悪魔とプリン嬢

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048972024

作品紹介・あらすじ

「条件さえ整えば、地球上のすべての人間がよろこんで悪をなす」悪霊に取り憑かれた旅人が、山間の平和な田舎町ヴィスコスを訪れた。この恐るべき考えを試そうと。町で最初に旅人と知り合いになったのは、ホテルのバーで働くプリン嬢。田舎町の毎日にすっかり退屈していた彼女こそ、旅人の計画にどうしても必要な人物だった-。

感想・レビュー・書評

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  • 「条件さえ整えば地球上のすべての人間がよろこんで悪をなす」
    田舎町ヴィスコスを訪れた旅人が、バーで働くプリン嬢にある計画を打ち明ける。1週間以内に町の誰かひとりの死と引き換えに、住人全員が生活をなすだけの金の地金を与える。そしてそれを住人に伝えるのはプリン嬢の役目だと言うのだった。
    善と悪の葛藤。悪魔の誘惑、天使の加護。娘と旅人の心理戦であり、町の住人全員の心理戦であり、自分と自分の心理戦である。そこに宗教に身を投じてきた神父の想いや、夫を亡くした後町を見守ってきた老婆の想いや、権力にしがみつく町長の想いなどが絡み合います。
    テーマは単純明快。だからこそひとりひとりの想いが重くのしかかってきます。

  • 田舎のバーで働くプリン嬢は、お金さえあれば町を出たいと思っていた。ある日『罪を犯してくれれば地金を十枚やる』と言う旅人が彼女のもとへやってくる。彼は悲惨な過去によって悪魔に取り憑かれていた。条件さえ整えば善人は悪人になるのか?キリスト教が絡んだ話。

  • 人の本質は善であろうか?それとも悪であろうか?平易な文章で書かれており理解しやすく、読者に対して鋭く突き付けられてくる骨が喉元に刺さり最後まで飽きずに読ませてしまう。静かで、落ち着いた作品でありながら力強さが感じられる。
    善良な市民が暮らしている田舎町。それは遙か遠くの外国でありながら、日本の風景にも近似した、まさしく「ありがちな町」。そんな町に一人の男が、殺人という悪を行うことができたならば町にとって過大すぎる金を与えようと賭けを持ち出す。
    不幸にも男の手伝いをすることになったプリン嬢は自分が殺されるのか、それとも金を盗み出して逃げる伸びるのか善と悪の岐路に立たされる。
    ラストがハッピーエンドに思えるのは、作者の生来的な性格によるものだろうか。
    個人的には善と悪の結論がはっきりとしていない。そう思わせられるもので納得ができない部分もあるが、十分なカタルシスが得られたことも間違いない。

  • 図書館から借りました

     善と悪との闘い。
     と、書くと派手な気がするが、もっと心理的なもの。
     悪霊に取り憑かれた男が、活気のない臆病な街にやってきて提案する。
    「ヒトを一人、殺してみせたら、この街に金の地金を10枚やろう」
     過疎が進み、若者がいなくなってしまった田舎町ヴィスコス。街の最年少はバーに勤めているシャンタール・プリン。彼女は悪魔に目をつけられて、一番苦しめられるはめになる。

     
     黄金が10枚。それは街の者たち全員が安楽に暮らせる大金。
     一気に目がくらみ、最年長のデルタばあさんを生け贄にする気満々になる街の人たち。

     シャンタールがこの街を逃げ出せてよかったなーと思う。
     彼女はおろかで臆病ではあったが、この悪魔の試練に耐えたから街にいっても間違えることはないだろう。

     絞首刑台の話は秀逸♪ 悪党街を改革するために、立派な絞首刑台を立てて、その前で憲法っぽいものを発表した。絞首刑台は人々の頭上から常に威圧したが、設置者はこれについてなんら語らず、10年の設置の間一度も使用されなかった。
     許しの日という発想もすごい。神に背いたリスト(不正とかそういうの)を読み上げ、神が自分に背いたリスト(祈ったのに娘は病気になった、とかそういうの)を読み上げ、今日は許しの日だから、私も神もそれを水に流して許します、という。
     影の主役は、昔の偉人アハブ(上記のことを街の人間にやって、街を立て直したヒト)です。
     説教くさい気もするけれど、シャンタールはけっして善だけにいる人間ではないので(いつも「私の地金」と言って、なかなかにがめつい)だからこそ、読みやすい♪

  • 人間とは善なのか悪なのかというのがテーマのお話。

    はしがきの「ひとりの人間に関しても社会に関しても、深遠な変化というのは非常に短い時間のうちに起こるのだと思う。」というパウロ・コエーリョの文章に共感した。

    善と悪とは表裏一体でどちらにでも転じる。

  • 人間の善悪を試す話。
    パウロ・コエーリョ作品で一番好き。
    まずプリン嬢って名前がかわいすぎだろう!

