途中に読もうと思っていたはずが、一気読みをしてしまいました。
    世界観や登場人物の紹介も話の中に自然に盛り込まれており、入り込みやすいです。
    また、様々な性格の登場人物がいるのに、どのキャラも素敵で人間味あふれているため、ストーリーはもちろんのこと、今後の人間関係が楽しみです。

  • ファンタジー戦記だけど、この第1巻では、前半はサバイバル、後半は士官学校での演習、光や風、水などの精霊がマスコットみたいについていて各人の属性になっているなど、ゲームと親和性が高いストーリーが展開している。主人公イクタの怠性科学だけでなく、各登場人物も魅力的だった。ラスト近くでこの物語の行く末を暗示する衝撃の野望が語られる。これは、長い話になりそうだ!

  • ブクログの献本企画に応募したら当たりました~。
    正直,ラノベって読まないから,当たって驚いたのなんの。届くまで応募したのを忘れてました。

    ラノベというジャンルを(多くの著者さんには申し訳ないが)毛嫌いしているので,正直気乗りしない中で読みました。
    感想としては,シリーズの1巻として,キャラ,設定ともにわかりやすくて良いんじゃないかと。ただ、主人公イクタがね。「怠け」というキャラ設定で,まぁそういう感じは出てるけど,やるときはやるし,基本人に迷惑かけるような性格じゃなさそうだし。
    うーん。単純に能ある鷹は爪を隠すって感じ。怠けるんだったらもっと徹底的に怠けてほしい。

    でも最後のお姫様の提案は興味深いものなので,機会があったら続きを読んでみようかなー……。

  • 怠け者の主人公がなりたくもない軍人としてのし上がっていくはなし。知略策略軍師ものなんだけど「楽して勝ちたい」という主人公の強い信念から産み出される省エネ戦術が見所。宗教が支配する世界では異端の科学も、主人公にとっては楽をするための手段でしかない。

    とにかくすごいのは文章。台詞も地の文も練りに練られてて読んでて気持ちがいい。
    あとプロットがすごく濃厚。高等士官試験からサバイバル生活して敵軍とやりあって学園に戻って模擬戦やって一捻りあって各キャラの展望を描いてシリーズの最終目標をどーんと提示するのを1冊で綺麗にまとめちゃう。

  • 物語のクライマックスに登場する言葉を借りれば、「全身に鳥肌が立つのを感じた。」といったところだろうか。
    この本について、何よりも特筆すべきはその内容の濃さだ。印象的なプロローグに始まり、息もつかせぬ展開には、読者としてただただ圧倒されるしかない。なにしろ最初に巻き込まれた事件のくだりを読んでいるときは、この事件だけで1巻が終わると思っていたほどなのだ。
    魅力ある文章も物語に華を添えている。主人公イクタが語ってみせる台詞には、登場人物だけでなく読者の私達をも、理屈をすっ飛ばして本能で頷かせる摩訶不思議な力がある。
    その内容の濃さ故に、次巻から内容が薄くなってしまうのではないか――物語が佳境に差し掛かる頃にふと頭をよぎる不安さえも、本書のシメに待っている壮大なストーリーにひとたび触れてしまえば、杞憂だと断言できるだろう。

    こんな本との出会いがあるから、読書はやめられない。最大限の賛辞を込めて、そうエールを送りたくなる一冊。

  • 優秀だけど怠け者な少年がちっちゃいくせに腹黒な王女と
    帝国軍の最高司令官になって目的を果たすために頑張る話.
    の序章.
    出会いとキャラクタ紹介,少年の優秀さの発露.
    そんな感じで.
    今後が楽しみです.

  • 怠け者でひねくれものだが、豊富な知識と優れた頭脳で誰よりも戦略、戦術に秀でる少年が主人公の戦記もの。
    激情家でガキっぽい面を除けば、なかなか好みのタイプの主人公。
    お話も面白い。キャラの魅力も十分。これは期待できそうだ。
    この手のお話では萌え成分が希薄になるけど、まあ話が面白ければいいや。続巻にも期待したい。

    ただ、シャミーユが語る「国を負けさせて栄えさせる」論は正直疑問に思う。
    これって敗戦をバネに高度成長を果たした日本と同じ道を歩ませたいんだろうけど、帝国のような大きな国ではじめからそれを狙って行うってのは無理がないかな。
    日本はやむにやまれず、他に道がなかったからああなったわけで、もしやり直せるなら最善の一手は「敗戦」ではなかったはず。
    ところが、シャミーユは最初から最善の一手として(日本をモデルとしたと思われる)敗戦を選ぼうとしている。
    まあ日本の戦後復興がモデルじゃないのかもしれないけど、どうもこのシャミーユの敗戦論はぴんと来なかった。
    戦線を縮小する方法はいくらでもあるだろうし、政治改革だって出来ないわけではないだろう。
    シャミーユや、今後出世するかもしれないイクタの立場を考えれば、敗戦結論あり気は飛躍しすぎじゃないか?
    シャミーユが女帝になる、軍事クーデターを起こす、民衆革命を起こす、国際連盟を構築する、立憲君主制に移行する、などなど、いくらでもやりようはあるのではないかと。
    どう転んでも犠牲者を出す「敗戦」を最初から目標に定めるこの思想だけは、どうにも頓珍漢で理解しづらいなぁと感じた。
    敗戦により他国から受ける文化、経済、政治哲学といった外圧を利用して帝国を浄化する。
    まさに敗戦後の日本がたどった道ではないか?
    勝ってはならない。ただし負けすぎてもならない。
    上手く負ける。論としては面白いし、結果的にそうなってしまうことはあると思うが、政治や軍事のトップが語っていいことではない。
    これが何の力も持たない街娘と不良生徒の幼いたくらみならまだ面白い。
    が、持ちかけたのが王族の娘で、受けたのは将来有望とみなされた若き士官。
    こんなたくらみに正義はない。
    多くの将兵を死なせる戦争には必ず正義が必要で、わざと負ける戦いに戦争の正義など存在しない。
    しかも、状況的に追い込まれてやむなく負けるための戦いを強いられたリカン中将と違い、シャミーユとイクタは長期的戦略として負けるために、言い換えるなら多くの将兵を死なせるために戦争を起こそうと画策するわけである。これはいけない。
    もっと前にやれることを探るべきだ。
    この極論、飛躍論に飛びつき、そこから先へと思考を進めなかったのは、いかにも度し難い。
    この一点を除けば十分に面白かったんだけど、同考えてもこのエピローグだけはいただけない。
    これさえなければ文句なく★★★★★なんだけど、どうにもこれが受け入れがたくて★★★★★つけづらいな。

