ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~ (メディアワークス文庫)
- KADOKAWA (2020年7月18日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049130836
作品紹介・あらすじ
ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本――横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。
どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。
深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める――。
感想・レビュー・書評
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扉子は2021年に9歳なので、今、高校生ということは、この物語の設定は、おそらく2027年から2029年あたりと思われます。
扉子はすくすくと本好きの栞子さんの影響を受けて育ち、栞子よりも先が楽しみなくらいです。
友だちのブックカフェ兼古書店の娘の戸山圭との交流がとてもよかったです。
さて、扉子はこの先どんな本を読んで大人になるのか楽しみです。
第二話はビブリア堂には珍しく、あたたかないい話でした。こういう話を私はもっと読みたいと思いました。
プロローグ
扉子は高校生になりました。
扉子は祖母である篠川智恵子に頼まれて大輔の書いた新潮文庫の『マイブックー2012年の記録』と『マイブックー2021年の記録』を持ち出しました。
智恵子は「2012年と2021年に起こった横溝正史の『雪割草』事件について確認したい」と言っていました。
第一話 横溝正史『雪割草』Ⅰ
井浦清美という女性かが「盗まれた本を取り返して欲しい」という依頼を栞子にします。
その本は依頼主の亡くなった一番上の伯母の持ち物だった幻の作品、横溝正史の『雪割草』で、昔、新潟の地方新聞にf連載されていたものを持ち主の上島秋世の夫が生前に装丁した自装本でした。
清美は犯人は自分の身内で、双子の姉妹である自分の母親か伯母であると主張しますが、栞子があることづけを提案して、二人に伝えると『雪割草』は戻ってきました。
ただし、その中にひとつ消えていたのもがありました。
第二話 横溝正史『獄門島』
2021年の10月、扉子は小学3年生。読書感想文のコンクールに出す、序文に読者への挑戦状のある横溝正史の3千円の古書の『獄門島』を買いに鎌倉のもぐら堂に大輔と来ています。
しかし、取り置きされていたはずの『獄門島』がなくなっていました。扉子の推理で『獄門島』を持っている人物がわかります。
担任教師が子どもが読むべき本じゃないと心配していた『獄門島』も子供向けにリライトされていたものだとわかります。
最後には扉子には読書好きの話の合う同い年の友だちができます。
第三話 横溝正史『雪割草』Ⅱ
2021年、11月。栞子と大輔は入籍して10年になります。
井浦清美から栞子にメールが入ります。
母の井浦初子が亡くなり、蔵書をビブリア堂に買いとって欲しいという遺言書があったということでした。
栞子と大輔は井浦家に足を運ぶと、9年前に井浦清美の伯母の持っていたもので消えたと思われていたものらしきものを大輔が発見しますが…。
エピローグ
扉子が二冊目のマイブックを読み終えると、智恵子がやってきます。
「今日、私にここへその本を持ってこさせたのは、わたしに読ませるためだったんでしょう?」
「その二冊に書かれている以上のことを読み取れるか、わたしを試そうとしている。隠された事実に、どこまで私が気づけるか」と祖母に食らいつく扉子。
見事に二冊の本からの謎の答えを祖母に答えます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
そろそろ飽きてきたこのシリーズだが、今回は横溝正史先生と知ってこれは読まねばと借りてみた。
三話収録なのだが、第一話と第三話が「雪割草」で第二話が「獄門島」。つまり二冊だけ。ちょっと物足りない。
ただ第一話と第三話の間に九年の時が経っている。「雪割草」に関するあるニュースを覚えていて作品も読んだ私はなるほどと思った。
