- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048973250
作品紹介・あらすじ
地質学者エイホン・ヴァフターはいまラタナキリ国にいる。とうとうぼくは、麻薬入りのトランクをもって、ここまで来てしまった。金欲しさに麻薬密売人アクセルの言いなりになって。数年前、ここでオランダ人ビジネスマンが麻薬所持で死刑になったというのに。結局ぼくは、アクセルに人生の手綱を握られているのか。14歳のサマーキャンプで出会った、あの反抗的なカリスマ。誰もが引きずりこまれる、あらがいがたい不思議なオーラ。でもあの夏は、ぼくが将来の夢を決めた夏でもあったんだ…。オランダの大御所クラベーの、超傑作サスペンス。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
西村玲子さんおすすめ。
どこから眺めても美しいダイヤモンドのような完璧サスペンス。
あまりの好みさ加減に圧倒。息つく暇もない。 -
クラベーは、オランダ人。人口1600万人のオランダで 5〜20万部と言う超ベストセラーを連発する大物作家だそうです。
ラタナキリと言う名のアジアのどこかの国に、エイホンは麻薬密売人のアクセルの手先になって、麻薬入りのトランクを持ってやって来た。恐怖に震えながら、彼は、約束の時間、約束の駐車場へ取引に赴いた。彼を待っていたのは、昼間見かけたアメリカ人の女性だったが、彼女もまた怯えており、不意にエイホンは彼女が運命の女性だ、と感じた・・・・
最初のうち物語は、地質学者になりたいと願うエイホンと、無鉄砲で危険だが魅力的な少年アクセルの間に生まれた奇妙な友情を描きながら、過去と現在を交錯させて進展する。エイホンとアクセルの関係は普段はまるで別々に進みながら、時折交差する道のように所々で出会い、また別れて、の繰り返し。これは、エイホンが悪の魅力に惹かれてアクセルに運命を狂わせられる、巻き込まれミステリーなのかな、と思って読んでいると、後半、ああ、と胸を突かれるような愛の物語になっていきました。はるか遠く仕舞い込まれていた愛が蘇る時、もたらされた運命の悲しさ。そこまでの描写が淡々としているだけに、その愛はしみじみと心に染み渡り、切ない。人生に少しづつ疲れていった男が命を失うとき、その瞬間はきっと輝いていたのだろう、と思わせられて、無残な死さえ美しく感じられました。
これはなによりも愛の物語でした。