クジラの島の少女 (BOOK PLUS)

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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048970396

作品紹介・あらすじ

ニュージーランドのファンガラの地で、一人の少女が生まれた-その名はカフ。クジラ乗りの先祖をもち、代々男を長としてきたマオリの一族に、初めて娘が授けられたのだ。しかし跡継ぎを切望していた、長である祖父は、カフをどうしても受け入れられない。頼もしく優しい祖母や叔父、そしてニュージーランドの自然に囲まれ成長するカフ。やがて彼女に不思議な力が備わっていることに、二人は気づく。一方、頑な祖父は跡取りの男の子を探し続けるが、上手くゆかない。そんな時、いつもそばには笑顔のカフがいた-。そして運命の時は、突然、やってくる。クジラの異常な大群が浜に押し寄せた。かつてないマオリの危機に、一族全員が結集する。もはや為す術もない状況の中、クジラの声に導かれるかのように、少女は一人、海へと向かった…。マオリの少女が起こす奇跡が、国境を超えて感動の涙をもたらす。ニュージーランドの国民的作家が描く、愛と奇跡の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 訳本だけど、初のペーパーバック!

    ニュージーランドを舞台とする小説が読んでみたくて購入。とても良かった。
    クジラと人が交わり、互いに信頼し合っていた昔。
    しかし、そうした関係は薄まり、マオリのある一族は、部族としての存続が大きな課題となっていた。

    また、原住民と開拓民との溝もパプアニューギニアでの出来事の中で語られることで、様々な形でそれが残されていることを訴えかける。

    文明化が容赦なく進む中で、便利を手放すことはなかなか難しい。
    また、作中の男女観のように古いものの見方だけが良いというわけでもない。

    ただ、失われてゆくもの。
    言葉、風習、価値観、歴史。
    少女カフが成し遂げた伝説が、過去を未来に繋いでゆく。そんなカフの姿がカッコよくて、素敵で、涙しそうになった。

  • 場面がよく飛び飛びになっていて、流れがよくわからなくなってしまい楽しめなかったです。

  • 理屈も常識もなにもない。
    ただ心が震えた。

    神々に繋がる血を持つ者の
    誇りと強さと正しさを
    羨むことしかできない私だが
    カフの背負うものの重さより
    その気高さに
    心がどうしようもなくざわめいた。

    どうして人は
    愛する者を
    共に生きし者を
    美しい大地と空と雄々しい海と
    そこに生きる生命たちを
    裏切って生きる現実の中に
    囚われてしまったのだろうか。

    私もまた
    真のマオリの人々のように
    自分の血を 家族を
    繋がるものたちを愛したい。
    見果てぬ夢だが
    私は私の中に
    本当の愛を呼び醒ましたいと
    願うばかりだ。

    今の自分の生きる姿に
    懐疑的ですらあった私だが
    この美しく気高い物語に
    感応する心を持っていることだけを
    大切にしていたい。

    いつの日か私も
    祈りの言葉が
    世界を支える場所と時の流れの中に
    生きられる日を夢見ている。

    カフを愛せるようになったパカは
    その幸せの中でやがて命を終える。

    なにもかもが素晴らしく、羨ましい。
    汚れなく澄み切った人々の魂の物語。

  • ニュージーランドの原住民マオリ族のアイデンティティを扱った小説。
    シンプルな家族愛のあふれる物語だけど、先住民を扱っているのでいろんな方面に思考が広げられる。

    以下感想(ネタバレ)
    ↓↓↓

    「西洋化」
    登場するマオリの一族の先祖にはクジラと会話できる者がいた。しかし、ニュージーランドに白人がやってきて、彼らの文明を取り入れたマオリ達は古の先祖たちの技術を忘れていった。
    原住民マオリとしてのアイデンティティをどんどん失っていっているのだ。

    語り手ラウィリの父コロはそんな一族の状況を危惧している。そして、次世代に一族のアイデンティティを受け継いでほしいと強く願っていた。

    一族の若者もそれはなんとなくわかってはいるが、実際問題そううまくはいかない。発展の流れに抗い、古いものにしがみついて生きるにはかなりの労力がいる。だから、マオリのアイデンティティは大事だが、生きる中でどうしても捨ててしまうものは出る。


    西洋化は世界全体の大きな流れだ。日本も明治維新でその衝撃を受け、それから今に至るまで見事に生活様式を旧来のものから変化させてきた。失ったものは大きい。

    マオリ達も西洋の影響を受けている。それはいけないことなのか。
    「頑張って自分達のアイデンティティを守ってほしいなぁ。」なんてこの本を読んで感じるだろう。
    幼い少女カフがクジラに乗っているシーンを読んで、自然と一体になっているマオリの素晴しさを感じてしまった人はそんな無責任なことを考えてしまうのだ。

    じゃあ自分はどうなの?

