- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048930963
作品紹介・あらすじ
「私、雷に打たれたいんだよね」
僕の隣で、千歳さんがそう呟いた。
いつも制服の下にハイネックのシャツを着ている風変わりなクラスメイト。
彼女に頼み込まれてこの夏、雷を“落とす”ための避雷針作りを手伝わされることに。何でもなかったはずの僕の日常が、彼女によって少しずつ彩られていく。
きっと、千歳さんは何かを隠している。
それでも千歳さんと一緒にいたくて、ずっとこんな日が続けばいいのにと思っていた。
彼女の“ひび割れ”にも気づけないまま……。
トゥーファイブクリエイターアワード《小説部門賞》受賞作。
ゆっくりと進む恋と痛み。少年と少女が“心”を見つけるひと夏の物語。
感想・レビュー・書評
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生んで終わりが親じゃない。
生きるというのは、理不尽さを噛みしめながら、理不尽さを使いこなすということです。
始めることで始まる責任を背追い込もう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
特に仲良かったわけではないのにクラスメイトの千歳さんから科学部に来ない?と誘われた佐々木。それも避雷針を作りたいとのこと。
こないだ、校外学習で土砂降りになったため、たまたま雨宿りで一緒になった二人。そこで、「雷に打たれたい」と言っていた千歳。
なぜ避雷針を作りたいのかわからないが、結局一緒に作ることになった二人。次第にわかってくる千歳さんの内面。
高校生の恋模様を描きながら、二人の抱える苦悩と共に「夏」が始まっていく。
雷に打たれたいという千歳さん。最初は不可解でしたが、後にわかる真相に心が痛みました。同時に色んな伏線も張られていたので、二重三重に痛みました。
避雷針を作るというひと夏の経験を描いていますが、それぞれ二人の今までの人生も描かれています。
片方の親がいないながらも、懸命に生きてきた二人。親との距離感に悩む描写が印象的でした。
特に主人公の苦悩する表現が一味違っていて繊細な印象がありました。
というのも、会話している描写が、イマジナリーフレンドなのか?ケルベロスやミニフランケンシュタインというキャラクターと会話しているのですが、最初これは現実に喋っているのか?独り言なのか?明確に提示されていないので、ちょっと戸惑いはありました。
そのキャラでしか本音を語らない佐々木。そして後半での展開が、ホラーチックでもあり、恐怖でもありました。
一応、メインの話は避雷針を作ることなのですが、二人のそれぞれの苦悩も丁寧に描かれているので、そちらの方にも見入ってしまいました。
そして、後半での千歳の感情爆発する場面には引き込まれました。今まで元気だった千歳が、真相を語る場面は、今までのことが嘘のように一変するので、驚きでした。もしかして千歳さんって・・・とかすかに思っていましたが、彼女が語る真実は辛いなと思ってしまいました。
ただ、その後の展開が、個人的には無いわーと思いました。
彼女を思うが故の佐々木の行動なのですが、理解しづらいなと思いました。
たしかに千歳さんのことを想って、行動に移しますが、今後のことを考えると、それアリ?と思わずにはいられませんでした。
他の人が、その行動にどう思ったのか?知りたいところです。一応良い雰囲気で仕上がっていますが、深掘りすると、イヤイヤあかんでしょと思いました。
今後の二人の人生が心配です。