調律師の恋

  • 角川書店
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本棚登録 : 50
感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048972093

作品紹介・あらすじ

時は1886年。ロンドン随一の調律師エドガーに陸軍から奇妙な依頼が届く。「ビルマの奥地に行ってエラールの調律をしてほしい」エラール。それは音楽を愛する者にとって憧れともいえる伝説のピアノ。遙か遠い戦禍のビルマになぜ-疑問と不安を覚えながらも、彼は旅立つ。愛する妻を一人ロンドンに残して。カルカッタ、ラングーン、マンダレー…未知なる土地での出会いは、エドガーを引き戻せない運命の轍へと巻き込んでゆく。すべてはバッハの旋律のように静謐で、儚く、美しく、時に不条理なもの。すべては説明のつかない大きな愛。世界各国から絶賛された、弱冠26歳の医大生による衝撃の処女作。

感想・レビュー・書評

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  • 原題は"The Piano Tuner"なのに、邦題に「恋」がついてしまっているため、恋愛小説?と先入観を持ってしまう。
    実際は、旅行記のような冒険小説のようなサスペンスのような、不思議な魅力のある小説でした。

    1886年、ロンドンに暮らす調律師、エドガーのもとに、イギリス領ビルマへピアノの調律をしに行ってほしい、という陸軍からの依頼がある。
    いまだ平定にいたっていない混迷の地になぜピアノが運ばれたのか?そしてわざわざ調律師が呼ばれたのか?
    愛する妻を残し、エドガーはビルマへと向かう。

    内向的で繊細なエドガーが、見慣れぬ風景や異文化に出会ったときの、新鮮な驚きと純粋な好奇心が、物語全体に瑞々しい空気を吹き込んでいます。
    そこに徐々に穏やかならざる空気が織り込まれていくあたり、なかなか上質な読み味。
    「こんな映画ありそう」という感じの小説です。

  • 久しぶりに小説らしい小説。
    主要な登場人物は柔らかく、静かで、大きな心の動きはないのだが、周囲の環境だけが大きく変動していく。小説全体の雰囲気からすると、終わりは衝撃的だ。
    タイトルはちょっと気に入らない。原作のタイトルを日本語にしたら「調律師」にしかならないから、何かつけたかったんだろうけど、「恋」って…ださい。
    まああえて「恋」だとしたら、相手は誰かな、たぶんキンミョーだろうなあと思いながら読んでいて、最後の方でそれらしい雰囲気になるんだけど、でも結局、恋の相手はビルマそのものだったんだと思う。

  • 確かに。
    現題は「The piano tuner」であるのに邦題には「恋」が付く。いやしかして、恋って誰に?何に?って云う内容です。
    イギリスからビルマくんだりの奥地までピアノの調律に向かう、エドガー・ドレークの冒険譚(なのか)。
    旅先で出会う女性に惹かれてみる物ものの、ラストは恋女房の夢を見るという。
    強引に云えば、異国情緒に恋した男の話って云う所なのかな。医師からの手紙でそう思いました。うーん。。。

  • タイトル借りしました。
    「○○師」っていうモノに昔から弱くとくに
    「調律師」「調香師」などの調サムシング師ってものに何かしら幻想を抱いているからです。


    時代設定からくる未知すぎる異国の感じが素敵。
    湿気の感じとか、光の感じを想像してうっとりできるのはよかった。

    ただ調律師目線の話なので、(私にとって)肝心な調律師はあまりミステリアスなキャラクターではなくなってしまったので
    そういう点で期待と違った。
    勝手だけど。


    未開の地にどすんとピアノがある様は、ピアノレッスンみたいな感じかな。
    映像化したら素敵だろうけど、このボリュームでは難しいのかもしれない。


    好みの世界であるはずなのに、読んでいる間雑念だらけで集中できなかったのが残念。
    機会があれば、再読したい。


     

