- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048926669
作品紹介・あらすじ
サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。
死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。
二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!
第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進!
感想・レビュー・書評
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86読了しました。
人種差別と戦争を複雑に絡め合わせた作品でした。
この小説でも白系種という国民が髪色で差別し迫害する描写があります。
最初は胸糞でしたが次第にスカッとします。
言い回しが少し独特で最初は読みにくいなと思いましたが、慣れてくるとどんどん面白くなってきます。
そしてミステリー小説か?と思うほど布石も散りばめられており、この布石の意味がわからなかったのですが次第に紐解かれていく感じに感動しました。
ファイドは可愛いし、主人公が乗っているジャガーノート、敵機である斥候型・近接猟兵型・戦車型、そしてこの巻のキーとなる重戦車型、どれもかっこいいです。
小説の中にメカの概要図みたいなのが書かれているのですがとてもかっこいいです。
一巻だけでも完結していますが、この作品はまだ次の巻があるので楽しみです。
この小説の裏表紙に載っている共和国のエンブレム。
かっこいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アニメが「確かに面白いけど文章で読んだほうがもっと面白いんだろうなぁ」って感じだったので、原作も読んでみました。
まず、よくこんな最悪なシチュエーションを思いついたよなぁってくらいひどい国家と詰んでる戦況をメインの舞台に据えてるのが新鮮。
こんなん勝っても胸糞、壊滅しても鬱展開じゃんっていう。
そんな中で「安全地帯で綺麗事言ってるお嬢ちゃん」だったヒロインのレーナが成長する様子とか、スピアヘッド部隊が「人間」としての矜持を持って戦いに臨む姿がもう、もう……!
1巻で完結してはいるけれど、今やってるアニメの範囲を見る限りでは2巻も文章で読みたくなる感じっぽいので、続きも読みます。 -
友人のオススメ。友人はアニメ押しだったが観られないようなので本で。
最初から読んでいてキツい設定や描写が続く。
不遇な境遇にも前向きに進もうとする少年たち。それの上にのんびり構えてる共和国市民。何とかそれに抗おうとする人。それぞれ少しずつ自分と重なる部分を感じる。
戦闘の描写がいまいち想像力がない私にとっては難しかったので星4つ。 -
2010年代の後半にロボット・メカ物は珍しい、が第一印象だった。
意外性で攻めている作品ではないので、物語の大方の流れは予想通りであった。
ただ、新人でここまで収まり良くまとめたのは圧巻。劇中で架空の人種達による人種差別のテーマも上手く消化したと思う。
ひとまず読切で刊行されたが好評あってか続刊が出ている。 -
うん確かに、これは大賞だわ。
第23回電撃小説大賞「大賞」受賞作。
国家の政策により人以下に落とされ戦場で戦わされる少年少女達とその政策に憤り彼らの力になろうとする後方支援官の少女の物語。
遠く離れた場所で顔を会わせることもない彼らが仲間の死や軋轢を経て次第に交流を深めていく様がなんともいい。
管制官のレーナは一見気弱な感じで確かに弱い部分もありながらそれでも最後まで諦めないところがいいね。
最後の戦闘である意味キレタ彼女の啖呵にはグッとくるものがあった。
それとともに戦闘が終わったあとにふと漏らした「おいていかないで」の言葉が切ない。
そして短いその後の歴史描写のあとに訪れるラストの、その最後の一文を読んだあとの余韻がまたすごい。
これはすぐに続きが読みたくなるね。
そんな読者の心情を察し切った物語は、なんとも心憎いばかり。
これがデヴュー作という作者に脱帽。 -
とにかく最高!
メンバーが次々いなくなって悲しいしどうなるんだろうって思ってたけど、あれはすごい。
レーナいい! -
アニメの絵が綺麗だったので気になって観だしたら思いのほか面白く、原作がラノベとのことでこちらに手を出したらさらに面白くはまってしまった。。
近未来、戦争、差別、国家、生きる意味などなど本当に盛り沢山だけどアニメはアニメで戦闘シーンなどは小説の肉付けをしてくれてるし、1巻に関してはアニメだとシンがとにかく無口なので小説を読んで心理描写や社会的背景等が肉付けされるし、両方相まってとても面白かった!!
