86―エイティシックス―Ep.3 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈下〉 (電撃文庫)
- KADOKAWA (2017年12月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048933971
作品紹介・あらすじ
ギアーデ連邦軍に大打撃を与えた、敵の電磁加速砲搭載型〈レギオン〉。これを無力化する生還率コンマ以下の作戦に、シンたち『エイティシックス』の面々が選ばれ――!? 決死行の末に、シンが辿りつく場所は――。
感想・レビュー・書評
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背ラベル:913.6ーアー3
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共和国で迫害されていたシン達エイティシックスが連邦に移り住んでも意味を変えて別種の迫害が続く構図が描かれた前巻。その状況はこの3巻になっても変わらないのだけど、モルフォという人類共通の強敵が現れた事で軍内部での蔑視、世間からの憐憫は他所に置かれることになるね
その代わりに顔を出すのはエイティシックスが異邦人であり、戦いに赴く事に何の躊躇もなく、そしてその死を悲しむ者が本人達含めて居ない特殊性
モルフォ撃破の為に編み出された生還が限りなく不可能に近い特攻作戦。それに反対する者が直属の上司であるグレーテくらいしか居ない状況というのはあまりに物哀しいもの
また、エルンストとは別の形で庇護者として振る舞うグレーテもエイティシックスの理解者とまで成れていない点も哀しいね
グレーテはエイティシックスに寄り添おうと、彼らの理念を戦場に体現しようと努力している。けど連邦の理想や自分の信念を持って彼らに接する限りエイティシックスを理解なんて出来ないんだよね…
シン達も別に理解を求めているわけではないし、理解が可能とは思っていない。自分達に生還不可能な任務が宛てがわれたのも不満があるわけではない。でも、ここでセオが寂しさを感じたように自分達の道行の不確かさを嘆いた点は今後において変化させなければならないとの可能性を感じさせたよ
そうして始まった大規模作戦はエイティシックスを槍の穂先としつつも、共和国に無かった連邦の覚悟を示すものになるね
戦闘の中でもエイティシックスを侮蔑している点は変わらない。それでもエイティシックスこそモルフォを討滅すると信じ、そして国を守る為に命を懸けて戦っている
迫害の状況そのものは変わらなくても、その意味合いをほんの少し変えるかもしれないもの
一方でその辺りから際立ってくるのはエイティシックスにおけるシンエイ・ノウゼンの特殊性
エイティシックスは連邦の温もりに染まらず、軍部においても異次元の強さを見せた為に白眼視された。それはエイティシックスが連邦でも浮いた存在だった事を示している
けど、軍から離れてキリヤが宿るモルフォが近づくに連れ顕わになっていくのはエイティシックスの中でもシンが浮いた存在である事実だね
亡霊の声が聞こえ続け、エイティシックスの中でも別格の強さを持つ。何も叶えられずに死ぬ筈だったエイティシックスの中で唯一目的を遂げてしまったのに、仲間から願いを託され生き続ける事が至上命題となってしまった
そうしてシンだけが抱えてしまった孤独と空虚さは仲間と共有できないもの
それに似たものを共有できるとすればそれこそキリヤだけであり、キリヤを討ち倒した後のフレデリカだけ。だから最終決戦の場に存在したのもその三者のみという事になる
シンはキリヤを撃破した先に得られる何かを全く持たないしのに、モルフォを倒せる力を持っているというのは皮肉な話。そんなシンがキリヤとの戦いの中で望んでいたかもしれない唯一は死に場所か……
辿り着いた筈なのに何処にも辿り着けない。生き残ったのに生きている気がしない
だからこそ絶望に包まれていたシンの前にあのレーナが辿り着いてくれた事に感動してしまう。この時、レーナは話し相手がシンと気付いていないから、その上で彼女が語る言葉はシンに対して格好つけるものではなく、彼女の信念として彼女の中枢に焼き付いているもの
なら、誰がそれを焼き付けたかといえばシンエイになるわけで
託されるばかりだったシンエイの前まで、唯一願いを託した相手が生きて辿り着いた。それは他の何よりもシンエイ・ノウゼンが未来へ辿り着いた証であり、生きている証となるわけだ
また、戦友には死を与える事しか出来なかった死神を前にして、シンが居たから生きていられたとレーナが断言したシーン等は本当に感動してしまいますよ……
モルフォを倒して人類が救われるわけではないし変わらずに不利のまま。希望は何処に有るとも知れぬ状況
それでもシンがようやく生きる理由や戦う理由を手にし、遂にレーナと対面を果たした。それらの誰にも侵されることのない事実はこの物語がとても尊いターニングポイントを迎えたのだと感じさせたね -
しっかり泣いた
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エルンストの声すごく合ってる
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兄を討ち果たすという目的を達成してしまったシンは何のために戦うのか。
フレデリカの願いにより、彼女の騎士を倒そうとするも、果たしてその先には何があるのか。
失くしてしまった過去を取り戻そうとしないのは、自分たちの不完全さを目の当たりにしてしまうから。
未来を語れない自分に気づいてしまったから。
そして少年と少女は再び巡り合う。