戦争は女の顔をしていない 1

著者 :
  • KADOKAWA
4.04
  • (100)
  • (109)
  • (61)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 1729
感想 : 114
  • Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049129823

作品紹介・あらすじ

「一言で言えば、ここに書かれているのはあの戦争ではない」……500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。『狼と香辛料』小梅けいとによるコミカライズ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  衝撃を受けた。読むのを一時中断、深呼吸。コミックと侮ってはいけない。実は書店で買おうか買うまいか散々迷ったあげくに購入した本。この中身で、よくコミック化したものだ。帯にある富野由悠季氏の言葉ではないが、まさに「瞠目」と「脱帽」。

     原作者スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏は、ベラルーシの女性ジャーナリスト。2015年にジャーナリストとして初めて、ノーベル文学賞を受賞している。原作は彼女のデビュー作であり、独ソ戦に参加した女性(兵士、将校、軍属)500人以上に取材したインタビュー集とのこと(原作購入済だが未読)。その内容から出版を拒否され続けた作品でもある。ちなみに、日本語訳も出版してくれるところがなかなか見つからなかったらしい。

     ソ連では第二次世界大戦で女性が従軍し、狙撃兵や戦闘機パイロットもいたことは承知していた。ただその数が百万人をこえること。軍人及び民間人の死者が二千万人を越えていること(当時ソ連の人口は約一億九千万人)は知らなかった。戦時下の女性を描いたコミックとして、こうの史代氏の「この世界の片隅に」が有名であるが、描かてれいるのは「銃後」。本書は砲弾飛び交う「前線」で戦う女たちを描いているのだ。おそらく原作以上のインパクトがあると思う、なぜなら「絵」があるから。

  • 登場するロシアの女性兵たちは16~7といたいけない年ごろ。「戦争中に10㎝も背が伸びたよ」というエピソードは胸が痛い。洗濯部隊(こんなのがあるんだ!)や狙撃兵のエピソード。ソ連が大祖国戦争と呼ぶこの戦いは、祖国をドイツ兵から守る戦いだから、少女たちも祖国愛に燃えて戦う。日本の女性が銃後の守りをしていた時に、徴兵ではなく、志願する女性がいたことに驚く。男たちに伍して、忍耐強く、誇り高い。戦争は女の顔をしていない。一方、攻防戦の主な舞台はウクライナ。東西の境目にあるために戦禍にまみれ続ける歴史は痛ましい。

  • >「幸せって何か」と訊かれるんですか?私はこう答えるの。殺された人ばっかりが横たわっている中に生きている人が見つかること……。

    >「こんな泥まみれで死にたくない」と思った。

    >飛ぶだけではなく、女の子たちは敵機を撃墜しました。私たちを見て男たちは驚いていました

    >戦争で一番恐ろしかったのは……男物のパンツを穿いていることだよ

    独ソ戦争(第二次世界大戦のうちドイツとソ連の間で展開された「史上最も凄惨」と言われる戦争、1941-1945)に従軍したソ連の女性たちに後年インタビューした本、の漫画化です。

    20世紀の究極の男社会である戦場で、死に慣れ、恐怖に慣れ、殺人に慣れ、あるいは戦争が終わった後に日常にもういちど慣れなおし、生きたり死んだり負傷したりする。

    小梅けいとにこれを書かせた人は凄い。
    監修の速水螺旋人は戦争モノの大家だと思うけどこのようには描けなかっただろう。
    この本は語り継がれる一冊になるだろう。

  • 2021年7月に1巻のみ電子本で読んでいたが、どうしても大判で再読したくなった。
    賛否両論・毀誉褒貶あろうが、断然支持したい。
    ベストセラー便乗本は数あれど、本書は志が高い企画。
    そしてあの原作をコミック化するための努力……想像し絵として定着させるすることの過酷さ……は確かなものだ。
    先日読んだ「同志少女よ、敵を撃て」にどうしても関連付けて考えてしまうが、「そこに確かに人がいた」ことの、恐さと嬉しさが、絵に現れている。
    涙と笑顔がこんなに胸に迫る漫画はなかなかない。
    個人的には「蒸気機関車は私の人生。私の青春よ。私の人生で一番美しい時代」というコマのある180ページがぐっときた。
    またどうしても人の顔に注意を向けてしまいがちだが、背景や小道具やに留意しながら再読してもよさそう。

    なんでも3巻が3月に刊行されるとのこと。
    それで助走をつけてアレクシエーヴィチの原作に向かおうかな。

    それにしても木尾士目「げんしけん」の作中アニメ「くじびきアンバランス」をコミカライズしていた漫画家が、こんな漫画を手掛けるとは。

    富野由悠季の帯文
    「この原作をマンガ化しようと考えた作家がいるとは想像しなかった。瞠目する。原作者の慧眼をもって、酷寒のロシア戦線での女性の洗濯兵と狙撃兵の異形をあぶり出した辣腕には敬意を表したい。それをマンガ化した作者の蛮勇にも脱帽する。男性の政治家と経済人たちの必読の書である。女たちは美しくも切なく強靭であったのは事実なのだ。」