第三話で、時を経て以前解決出来なかった部分を解決しようとする設定は横溝先生の「病院坂の首縊りの家」のようだと話すシーンがあるが、「病院坂~」以外にも昔の未解決事件の真相が新たな事件の発生により明かされるという手法は横溝作品によくある。その設定を今作品でも重ねたというのは作家さんの遊び心も感じて楽しめた。
第一話では横溝作品に出てきそうな旧家で「雪割草」が盗まれるという事件が起こる。そしてこれまた横溝作品に出てきそうないがみ合う姉妹(しかも双子)が互いを疑っている。
この第一話では2012年の設定なので、先に書いた「雪割草」に関するあるニュースはまだ報道されていないし、その作品もまだ…。
なのにここまで「雪割草」に近づく栞子の推理力はやはりすごい。さすが古書探偵。しかし栞子ですら解けない謎は残り、この一家にも大きなわだかまりを残したままという後味の悪い話となった。
九年の時を経ての第三話。これまた栞子の推理力が発揮される。しかもこの話では第二話の「獄門島」とも絡みがある。横溝先生のファンとしても興味深い話だった。
だが第一話で残ったわだかまりは益々深まったような、辛い結末だった。
サブタイトルにもなっている扉子だが、2012年生まれの扉子が活躍するのは2021年設定の第二話のみ。
小学三年生の扉子が学校の読書感想文を書くために選んだのは「獄門島」。それも古書店に取り寄せを頼むという…やはり栞子の娘。
ところがその取り寄せてもらったばかりの「獄門島」がタッチの差で間違って売られてしまう。もう手に入らないのか…と思いきや、扉子は栞子顔負けの推理で見事真相に辿り着く。
本以外のことはわからないが、少なくとも古書に関しては扉子に隠し事は出来ないようだ。
しかしこういう子だと同世代の子たちと上手くやれているのかどうか、何しろ栞子がああいう人だから心配になるが、この話では良い友人との出会いがあってホッとする。
ところで扉子九歳の2021年という設定にもあれ?と思ったのだが、プロローグとエピローグではさらに未来へ進み、扉子は高校生になっている。
古書探偵としての推理力はますます磨かれているようだ。久しぶりの智恵子登場だったが、彼女と会うのが『恐ろしく、楽しかった』と感じる扉子。栞子以上に只者ではなさそうだ。 -
や〜面白かったー!
ビブリアシリーズ好きだなぁと再確認。
扉子ちゃんは高校生になり、母親譲りの本の虫っぷりを発揮。三世代に受け継がれる本の虫DNA 。このDNA、本を長時間読めない大輔の血が入ったところで何のその、強力すぎてちょっとこわい!笑
年は経れど、相変わらずミステリアスな智恵子さんもすらっと再登場する。扉子へのちょっとした試験を兼ねて。
一冊まるまる横溝正史。
名前はさすがに知っているけれど、私は金田一少年の世代なため(堂本剛とともさかりえのドラマ観てた)、金田一耕助は「じっちゃん」であって、本来の探偵としての作品を読んだことがなかったのよね…!
そっかー、横溝さんは、こんなに長期間にわたり、色々なジャンルの作品を世に送り出した稀代のストーリーテラーだったのね。
ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事は、横溝正史の幻の作品『雪割草』が盗まれ、その調査をしてほしいというもの。
旧家の邸宅で、女主人の秋世の死後、秋世が大切にしていた古書が忽然と消えてしまったという。
仲違いする双子の姉妹と、その娘と息子。半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。
しかし、栞子の推理と機転により出てきた当の古書からは、本来あるべき直筆原稿は見つからなかった。姉妹や子らは互いに疑心暗鬼となり、ますます関係はこじれ、事件は全解決とはならずに迷宮入りしたように見えたー。
そして9年後。姉妹の死をきっかけに、またビブリア古書堂に、蔵書を買い取ってほしいと依頼がくる。蔵書の買取作業をする中、雪割草の直筆原稿らしきものが発見され、9年前の事件とつながっていく…、
この雪割草の話を軸に、扉子ちゃんの話がプロローグ、獄門島、エピローグで綴られている。
今巻は、栞子さんから扉子ちゃんへの探偵役バトンタッチの巻だったのかな?
扉子ちゃんの洞察力、伸びやかな感性と素直な心、また違うお話になっていきそうで、これからもとても楽しみ。
★4.5 -
このビブリアシリーズを読み始めた時は、
本当に暇つぶし程度で全く内容に関しては期待しないで読み始めたんですが…
全シリーズ読んでいるし、毎回面白いという!
