気前の良い人類―「良い人」だけが生きのびることをめぐる科学

制作 : Tor Norretranders  山下 丈 
  • アーティストハウスパブリッシャーズ
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本棚登録 : 26
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048981798

作品紹介・あらすじ

なぜ、雄のクジャクは長い尾を持っているのか?他者への寛大なる行為が、結果的には自己利益につながることをダーウィン進化論、遺伝子学、ゲーム理論を元に解き明かす画期的な人類論。

感想・レビュー・書評

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  • 『ユーザーイリュージョン』の著者デンマーク人トール・ノーレットランダーシュが書いたものというだけで購入。『ユーザーイリュージョン』でもサイエンスライターとしてかなり幅の広さがあり、それが稀有な本にしていたのだが、本書でも遺伝学を中心に様々な学問分野を縦横に引き入れて展開している感じが楽しい。その学問的正確さについて確認できるすべを持っていないのだけれど、まずはサイエンス本として面白い。


    一見すると生存に不利なクジャクの羽根を雄が発展させたのは、それがその不利益を被ってもなおも生存することができるという能力を示すシグナルになることで雌を惹きつける、というハンディキャップ理論というものがある。
    著者は、一見すると不利な利他的行動や文化的行動は、それをしてもなお生存するだけの能力を持っている、それだけの余裕を持っていることを示すことで、女性が男性を選択することによる性淘汰を通して発展してきたものだと説明する。

    その意味で「気前の良い人類」は進化によって発展してきたものであり、人類にとって本質的なものであると示唆する。

    性的平等などのポリティカルコレクトネスが絡む話題である。もちろんそのことは著者は意識しているし、尊重もしている。ただし、遺伝子を通した生物の歴史として構築されてきた資質なりを論理的に解釈することとは別のことだと。

    人類の進化においては自然淘汰だけではなく、性的選択が重要であったのである。そのときに、利他主義は異性を惹きつける優秀さのシグナルともなっていたのである。そして、文化たるものもその余剰を示すためのシグナルとして発展をしてきたのである、というのが著者の組み立てである。さらには、IT時代においてオープンソースなどの知識の共有についてもこれまでに引き継がれてきた気前の良さに結び付けられるのである。


    貧困は高くつく。貧困をなくす福祉国家は正しい。
    貧者が豊かになれば、富者もますます豊かになる。
    移民は受け入れる国家を利する。

    遺伝子は利己的だが、人類は利他的である

    なので、「人間は愛を求めて寛大にふるまう」

    きっと粗はいっぱいありそうだが、楽観的で嫌いではない。



    『ユーザ・イリュージョン』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4314009241

  • 『気前の良い人類――「良い人」だけが生きのびることをめぐる科学』
    原題:DET GENERØSE MENNESKE (People's Press, 2002)
    著者:Tor Nørretranders(1955-)
    訳者:山下丈
    アーティストハウス2004/ 7
    ISBN 4-04-898179-X

    【メモ】
    ・ブログ
    http://www.tor.dk
    ・本書についてのWIKIPEDIA記事 
    https://da.wikipedia.org/wiki/Det_generøse_menneske

    【簡易目次】
    人間の脳は、協力に喜びを感じる
    エゴイスト同士も協力する
    なぜ人間は助けあうのか?
    寛大なふるまいが、生物を進化させる
    雌はゴージャスな雄を選ぶ
    ハンディキャップは最高の品質証明書
    他人を助けると、セックスへのチャンスも高まる
    ダブル・ダーウィン―一人の人間に潜む二人の人間
    性的選択は進化のベンチャー・キャピタル
    なぜ、人間は物を贈りあうのか?
    大切なのは、贈り物を受け取ること
    分配できるほど、利益も大きくなる
    世界を救う行為は、究極のセックスアピール
    人間は、愛を求めて寛大にふるまう

  • 面白かったー。不快をなすこと、気前がいいこと、いい人が結局はセックスアピールが増して遺伝子を残すってこと。気持ちよく生きよう、それが子孫を残す方法だ。

    〈本書の内容〉
    1人間は「ホモ・エコノミクス」ではない。
    我々が寛大な振る舞いに喜びを感じる理由とは?
    2気前の良い行為は、生物を進化させる。
    利他的な個体のいる集団は、生存競争に勝つ。
    3明らかな浪費は、ステイタスとなる。
    不快が快に変わるとき。
    4利他主義は、セックスのチャンスを高める。
    気前の良い行為は、競争を勝ち抜けることの証明だ。
    5我々は「寛大な人類」としても存在している。
    愛が、人類の二つの側面を共存させる。
    6望んでいるものを得るには「回り道」が必要
    不快な行為からは、深い満足を得られる。
    7人間は、愛を求めて寛大に振る舞う。
    自己の利益を追求するには、気前良さが最大のポイント。

  • 少々文が固かったり、乱暴な物言いもあるのだが、面白い本。
    ここでいう「良い人」とは、「利己的である」ために「すべてを分け与え」る人。
    その根拠として科学的な例がいくつも載っています。

  • 進化論という言葉が一人歩きしている世の中ですが(宗教と対立するものとして捉えられたり、進化論だけで何でも説明できると思われたり)、本当の進化論には相棒の「性的選択」という存在がおり、それと両輪を成すことで初めて色々説明できるんですよー、という本。難しい内容ですがエピソードの紹介も豊富で飽きずに読める内容です。

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