    鼎談
    https://ddnavi.com/interview/643316/a/

  • まず、ノーベル文学賞を受賞した史上初のジャーナリストの方の原作があることを知らなかったのですが、今回、漫画でこのような歴史が存在したことを知ることができて、良かったと思っております。

    第二次世界大戦中の「大祖国戦争」と呼ばれた、ナチ・ドイツとソビエト連邦の戦争における、ソ連の女性将兵たちへのインタビューを元に書かれているのですが、全てが事実かどうかの確証はないそうです。

    ただ、この作品の場合、あくまで戦争に自ら志願した(徴兵されたのではなく)彼女たち自身がどのように記憶、認識をしているのかが重要であることは、読んでいくうちに実感出来ると思います。

    私自身、戦争を体験していないし、すぐ隣で、さっきまで話していた人が死んでしまうような、あまりに凄絶な惨状に対して、本当に何も言葉が出てきません。

    それでも、この作品を読んで、自らの体を傷付けていく洗濯部隊の存在を知ったり、空から爆撃されているのに、衛生袋を下げていることに気付くことで、恐怖でなく恥ずかしさを感じて、負傷者を助けに引き返す、女性特有の気高さや美しさを感じられたことによって、そうした惨状の最中でも、そのような女性らしい感情が存在していたことに、何だか泣き笑いのような気分になりました。四年間という長さも、女性にとっては大きいですよね。

    原作もぜひ読んでみたいと思いました。

  • 原作者は、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさん。第二次世界大戦にソ連の軍隊に所属した女性たちの物語だ。ソビエト連邦とナチス・ドイツとの戦いの日常を漫画というカタチで表現している。極寒の土地であるがゆえの厳しさも、細部を描写することで伝わってくる。雪の残る春先、スナイパーは12時間腹ばいのママ過ごす。体温で雪が溶け水になる。ずーっと水に浸かった状態で過ごす。ときに、その水がまた凍るときもある。戦争の不条理、生死の狭間の心境、人を殺めることが日常になる異常さが伝わってくる作品。そして、生き抜いてきた彼女たちの強さを感じる。
    ロシアの戦争を日本人が漫画として表現するのも、その地域の時代背景を知らないとできないことであり、相当な困難もあったのだと推察される。当時の様子を後世に伝えることの意義があり、本書に出会えたことを大切にしたい。

  • 2015年にノーベル文学賞を受けたベラルーシの女性作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの最初の作品で、第二次世界大戦に従軍したソ連の500人以上の女性の聞き書きをまとめたルポルタージュ。
    恥ずかしながら私は著者のことを知らなくて、コミカライズされたこちらを書店で見かけた時には衝撃が走った。戦争の前線で活躍した女性がいるなんて、そんなこと一度も考えたことが無かった。一度も考えたことが無かった自分にも驚いた。
    女性には徴兵令が発せられないので、ここに登場する若い女性兵士達は皆、自ら志願して戦地に赴いている。
    夫を先に送り出した女性も、乳飲み子を抱えながらの女性もいる。でも戦地ではそんなこと一切関係なくて、女性も男性と同じように集団に属し戦うことを強いられる。
    女性だから、という言葉は極力使いたくないけれど、でも生物学上の女性だからこその負担や苦悶が書き記されていることが、戦争という特殊な環境下だからなのか、より禍々しく痛々しく際立っていたように思う。

    "工事を見に行くと嬉しいことにミシンはそのまま残っていました そこで家に帰っていく女の子たち一人一人にプレゼントしたのです 私は嬉しかった 本当に幸せだった 私ができるせめてものことでした"

    "戦地にいたことがあって あんなにたくさんの死体を見て いろんなことを体験しているのに 暗い谷が怖かった"

    "誰かのリュックからネズミが飛び出したら 女の子たちはみな飛び上がって 上の段に寝ていた子たちも金切り声をあげたものよ"

    "脱脂綿や包帯だって負傷者の分さえ足りなかったんです 私たちの分なんかとんでもない"

    "恥ずかしいって気持ちは死ぬことより強かった 数人の女の子たちはそのまま水の中で死んでしまった"

    "私たちは髪を切って泣きました"

    "昼は軍靴を履いて 夜は鏡の前でハイヒールをちょっと履いてみる"

    "戦争に行ったことがある人ならこれがどういうことかわかるんだけど 一日離ればなれになるってことがどういうことか"

    "戦争で一番恐ろしかったのは…… 男物のパンツを穿いていることだよ"

