夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.83
  • (35)
  • (50)
  • (38)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 934
感想 : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049125832

作品紹介・あらすじ

片田舎に暮らす少年・江都日向(えとひなた)は劣悪な家庭環境のせいで将来に希望を抱けずにいた。
 そんな彼の前に現れたのは身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子(つむらやこ)だった。彼女は死後三億で売れる『自分』の相続を突如彼に持ち掛ける。
 相続の条件として提示されたチェッカーという古い盤上ゲームを通じ、二人の距離は徐々に縮まっていく。しかし、彼女の死に紐づく大金が二の運命を狂わせる──。
 壁に描かれた52Hzの鯨、チェッカーに込めた祈り、互いに抱えていた秘密が解かれるそのとき、二人が選ぶ『正解』とは?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 二人の想いと信念が胸を切り裂く 甘く切ない恋愛ミステリー #夏の終わりに君が死ねば完璧だったから

    切ないですねぇ…
    恋愛というのは華やかで美しい。しかし、背景や環境によっては残酷なものです。

    若い男女が不幸な環境な中で懸命に生きた記録。自分が若いころに感じた「覚悟」を思い出させてくれました。

    本作は特殊な病をベースに、男女の恋愛と感情の価値をミステリータッチで綴られた作品です。ちょっと設定が強引な気もしますが、起承転結をバランスよくまとめおり、さすがは斜線堂先生といったところ。

    キャラクターもよく描けており、特に病に侵されている女性のセリフや言動がリアル。完全に私の心はわしづかみにされてしまいました。先生お得意の恋愛ミステリー、面白く切ない作品でした。

    ■推しポイント
    やっぱり、恋愛のなんたるかについて問うているところですね。
    正直、青臭い問いではあるのですが、真正面で書ききったところが激アツでした。

    かつて私は、結婚式で誓いをたてました。
    「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか。」

    答えはもちろん「はい」。
    しかしこの誓いを守れたかは、寿命を全うする時までわかりません。

    どんなことでも未来のことは、約束や証明はできない。
    実績を積み上げることによって、約束を果たしていく。その過程が証明となっていきます。

    主人公はよくやった。
    夏の終わりに二人の幕は閉まりましたが、主人公は自身の未来に向けて、ひとつ実績ができました。これからです。

  • 「金塊病」という、体の一部が金に変化する難病を患った女性 津村弥子

    金塊病患者を受け入れるサナトリウムのある町に暮らす、中学三年生の少年
    エトはサナトリウム反対派の活動をする母と、地域振興事業に失敗した義理の父と暮らす。母からは連日罵詈雑言を浴びせられ、義理の父とも一定の距離感で付き合っている。

    町の活気はなく、子供がいないため、中学校は生徒が少ない。
    閉塞感が漂う小さな世界
    ある日、エトは弥子に偶然出会い、落とし物をサナトリウム内に届けることになる。ボードゲームの「チェッカー」で勝負してエトが勝ったら弥子は、三億円として売れる自分の身体を相続させると言う。

    彼女に勝てば、三億円が手に入り「町から出る事のできない希望のない未来」を変えることが出来る。
    だが、エトは次第に彼女に惹かれていく…

    どの様な方向に転ぶのかがわからず
    少しそわそわしつつ、二人の関係が深まっていく過程を追う。
     側から見てしまうと「遺産目当ての結婚」の様に見えてしまい、二人の想いは無視され周りは受け入れない。
    その気持ちをどの様に証明するのか?が主題とのこと…

    チェッカーの仕組みについて触れている。良手、悪手(失敗)を繰り返して「二人なりに最善の解答」にたどり着けるのか、結末を想像してしまうからこそ「その先」が気になった。

    そして読み終えたが、納得したが
    まだ答えを考え続けている。
    スラスラと読み終えた分、二人のことが儚く思えてしまう。

    余談:一冊前に読んだ「シカゴ・ブルース」の主人公は「エド」今回のエト(江都)君と名前が似ている。
    同じく少年の成長物語でもあるし、自分は無意識にそういう本を欲しているということなのか?