今回も横溝正史の幻の作品にまつわるストーリー
小説は読んだことはないけど、あのおどろおどろしい世界観は大好きでドラマでは観てたので期待が膨らみます。
読んでみたら、やっぱり面白くてあっという間に読み切りました!
そして、Amazonプライムで石坂浩二版の
「獄門島」も見てしまいました笑
たぶん次回作もあるだろうエピローグだったので
つぎのビブリアシリーズも楽しみです。 -
ビブリア古書堂の扉子シリーズ2作目。
今回は横溝正史の2作品をベースに進む物語。
この作品に関わる事件。家族の成り行き。
半世紀の時間に渡りひとつの結末を迎える。
その人の生き方、ひとつの家族さえ影響を及ぼす本。
すごいものだなと思いました。
年月を通じて歳を重ねていく篠川親子。
彼らを見守るのもこの作品の楽しみとも思いました。 -
過去(大輔の記録)と現在を行き来する話で、現在の扉子は高校生。
前作以上に、一気に時が進んだ感じ。
古典ならともかく、横溝正史くらいの時代でも、発表媒体も不明で、少しの原稿とタイトルしかわからない作品なんて、あるのだなと。
事実は小説より奇なりで、『雪割草』の存在そのものが魅力的。
サブタイトルのわりに、扉子の影は薄かった。
それでも、栞子とおなじか、下手をするとそれ以上の鋭さをすでに持ち合わせていて、末恐ろしい。 -
シリーズ再始動! 冒頭から栞子と大輔の娘扉子が登場。ん、高校生だと。確か2012年生まれで、高校入学したばかりとあるから2028年の設定か。祖母の智恵子さんも登場。三代にわたっての推理力発揮とは、なんか「ドラゴンボール」みたいになってきた。これからのシリーズは、扉子と千恵子さんを軸に話が進んでいくのかな。それにしても智恵子さん怪しすぎる。美人ですから、お若いときは妖しい部分もあったのでしょうね。
今巻では横溝正史が取り上げられている。そして家族のあり方がテーマになっていて、このシリーズには珍しく、ちょっとほろ苦い結末になっている。 -
2020年7月メディアワークス文庫刊。書き下ろし。シリーズ通算9作目。横溝正史の雪割草と獄門島に関わるお話。プロローグの扉子と智恵子の邂逅が、エピローグで、(ひとまず)回収されるまで、気になって気になって仕方がなかったです。雪割草の事件はイマイチでしたが、横溝正史の話は興味深かつたです。扉子と智恵子の今後が気になります。
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三上延『ビブリア古書堂の事件手帖II 扉子と空白の時』メディアワークス文庫。
完結シリーズの続編。帯には『シリーズ再始動』とある。
タイトルとプロローグから、娘の扉子が主人公の全く新しいシリーズなのかと思ったのだが、結局は以前と同じ、栞子と大輔の物語だった。また、今回のテーマは横溝正史なのだが、描かれるストーリーもミステリーにも横溝正史らしさは感じられず、横溝正史に関する蘊蓄が楽しめただけだった。
一旦完結したシリーズを再開するのであれば、相当な覚悟を持って、設定なども大きく変更するなどの工夫が必要だと思うが……
本体価格630円
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冒頭、扉子ちゃんが高校生でびっくりしたよ!けれど話は現在ではなくて2012年と2021年に跨って起きた旧家、上島家で起きた横溝正史の幻と言われていた小説「雪割草」の私家版の在処を巡る事件。小さな綻びを見落とさず真相に切り込む栞子さんの鋭さは健在。大輔君とのほんのり仲良し振りにはにやついてしまう。間の扉子ちゃん小学3年で取り置きを頼んだ「獄門島」が誰かに売られてしまった話が先の事件の真相解決に上手く嵌ってきた時は唸った。散りばめられた横溝エピソードがファンとしては嬉しくて身悶え。(でも探偵物好きなせいか「雪割草」未読だ)しかし最後の智恵子の不穏さが薄気味悪い。そういえば小学生が「獄門島」で読書感想文書くなんて!と学校の先生や大輔君に心配されていたけど私高学年だったけど角川版で読みましたがな。
著者プロフィール
三上延の作品





