終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫 す 1-2)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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本棚登録 : 396
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048911498

作品紹介・あらすじ

前触れなく人間が消滅し、その痕跡も、周囲の人々の記憶からも消え去ってしまう世界。人々は普段通りの生活を続けながらゆるやかに訪れる世界の終わりを待っている。そんな世界でぼくは例外的に消えた人間の記憶を保持することができた。そしてぼくは気がつく。人が消えていくばかりの世界の中、いなかったはずの少女がいつのまにかクラスの一員として溶け込んでいることに-。ゆるやかに終わっていく世界での、切ない恋を描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 寂しさで心がいっぱいになる。人の心の深い、核心の部分に触れてくるような。グッと押されたような感覚。誰しも感じたことのあるであろう苦しい思いを呼び起こされる。今生きて隣にいる人を大切にすべきだとか、感謝するべきだとか、きっと色々あるのだろうけど、今は何も考えたくない。

  • 死を前提として了解しなければならない世界にあってもつらく悲しいことなのに、忘れられた者と忘れた者の間に陥ることはおぞましい。平気だと言い聞かせて解離するのはせめてもの防衛だろう。[more] それよりも、陥穽にはまって残渣のごとくありながら、でも忘れられているというのはさらに悲痛だ。莉子のように忘れてしまうこと、あるいは死して何も考えられなくなってしまうのは救いなのかもしれない。

  •  消えていく人の事を自分1人だけ記憶し続けているのは辛いだろうなと思います。

     周りが消えた人の事を認識していなくて、親しい人が居なくなって哀しむ事すら出来ない。忘れていないからこそ哀しいけれど、それを共有出来る相手も居ない。主人公のそんな感情が伝わってくる様でした。

     恭子さんや奈月が消えて、哀しむのを我慢せず表に出す様になってるのが良かったのかは分からないですが、忘れられない苦痛が少しでも薄れれば良いと思います。

  • 作家さんはうまいけど、個人的好みからすると少しやり過ぎ。

  • 情景描写はいいが、物語のボリュームに対して描写が厚すぎる。
    ちょっと目に入ったものとか、場面転換ごとにいちいち触れられていたら飽きてくる。
    世界観自体が陰鬱だから描写も暗くて、美しいなんて感じることもない。
    ずっとストレスフル。

    登場人物たちは全然会話を交わさなくて、というかコミュニケーションしていない。
    思っていたことをいいかけてやっぱりやめる→相手が怒るみたいなことをずっと繰り返していて、ああもうストレス。
    こんな状態でどうやって感情移入すればいいのか。

    序盤から登場する莉子だけはそこそこキャラが立っていて、この子との物語なのかと思ったら、なんとメインヒロインじゃなかった。

    途中出場の奈月が主人公にとって重要な位置を占めているみたいだが、会話もない、主人公とのこれまでの関係性も描かれない。
    親の死もあっさり受け入れた様子の主人公が、どうして奈月だけは忘れたくないのかがわからない。

    話しかけたら怒る、なのにくっついてくる女。
    その理由も明らかにされない。
    もうわけがわからない。

    正体不明のヒロインに共感できるはずがない。
    というか大嫌いだ。
    莉子の方がよほど主人公と結びついてないか?
    二人を一人の人物として書き直せばましになるかもしれない。

    実在する古い音楽をひたすら挙げるのは勘弁してほしい。
    数曲程度ならいいが、ことあるごとに何曲も引っ張り出してくるのは反則だ。
    物語ではなくて、その音楽の雰囲気で読者を取り込もうとしてるだろ。
    解説もなしに知らない話を延々されると飽き飽きする。
    こういうやり方をする小説を好きになれたことがない。

    物語は終始たった一つの謎を引っ張っていて、なにも明かされないまま終わる。
    どうして人が消えるのか?
    奈月だけ覚えていられたわけは?
    主人公が人の死を悲しまないように制御するきっかけとなった出来事は?
    謎のまま終わるのもありだと思うが、それが多すぎると目につく。

    致命的なのは、感動を狙っていると思われるのに、盛り上げ方が下手すぎること。
    地の文は暗くて淡々としていて、印象的なシーンはないし、主人公の目を通して世界を見るのが嫌になってくる。
    一人称小説なのに。

    ラストももっとやり方あるはずだ。
    最後にDJが奈月との思い出の曲を流すとかそういうベタなのでもいいのに。

    起承転結なんてものはない。
    起・結これだけ。

    最後に根本的な事。
    皆で写真持ち合えば誰も消えないんじゃないか?

  • 消失感と緊張感が文章にも表れていた作品。人、記憶、それらが消えていくなかで描かれる主人公の心情がどこまでも美しく切なくほろりと泣いてしまった。カメラという設定を生かしてストーリーやラストを描いていて好印象。一部分かりにくいところがあったが設定を見事に生かした心地好い切なさを感じた。

  • 世界から何の前触れもなしに人間や記憶などの痕跡が消滅しても、思ったより普通に生活できている。
    周囲の記憶にはないのに自分だけ消失した人々の記憶を保持し続けるのは結構つらいと思う。
    「サクラダリセット」の主人公の少年や、「密やかな結晶」の世界みたい。
    途中までは良かったのに、奈月が話に関わってきたあたりから頭の中が?という状態になった。
    結局、奈月はどうなったの?
    消えたのなら何で莉子が奈月を覚えているの?
    消えていないのなら話の前提が変わるし。
    記憶の消去にはタイムラグがあるのだろうか?
    DJサトシのラジオが結構いい味出していた。

  • なんか想像してたのと違う……。ヒロインの感情表現(?)はよく理解できなくて、最後まで好きになれませんでした。それと、カメラの設定も最後の方はほとんど出てこなかったのも残念でした。
    でも、世界観は好きです。
    (2013/01/17)

  • 突如人が消え、その人の存在はすべて消えてしまう。
    そんな世界で、自分だけが消えた人を憶えている。

    消えてしまっても、何事もなかったかのように
    話もつじつまも合っていく。
    誰も不審に思わない世界で、自分だけが
    消えた人を憶えていられたら…。
    何だかこう、叫びたいのに叫べない状態?

    そこに一人増えた存在は一体なんなのか。
    拒絶されているようで、拒絶されない自分。
    不思議な女の子、という存在です。
    結局最後には…なのですが、そんな存在よりも
    周囲にいた人が消えていく様が、やるせないです。

    すべてから消えてしまった方が苦しくないのか
    忘れてしまったから苦しいのか。
    記憶も思い出も何もないけれど
    それでも感情はあるわけで。

    もう一度失った時、どうすればいいのでしょうか?

  • いないはずの彼女の謎が解けていくにつれ、この世界での本当の別れにつながる。忘れられない限り生き続ける、というきれいごとを真剣に考えてしまうような作品。ところで、あのCDプレイヤーにはモノラルモードってなかったのかな、という非常に無粋なことを思った。

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著者プロフィール

第12回電撃小説大賞《銀賞》受賞者。代表作に『神様のメモ帳』『さよならピアノソナタ』など

「2023年 『楽園ノイズ6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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