  • 人間の感情は証明できるのか。

    愛などの感情の証明の難しさを強く感じた。加えてこの
    作品では大金が絡んでくるのでより一層難しいだろう。どれほど言葉で想いを伝えようとしても、言葉には限界がある。

    周りの人からは理解されなくともエトと弥子のお互いの気持ちは通じ合っていたと思う。2人はお互いに『感情の証明』ができていた。

    死ぬのを期待され、生きている自分より死んだ後の自分の方が価値があるのはとても悲しく辛い…

  • 『金塊病』という、死後に身体が金へと変わってしまう病に侵されているいる女性と、
    金塊病サナトリウム近辺に住む中学生男子の話。

    愛だ恋だはお金という価値の前ではどう姿を変えるのか。

    自分が金塊病だったら、と想像すると難しい。
    死ぬのをウキウキ待たれるのはムカつくな。
    さっさとお金に替えて欲しい気もするし、海へドボンも良いなー。

  • 自分はこうゆうビターハッピーエンド(?)の本を読むと
    「救われないな」「幸せになってほしかったな」
    って思ってしまう。
    そんでもし弥子さんが病気じゃなかったら
    二人はどんな人生を歩んだのだろうと妄想をしてしまう。
    これが正しい楽しみ方なのかは分からないけど。

    好きな人と一緒にいたい。
    その感情にいくらの価値があるか、というテーマの本。
    お金は目に見える価値の証明だ。
    なら感情の価値はお金を与えるか捨てるかで証明できるのか。
    『愛情ってさ、もしかしたら、捨てるかあげるかしかないのかな』
    『それは、何だか寂しいよね……』

  • 斜線堂さんの小説をずっと読みたかったので、読めてよかった。
    「感情」を証明することはとても難しい問なのだと強く感じた。
    言葉の選び方もとても綺麗で、するする読むことが出来た。
    他の作品も読んでみたい。

  • タイトルに惹かれて手に取った1冊。

    鮮やかで、難解で、切ない物語。

  • 好きな人がもう残り僅かな命なだけでなく自分の愛ですら疑われてしまうという絶妙な設定が良かったのと細かい所に伏線が仕込まれていて最後に全てが分かるのが面白かった。

  • 2020このライトノベルが凄いだったかで書評見て読みたかった本。ようやく読めました。正直、人の死を流れの中心に据えた本はあまり好みじゃないのですが、これは良かったです。何だろう?死んで別れることを悲しがらせることや、グロ過ぎる描写では引っ張っていかない話だからかな。中学生に受けるお話だと思います。君膵の仲間っぽいけどもっとロジック入ってる感じ。
    頭に思い描かせる場面の描写が美しいなぁと思いました。閉塞感のある高台の盆地、そこにある塀に囲われたサナトリウム、美しい人との邂逅とマフラー、そして鯨、海。
    エトを選んだ理由、お話の終わり方がよかったです。52ヘルツのクジラがこれにも出てきて、ちょっと驚いた。

  • 献本で頂いた本、5冊目。うーん、正直に言うとちょっと相性が悪かった。謎の病気に罹る弥子。弥子は徐々に身体が固まり金塊になるという難病。生活が貧しい江都は弥子と知り合いになり、江都が弥子にゲーム(チェッカー)に勝ったら自分の亡骸(3億円相当)を江都に提供することを約束するが、江都は弥子が大切な存在になり、お金よりももっと大事なものに気づく。人間の価値観は状況により変わる。その時、その場所、誰といるか等のよる。登場人物の価値観の変化が目まぐるしく変わっていくが、その変化についていけなかった。

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

2016年、第23回電撃小説大賞にて〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。受賞作『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビュー。近著に『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(メディアワークス文庫)、『コールミー・バイ・ノーネーム』(星海社)がある。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斜線堂有紀の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
米澤 穂信
砥上 裕將
辻村深月
恩田 陸
劉 慈欣
凪良 ゆう
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×