- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048974202
作品紹介・あらすじ
38歳の誕生日に一通のメールが届いた。
呼び起こされる痛恨の記憶と目前に立ち上がるあの日々の続き。
漫画家を目指し上京した永山が住んだ、美術系の学生が集う共同住宅・通称「ハウス」。
飯島、田村、仲野、めぐみ、奥……住人達との生活の中で降って湧いた希望と、
すべてを打ち砕いたある騒動。そして「おまえは絶対になにも成し遂げられない」という仲野の予言。
神様はなんで才能に見合った夢しか持てへんように設定してくれんかったんやろ。
それかゴミみたいな扱い受けても傷つかん精神力をくれたらよかったのに。
何者かになろうとあがいた青春と何者にもなれなかった現在、
上京以降20年の歳月を経て永山が辿り着いた境地は? そして「人間」とは?
又吉直樹の初長編小説に、単行本では描かれなかった新たなエピソードを加えて待望の文庫化!
感想・レビュー・書評
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ジャケ買いしましたが、個人的にはあまり面白いと思えませんでした。しかし、内地から沖縄に帰ってきた人間として、生きるとは何か、人の温かさや家族、親戚に囲まれて生きる事の意味を訴えかけているように感じました。
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『火花』『劇場』よりかなり観念的な小説で、特にナカノタイチ騒動あたりの言葉を尽くした主張は、全編又吉版『如是我聞』みたいだと思った。
影島は自分のことを「俺人間じゃないです」と言って物語から姿を消す。
けれどこの本のタイトルははっきりと『人間』で、悩み、葛藤し、自分なんて人間じゃない、とまで思っても、それこそが人間だ、受け入れて足掻くしかない、というメッセージなんだろうか、と推測したりした。
作中に太宰治『人間失格』も登場するし、又吉さんなりの返歌のような作品なのかもしれない。 -
「なにより自分にこの小説を捧げたい。生きるために書いたから」。あとがきの又吉さんの言葉が、まるで文鎮のように、私の心にこの小説を留めておく。又吉さんに好感を抱くのは、彼が「考える人」だから。地表からではなく、深い海の底から太陽を見上げるような、そんな人間に感じるからだ。
又吉さんの素顔が、永山と奥という二人の表現者として現れる。「変な人」とか「妖怪」だとか、自らを歪な者として捉えざるを得なかった、その原因は、周囲にいた「人間」の気持ち悪さ。「人間失格」上等だ、みたいな叫びが聞こえる。太宰好きもダダ漏れ。
又吉作品、三作目。
今後も読ませてください。 -
「火花」「劇場」は読んだことがあったけどこれが1番読みにくくて読後感も暗く感じました。
読みにくさは主人公 永山の視点で語られることによる独りよがり感。特に誰に伝えるわけでもない永山の心の動きが訥々と続きます。読みにくいといえば読みにくいのだけど、人間の個人の胸のうちとはこういうものだよなと思いました。
「人間」というタイトルだけあって凄く人間臭くて本を投げ出したくなるところも所々ありました。作者が自己や生きることと対峙したうえでうまれた作品なのだと言うことをひしひし感じました。 -
又吉さんの私小説なのかなと思った。本書に出てくる様々なエピソードが、以前エッセイやインタビューで語られていた。
そんなこともあり、「人間失格」っぽい。そう言えばタイトルも「人間」だし。
何者にもなれないけど、自分を受け入れて生きていくしかない。
それは絶望ではなく、希望なのかもしれないと思った。 -
芸能界、芸能人、不良といった中で生きていく人たち、独特の世界観、それならではの苦悩。奔放で自由に生きているように思える父親。
沖縄の話が出てくるが、偶然にも行ったばかりだったので、見てきた風景が蘇ってきた。人間失格、もう一度読んでみようか。 -
人間のもがいてる様子が痛々しくも、目が離せない珍しい読書体験でした。
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又吉さん作品を初めて手に取りましたが、ご本人の体験談、思うこと、言いたい(でも言えない?)事を率直にこの本に込めたのかな?という印象です。
勝手な解釈ですが、永山も影島も又吉さん本人を代弁しているように読めました。
特に影島の、事実を歪曲したり断片だけを切り取って世に流すマスコミや、SNSをストレス解消のための誹謗中傷に使う奴らに対する嫌悪感は共感できました。
読後に調べましたが、永山の家族関係(出自等)が又吉さんのそれとほぼ一致してますね!自伝のようなものだったんでしょうか。
前述のように「書きたいことを書いた!」という感じなので、話全体で起承転結みたいなものはなく、ちとしんどかったというのが正直なところです。
又吉さん=芸人≠エンタメ作家
というのを感じた作品でした。
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これは又吉さん自身の話なのでは?という箇所がたくさんあり『人間失格』を読んだときと近い感情になりました。
又吉さんの書く人物の物の見方、面倒だし自意識と嫉妬すごいし繊細すぎて心配になるんだけど、面白いんだよな。又吉さん自身の魅力でもあるのかな。
『火花』のような分かりやすいカタルシスはありません。『劇場』と比べてもストーリーとしては分かりづらいかもしれません。
ラストが、とか展開が、とかではなく、ところどころの場面がすごく心に残るような作品でした。
特に影島とのバーでの会話が好きです。再会した二人の高揚感がめちゃくちゃ伝わってきたし、その時間の濃密さと、そこから主人公の創作意欲やアイディアが湧いてくる感じがすごくよかったです。
ひとりの人間の多面性や自己認識の曖昧さなどの描写が難しくもあり、ふわふわした幻想のようでもあり、でもリアルだなぁと思いました。 -
・各章繋がりが薄く、ひとつの物語になっていないように感じた。
・セリフやメール文が長い。なんだか著者の思ったこと、日記、日々のストレスを登場人物にそのまま言わせているのではないかと思った。ロシア文学みたいにわざと長くしているのか?私にとっては受け入れられなかった。
・登場人物すべてが複雑な比喩や例え話、理論を使って会話する。全部著者の言いたい事の代弁に思えて一人相撲に感じた。小説を使って今の世の中について言いたいことを言っているだけに思えた。
・小説は登場人物の会話だけでは語られない間の心の動きを読むことが楽しいと思っているが、この本にはそれが無くすべてぎゅうぎゅうのセリフで説明されていたところが残念だった。特に2章目以降。
・思った が おもった とひらがな表記なのが気になった。理由があるのか。
・著者の他の作品はなかなか好きだったので、期待して読んだが今回は合わなかった。でも次回も読むと思う。