    「条件さえ整えば、地球上のすべての人間が喜んで悪を為す」

  • タイトルだけは聞いた事があった。
    ある人のblogの引用で、
    "ひとりの人間の物語はすべての人類全体の物語になる"
    と引用されていたのをきっかけに
    読んでみた。

    無宗教でミッションスクール出身の自分は
    キリスト教のイエスや神の存在に
    疑問を感じることが幾度と無くあった。
    信徒には神を試すなと言いながら、神やイエスは
    人間たちを試し、苦境に置く。
    だから、"カルロス"の言いたいことは、非常に理解できる。

    性善説か性悪説かとよく言われるが
    人間はどちらも常に持ち合わせていて
    悪人とされる人でも蜘蛛を助ける人もいれば
    善人とされる人が他者を裏切ることもあり
    常に一貫しないものなのではないか。

    私がプリン嬢だったらどうするだろう。
    どう立ち向かうだろう。
    "悪魔"とふたりきりで対峙するなんて怖すぎるし
    そんなことで報酬を貰うのは怖い。
    また、ベルタの立場であってもやはり怖い。
    かと言って全てを見捨てて逃げても後悔するだろう。

    蝿の王などを読んでも思うことだが
    極限状態において人間は、良心ではやはり生きられないのだろうか。
    悪魔の計画に乗るのをやめようと言う人はいないのだろうか。
    金のためか。自分の安全のためか。
    自分がその状況にあって、どう行動するか。
    "正しく"行動すると信じたいが、やはり恐怖で従ってしまうのだろうか。

    人が立ち向かわなければならない
    打ち克たなければ鳴らないものは
    "悪魔"という抽象的な概念ではなく
    常に自分自身なのだと強く思った。

    そしてまた、現実に"悪魔"と対峙することは、実は多い。
    その強さと種類に差はあっても
    誘惑や恐怖は生きている以上常身近にある。
    この村でおきたようなことはどこでも起きるし
    ひとりの人間の物語はすべての人類全体の物語になるのだから。

    悪魔に勝てる光を、恐怖や欲で制御されるのではなく
    自分自身の良心で育てていけることが出来たなら
    と思う。

  • ある小さな田舎町に一粒の悪意が落とされて、

    そして、町の最後の一日が始まる…

    という話。


    浦澤直樹のモンスターの最後の村の話をちょっと思い出した。

  • 「ベロニカは死ぬことにした」に続く、私にとって二冊目のパウロ・コエーリョ。面白かった。個人的には「ベロニカ」よりもスピード感があり、先が気になってどんどん読み進んだ。
    あらすじだけ見れば「善」と「悪」の戦いのようだが、実際はそう簡単にくくってしまえる内容ではなかった。そもそもプリン嬢は「善」の代表者とするにはすれすぎているし、同様に異邦人も「悪」の代表者となるほど邪悪ではない。それぞれの中に善悪は同居していて、せめぎあっている。
    この二人の攻防を主軸に、街の他の人たちについても語られる。
    結末も、所謂説教くさかったり教訓的なものだったりしなくてよかった。

  • 7日間で世界は変わるか。ひとは変わるか。過疎がすすむ村を内側から破壊するためにやってきた悪魔はじわじわと悪の根を張っていく。村ただ一人の若者、孤児で「かわいそうな」プリン嬢はその正体に気づく。これまで食わずぎらいだったパウロ・コエーリョ。ほかの本も読まねば。

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著者プロフィール

1947年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。現代において最も影響力のある作家の一人といわれている。2002年よりブラジル文学アカデミー会員。著作の多くが世界的ベストセラーとなり、88か国語に翻訳され、これまで170以上の国々で3億2000万部以上を売り上げた。多くの名誉ある国際的な賞を受賞しており、そのなかにはフランスのレジオン・ドヌール勲章がある。2007年には国連ピース・メッセンジャーに任命された。

「2021年 『弓を引く人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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