今2期目だけどこのままアニメも3期と続いてくれたら嬉しい。 -
出版当初にちょっと気になってたので、読んでみた。
期待以上に面白かった。
近未来ディストピアSFで戦争もの。
設定がなかなかハードで、先に進むことに最悪な状態が更新されていく、絶望感で物語がドライブする。
エンディングのキレも良い。この先はいらないんじゃないかな。
なので、続きをよむかどうかは未定。 -
アニメの影響で読み始めた原作小説、ようやく第1巻を読み終わりましたよ…
アニメとは受ける印象が異なるシーンが多々有る本作。中でもトップクラスに感じたのはレーナとエイティシックス達の交流シーンかな
アニメではパート分けを利用して両者の住む世界は異なるものだと示していたが、原作小説では流石にそこまでしていないね。その代わりに目立つのは些細な心情伝達の不備
知覚同調を利用して離れた場所にいる人間とスムーズな遣り取りが可能になった世界。知覚の同調によって下手な無線よりも通じ合える筈なのに、レーナとエイティシックスと呼ばれる者達の会話は何処か不通気味
言葉は過不足無く遣り取り出来ても、言葉以外のものを遣り取りしていないから全てを伝え合えるわけではない。だから言葉が全てとなり、レーナより過酷な状況に身を置くエイティシックス達にはレーナの言葉の軽さが目立ってしまうわけだね
けれどレーナは自分を誠実な人間だと思いこんでいるから、自分の軽さに気づかない。それがコミュニケーションを成立しているようで成立していない代物に貶めてしまう
それにしても、本作にて何度も形を変えてレーナの常識をぶち壊す事になるエイティシックスの境遇はあまりに悲惨なものだね。悲惨すぎて言葉で簡単に彼らの境遇を解釈してしまう事に躊躇いを覚えるほど
その境遇にレーナを含む白系種の人間達は彼らを追い詰めたわけだから、そこには断絶が生じ、余りある憎しみが生まれたって可怪しくない
けれど、この局面においてもエイティシックス達の過酷な境遇が活きてくるというのは皮肉な話か
彼らは共和国内部でぬくぬくと生きる白系種よりも多くの極限に触れてきたからこそ現状を単純な対立だけで捉えていない。別に白系種への憎しみがないわけではない。けれど全てを憎しみで終えようとしていない。
この絶望的な状況下で自分達の人生をどう終えるのか、どう自由に扱うのか。それを命の限りに生き抜こうとしている
そんな彼らの心情を知覚同調だけではレーナはすぐに理解できないし、むしろ昔に直接会話したレイの言葉の方が印象深いから、エイティシックスとの会話に理想を求め当て嵌めて、そして彼らとの溝を深くしてしまったわけだ
作中でレーナが何度も衝突する事になる断絶の壁。普通なら心挫けてエイティシックスに関わる事を止めてしまうこれにレーナが何度も挑み続けるのは不屈の主人公らしさに溢れていて良いね
彼女は確かに何にも理解していないし、自分の理想を押し通そうとする若さも見える。でも自分の誤りを理解し、愚直なまでに彼らと関わり続けようとする姿勢はただ理想を追い求めるだけの人間には出来ない行動
壁をぶち破っていこうとする彼女の有り様が遠い場所で戦うシン達に少しずつ届いていく様子は好ましく映る
ただ、それでもこの第1巻においてレーナはシン達が居る場所に辿り着けない点が深い断絶をそのまま表しているのだけど……
知覚同調によってレーナとシンは幾度も遣り取りし、多くの情報を交わしレーナは知らなかった真実を知っていく。それでもレーナの耳に届く以上の声を聞き続けてきたシンはより多くの真実を知っている。共和国に未来がない事も仲間達が何を願って逝ったのかも
白系種よりも多くを知るエイティシックスの中でもシンはより多くを知っている
そんな彼が理解しきれずに居たのは兄の真意か
レーナとシンが知覚同調により断片的な遣り取りで相手を理解しなければならない為に意思の不通が生じたように、シンも兄のレイが最後に発した断片的な言葉だけが纏わり付きコミュニケーション不全を起こしていた
兄の憎悪だけが耳と記憶に残り兄を正しく覚えていられなかった
逆に言えば、レイの言葉と理想を正しく覚えていたレーナの存在はシンにとってどれだけの救いとなったか……
それだけでなく、絶望的な任務の中で生じた兄との死闘にもレーナは追い縋り、シンの戦いを助けるどころか彼が口にできなかった本当の想いも掬い上げてみせた
それはコミュニケーションが不完全な中で為された人を救う意思疎通と言えるのかもしれない
終盤、レーナが呆然と零した「おいていかないで」という台詞にこの巻で起きた様々の変化が籠められているね
何処にも行けずどのように死を迎えるかしか選べなかったシン達が有限の物資を伴って無限の路を行く。その旅路に壁の中にいるレーナは付いていけず、けれどいずれ彼らに辿り着きたいと思うから納得できない言葉が零れてしまう
同調の網から逃れ消えた5人を追い始めたレーナの道行きはダイジェスト気味に描かれたわけだけど、それはあのラストシーンを尺に納めるためなのかな?
何はともあれ、彼と彼女は遂に直接に出逢った。それは断絶やコミュニケーション不全を乗り越えた物語に一区切りを付けるシーンとして最上のものだったね