  • 最高でした。いや、内容が内容なので、最高って表現が相応しくない事は、重々承知していますよ、私だって。
    しかし、この作品そのものの評価は、「最高」としか表現できないレベルに達しています。そうである以上、恥は承知で、素直に「最高」と言うしかないでしょう。
    表紙と、書店にある試読の小冊子で、何となく、内容が重めであるな、と察し、購入を躊躇っていたのですが、ブクログの談話室で背中を押してもらい、購入に到りました。
    当然のように、「どうして、こんなにも最高の作品を、もっと早く読んでいなかったのか」と激しい後悔が襲ってきました。そんな後悔を、漫画読みに与えられる事が、最高の漫画に必要なものではないか、と私は思っています。
    大雑把に内容を説明すると、戦争、しかも、前線で、一つしかない命を懸けて戦っている女性たちの“日常”が描かれています、この作品では。
    戦争には、大勢の女性も関わっていて、そこには十人十色のドラマがありました。
    仲間内で共有できる喜びも悲しみも怒りも悔しさも、友人と別れる辛さも、ちょっとした事に対する嬉しさも、底無しな恐怖も、薄まることのない絶望も、八方ふさがりになるほど物資不足に陥った現状への不満、限界まで追い詰められたからこそ純度が増していく生への執着、人間の心理が全て、ハッキリとしたタッチで描かれており、胸を強く揺さぶられます。
    言うまでもありませんが、戦争は正しくない行いです。そんな当たり前のことを、本物の戦争を知らないで済んでいる世代に噛み締めさせる、それの必要性と困難さを、この作品が穏やかに、しかしながら、厳しく教えてくれます。
    戦争は、大勢の人から何もかも奪っていき、あらゆる事柄を変えてしまい、全てを歪めてしまいます。性別、年齢、立場は一切、関係なく、大勢の人が何も得られず、それでいて、何が大切なのか、大事にすべきなのか、を思い知らされたのでしょう、戦時中に。
    人によっては胸糞悪くなったり、過酷すぎる戦争の一面にショックを受けすぎてしまうかもしれません。その上で、あえて言います、これは現代人が読むべき漫画である、と。コロナ禍を筆頭に、多くの難事に直面させられている今だからこそ、読む必要がある、と私は感じました。

    この台詞を引用に選んだのは、もう、そりゃ、シンプルに破壊力抜群だな、と感じたからに他なりません。
    女性は弱い存在ではない、と感じさせてくれる台詞じゃないでしょうか、これは。
    情ない話ですが、この台詞で、女性の心の強さを感じてしまうのは、私がどこか、無自覚で女性を見下していたからかも知れません。見下している、と言うか、一種の恐怖があって、その裏返し的な感情でしょうか。
    男に生まれたからと言って、女性に無条件で勝っているなんてことは、絶対にないんでしょうね。
    優劣なんぞ付けるべきではないんですが、あえて言えば、男はどう足掻いたって、女性には敵わないんですよ。
    努力や勝負、それ自体が無駄とは言いません。ただ、そもそも、男が女性を相手にしてムキになるのは滑稽ですし、勝ち誇るのだって虚しいでしょう?
    女性は強い、それを当たり前のことだ、と受け入れてこそ、カッコいい男じゃありませんか。
    女性に、こんなにも胸に響く台詞を言って貰える、そこまで愛して貰える男になれるよう、頑張ってみたくなりました。
    「私たちには、子供がいません。家は燃えて、無くなりました。写真も残っていません。なんにも残っていないんです。夫を国に連れていけたら、お墓なりとも残ります。戦争が終わって、私の帰る場所ができます。同志元帥!あなたは、恋をしたことがおありですか?あたしは夫を葬るんじゃありません。恋を葬るんです」
    (答えはありません)
    「それでは、私もここで死ぬわ。彼なしで生きる意味がありません」(byエフロシーニヤ・グリゴリエブナ・ブレウス)

  •  流行がすべての世の中になりつつある。ノーベル賞を取ったからっといって、一時流行った「チェルノブイリの祈り」も「ボタン穴からみた戦争」も、そしてこのマンガの原作も、早々と忘れられていく。「戦争」も「原子力発電所の事故」も遠い昔の他人ごと、そのうち、「ホントは」とかいうたいそうな言い草で嘘八百を吹聴する輩が登場するのだろうか。とんでもない時代が始まっているとつくづく思うけれど、忘れないで、マンガに仕立てた人がいることに、ちょっとホッとした。
     マンガは、とても上手とは言えなし、筋の運びもぎこちない。でも、岩波現代文庫なら読まない人が手に取ることは素晴らしいと思う。ガンバレ小梅けいと!
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002060000/

  • 文字だけでは表現できることのないものという、残念ながら存在している。

    もちろん、ノーベル文学賞を受賞する原作を否定する気は微塵もない。
    この作品は先ず原作在りきなのだ。

    だからこそ、この作品は衝撃的なのだ。
    普通の女性が戦争へ行く、志願して。

    その先にある体験は、彼女達だけのものだ。
    私たちに許されるのは、彼女達の体験を聴かせてもらうことだけ。

    だからこそ、ドキュメンタリーとなり、コミカライズされることにより多くの人の元に届く。

    共に彼女達の体験に耳を傾けようではないか。

    そして私は願う。

    戦争なんてものが無くなることを。

全114件中 1 - 10件を表示

小梅けいとの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×