  • 19世紀ロンドン、調律師エドガーのもとに
    「ビルマの奥地にあるエラールを調律して欲しい。」
    と、陸軍から直々にオファーが入ります。
    『植民地戦争下のビルマに、
    なぜ伝説のピアノがあるのか。』
    …迷いながらも強く惹かれるエドガーは、未知の世界へと旅立ちます。
    カルカッタ、ラングーン、マンダレー、
    魅惑的な現地の風景、人との出会いが、
    エドガーを引き返せない運命へと巻き込んでいくのです。。。。。


    前半は依頼主からの手紙という形で、
    ビルマの歴史が詳細に述べられています。
    後半から話がググッと盛り上がり、最後は予想外の結末でした。
    詩人の語りかけた寓話、船上で出会った老人の話は
    このラストのためにあったのですね。
    キンミョーにピアノを教える場面、ピアノが川に沈む場面、
    最後の手紙を読む場面、そしてラスト…どれも映像が想像できて、
    まるで映画を観ているようでした。

    それにしても邦題が「調律師の恋」って
    電車の中で読む時、他人に表紙を見られるのが恥ずかしかったです。
    確かにエドガーは心を奪われたけれど、
    それは男女の恋ではないので念の為。
    タイトルは「調律師」で良かったんじゃないでしょうかね。


    主人公のエドガーは調律師にして
    平均律48曲を全曲マスターしているようです。少なくとも、
    突然の演奏会でも前巻全曲を演奏できる腕前なんですから脱帽です。。
    明日から私も平均律を復習しようかな…。

  • 原題は"The Piano Tuner(ピアノ調律師)"です。これはペーパーバックから先に読みました。もたもたしているうちに訳書が出てショック!しかも邦題が邦題なので、微妙にネタばれ(ロマンチックでいいけれど:笑)。

    大英帝国華やかなりし時代が舞台です。ロンドンでエラールというブランドのピアノの調律を請け負う主人公のもとに、ある依頼が届きます。「英領ビルマにあるエラールの調律をしてほしい」という、とんでもない依頼。しかも、依頼人は軍の中ではいわくつきの人物(優秀で風流を解するけど)。主人公は迷うのですが、最終的にはひとりビルマへ…と物語は進みます。

    大海原を渡って英領ビルマの奥地(タイ・中国国境のあたり)へ…という物語はなかなか心躍るものなのだろう…と思うのですが、ビルマへ着くまでの前半の流れはいいにせよ、後半がよくないように思います。これは読んだ私が東洋人だからかなぁと思います。ビルマってイギリス人(著者はアメリカ人だからこっちも入れて)が考えているよりも距離は遠くないように感じるし、風俗もそんなにエキゾチックに感じない。鍵となる女性も、穏やかでミステリアスなキャラクターが西洋人的に、東洋人女性のステロタイプというか…ちょっと興ざめな感じがぬぐえませんでした。結末はどうなのかなぁ…翻訳に助けられているような気がします。作品の静かな雰囲気は好きなんですけど。

    ちょっと期待しすぎて外してしまった感があるので、この☆の数です。ごめんなさい。

  • ●ハーレクイン調のタイトルは、かなり強引につけてる感あり。つうか幻想小説ですやん? 架空歴史幻想小説でも可。 ●すごく絵画的と言うか映像的と言うか、ある人物の視点でとらえた現象を、狂騒的に、炎熱的に、海と河と川、森林と虎と鳥とを交えて濃密に書き表している。と書いても言葉不足。うーん。 ●や、ビルマの奥地にピアノを調律しに行く話なんですけどね。単に。

  • 水面を滔々とすべるエラールが眼に浮かぶようです。
    視覚を大変刺激します。

  • これは面白い タイトルのイメージと全然違う 1880年代の上ビルマの英領化の陸軍省と当時のビルマの民族についてもよく描かれ現地の音楽と西洋の音楽の違いを巧みに利用して いる 唐突な謎の依頼 そして 航路 そしてジャングルの中の行程 そして恋 そして スパイに暗号 そして 悲哀が襲ってくる うーん面白い 

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