    思うに、シャミーユの敗戦論は提示するのが早すぎたんだと思う。
    この敗戦論を読者に披露する前に、説明しておくことがたくさんあったと思うんだよね。

    1.シャミーユが皇帝になる可能性
    まずこれが語られなければ話にならない。
    シャミーユ自身が皇帝になる可能性があるのなら、敗戦論などぶつまでもなく、自ら皇帝となって国を変えればそれでいい。
    つまりは、覇剣の皇姫アルティーナと理想を同じくするわけだ。
    シャミーユの王位継承権については語られた記憶がないんだが、果たしてどうなっているのか。
    現皇帝が急死すれば、政治の有力者がそれぞれ次期皇帝を擁立して覇権争いすることになる、との記述はある。
    その中にシャミーユは含まれるんじゃないか?
    であるのあら、シャミーユ自身が権力者を目指すのが正道だろう。
    血で血を洗う骨肉の争いになろうとも、「わざと他国に負けて国を変える」などというよりもよほど正義があるというもの。
    その道を選べないというのなら、シャミーユには継承権がない、どう転んでも皇帝にはなれないという説明が必要になると思う。
    が、そんな記述はなかったはず。説明が不足している。
    皇帝になる道があるのなら、なるべき。
    「我が覇道に手を貸せ」でいいだろう。

    2.イクタの王国に対する明確な復讐心
    イクタは両親を国に奪われたようなものだから、国や王族に対する敵意は持っている。
    しかし、明確な復讐心があるかというとそんなことはない。
    イクタの望みは平和に怠惰に暮らすことであって、立身出世に興味もなければ、国家に対して復讐をなそうという気持ちもない。
    もしもイクタが、国や王族に対して弑逆も辞さず!というほどの強い敵意を持っているのなら、「国をわざと負けさせる」というシャミーユのたくらみに乗ってもおかしくない。
    その土台はあった。もともとのプロットでは、イクタは国に対する復讐心を燃やす主人公だったのかもしれない、とすら思える。
    が、実際のところのイクタは無気力で、王族に対する敵意はあっても害意はない。
    イクタが王族に対する復讐心を燃やし、他人を嫌い、隣人を憎むようなダークキャラなら、「最終的に国を滅ぼす」ようなシャミーユのたくらみに乗るのはありだし、その発想も面白いと思う。

    3.宗教、哲学、思想の腐敗停滞と自浄能力の欠如
    これも部分的には語られているが、敗戦論をぶちかますためにはまだ足りない。
    科学的な考察を否定するアルデラ教の存在や、故意の敗戦で有能な将官を死なせる政治・軍部の腐敗は語られるが、それらの是正が決定的に不可能だと結論付けるだけの解説はされていない。
    宗教は頑迷で、政治は腐敗し、軍は無闇に肥大している。
    ならば打ち壊してしまえ!では何がなにやらわからない。
    まず全うな手段での改革や改善を模索すべきだし、それがどうやっても不可能なのだから劇薬投入としての「敗戦論」という持ち出しにならないと共感できるはずもない。
    決定的に説明が足りず、持ち出すのは早すぎたと感じる。

    他の部分に関してはほぼ満足。
    これでヒロインにもう少し愛嬌があり、主人公が激情を制御して子供っぽい感情論に走らなければ、かなり好みな物語だった。
    でも十分面白かったので、期待している。

    最後に、確かに銀英伝や皇国の守護者のパクリっツーか、影響を強く受けているっツーか、テイストをそのまま使っているのは間違いないけど、まあこれくらいいんじゃね?
    ラノベらしい読み安さが最大の長所名わけで、両者の良い部分をラノベに持ち込み消化してくれるのは大歓迎。

  • 最近の異世界戦記ファンタジーブームの火付け役的な?
    主人公のキャラがラノベにしては意外で、だけど憎めなくてなんか良かった。
    国境を越えるところだけ、ん? ってなったけど、それ以外はちゃんと戦略も練られててよかったです。

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著者プロフィール

2010年に「神と奴隷の誕生構文」(電撃文庫)でデビュー。「スメラギガタリ」シリーズ(メディアワークス文庫)、「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」シリーズ(電撃文庫)を刊行。

「2023年 『七つの魔剣が支配するXII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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