    私はそう思って身震いしました。私は日本人としてのアイデンティティなんて持っていませんでした。
    自分のことは棚に上げて、まだ西洋化が進んでいないところに無責任に伝統を守れと無理強いする。なんてやつだ。

    これからは価値観を変えていきたいです。日本の伝統文化をよく見てみようと思います。日本の伝統品を買ってうまく使いこなせるようになってみようと思います。
    ___

    「生き物の言葉」
    私、大昔は人と動物は本当に意思疎通ができたんじゃないかなと思うんですよ。
    ただ、人間が思うような高度な意思疎通ではないですよ。まさか動物と人の言葉で会話なんかできないです。

    皆さんは動物がどの程度、同種間でコミュニケーションができているか考えたことがあるでしょうか?
    例えば、愛犬と人間は会話ができません。しかし、愛犬と●●さんちのワンちゃんは楽しそうに遊んでる。「犬同士は通じ合えるんだろうなぁ。いいなぁ。」なんて考えるんではないでしょうか。
    私はそうは思いません。犬同士、間違いなく高度な意思疎通していないと思う。
    例えば、「よう、お前最近体調どうよ?」「いやぁ~どうも最近腹が出てきちゃってww運動しないとww」なんてことは絶対に話していない。
    彼らができる意思疎通は「相手の雰囲気をなんとなく感じる」だけでしょう。
    だって、いろいろ難しく考えるだけの脳みその発達をしていないから。

    たまに、天才的な動物!とかいますが、その個体が珍しい行動をとっているだけで、どうあがいても人間レベルの細かな意志疎通はできていません。

    つまり何が言いたいかというと、昔できたという動物との意思疎通は今でもできるはずだということ
    人間が動物に人間レベルの高度な意思疎通を望まず、人間が動物レベルにまで目線を下げれば意思疎通できていることになるのだと思います。

    人間だって、言葉を使わずにアイコンタクトだけで意思を伝えられるでしょう。
    言葉の通じない外人とだって身振りで意思を伝えられるでしょう。

    こういうボディランゲージを動物とできていたということなんでしょう。

    昔の人間(原始時代的な)はか弱く、自然界で生き残るのに必死であった。だから、種族の異なる動物にも助けてもらっていたのだろう。
    現在だって、上手く共存している動植物はたくさんいる。
    たぶん人と動物もこういうレベルで意思疎通していたんだろうと思う。

    けれど、人間は科学を手に入れ自力で生きていけるようになった。そのため異種族の協力はいらなくなった。
    だからもう動物達と意思疎通しなくなったんだろう。

    もし人が動物と会話したいなら、生き物に義務教育が必要になりますね。
    ___

    「キリスト教」
    カフは救世主でしょ。イエスとおんなじ救世主。
    天からの啓示(他の人には聞こえないクジラの声)を聞いて、人々のために犠牲になる(マオリのために海に潜る)。しかし、その後復活を遂げる(海から奇蹟的に帰ってくる)。

    それで考えたのは、「イエスが誰を救いたかったのか」。イエスは現代では世界中の人々を救うことを強いられているのではないか。

    カフはただ家族を、大好きなコロを助けたかった。たいせつな一族を助けたかったのだ。

    イエスもきっと同じだ。自分を信じてくれた人だけでも救われてくれればよいと思ったのではないか。
    自分の死を見て、弟子たちが成長すれば良いとだけ思ったのだと思う。

    イエスは世界中の人を救いたいなんて思ったことはないんじゃないかな。後世の人間が勝手に作り上げただけだよね。

    きっとイエスはカフと同じことをしたんだよ。

    だから皆、頑張って世界平和なんて実現困難なこと願わなくて良いんだよ。自分のすぐ近くにある人を幸せにできれば、それだけでいいんだよ。

    ___

    「家族愛」
    コロとナニーの喧嘩こそが家族愛だと思った。
    うまく付き合うためには喧嘩しなさいってことだ。

    最近の世の中は本当に潔癖だよね。あのふたりくらいテキトーに付き合いたいよ。
    ___

    今度ニュージーランドに行くから読んだんだけど、風景描写が少ないからいまいち旅行の気運は高まらなかったな。

    ニュージーランドが舞台の小説って本当すくない。
    ニュージーランド行く前に読むべき物を他にも探そう。

  • 後半になるにつれ、グリンピースの背景にはこういう土着思想があるのかーと納得しつつ、シーシェパードは暴れたいだけだよね、と考えて素直に読めなくなってくる。けど、カフが助かってよかった(^_^)

  •  童話というか、御伽噺だなぁ。
     絵本で読みたいところ。

  • 映画「クジラの島の少女」を見て、再読
    映画ほど家父長制の嫌さが出ていない

    生き物と心(言葉?)を通わせるって
    素敵な世界

    狩猟民族に多い気がする

  •  2002年に製作されたニュージーランド映画『クジラの島の少女』の原作。パタゴニアからクジラに乗ってたどりついたクジラ乗り、カファティア・テ・ランギが開いたといわれる村、ファンガラ。カファティアの家系の跡を継ぐのは代々男の子と決められていたが、一族の長コロ・アピラナの家に生まれたのは曾孫は女の子。がっかりするコロ・アピラナ。お前には跡を継げないと冷たくされても、曾祖父を慕う女の子カナ。しかし彼女には不思議な力が備わっていた。一族に訪れる危機に立ち向かうカナ。結末は…。涙なくしては読めない静かな感動をくれる1冊です。
     マオリの文化や歴史、ニュージーランドの豊かな自然に触れたい人にもおすすめ。

  • 2004年7月18日読了。

  • 自分が身を置く世界を見直すこと、そこにあるものの尊さを知るということ。

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