- 本 ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049151398
作品紹介・あらすじ
ゾンビになっても未来は明るい。人間の時よりも元気な身体になるし、宇宙飛行士(※酸素や新鮮な食料を必要としないゾンビは、宇宙船や月面基地での仕事に適しています)にだってなれる。
ゾンビだって恋をする。バレンタインデーにはクラスの気になるあの子に、ライバルより高級なゴルゴンゾーラ(※ゾンビは新鮮な食品を嫌いますが、発酵食品は人間と同じものを食べられます)をあげたい。
ゾンビ誕生から「歴史完成」に至る、人間とゾンビの宇宙興亡千年史!
※2519年6月20日「新人類憲章」の成立により、長年差別的であるとされてきた「ゾンビ」という呼称は廃止されました。本書では当時の時代背景と本書の資料的意義を考慮し、一部表現をそのまま掲載しています。
感想・レビュー・書評
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ラノベなのだが、SFテイスト満載のショートショート連作短編集。というか、これはレイ・ブラッドベリの『火星人年代記』のゾンビ版とでも言うべき作品である。西暦2100年代から3100年代までが描かれる。
吸血鬼が人類を圧倒し、多数派になるという作品は、過去にいくつかあったが、ゾンビが多数派になるという物語は初めてではないか。
なかなか設定はが凝っており、ゾンビは人間を喰らうわけではなく、食糧は腐った食品である。したがって、チーズや納豆などの「発酵」食品は食べることができるのだ。バレンタインデイーには「チョコ」の替りに「チーズ」を送るようになる。そして、その特性から宇宙開発(月面、火星)に重用されることになる。まあ一種の隔離政策とも言えるが。
しかし、ゾンビは既に「死亡」しており、生殖して子孫を残すことは不可能。そして旧来の人類は、いつしか滅びの道をたどることに…
本書はラノベとはいえ、侮れない作品である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
巻頭になんともポップな「はじめてのゾンビ生活」という作中登場のパンフレットの一部があり、その面白さに惹かれて購入。
SF群像劇だがゾンビ誕生からの1000年にあった出来事を過去から未来まで順序バラバラに進んでいく。しかし文章が大変読みやすく混乱することなく読めた(多少「これ誰だっけ」とはなったが)。
終盤になると点と線が繋がる感覚もあり、オチは静かなものであったが現実味があった。 -
ゾンビSFという文化に初めて触れたが、触れてみたところでよく分からなかった。ゾンビとSF……?その合うような合わないような掛け合せの概念がまず面白い。何百年もの時をランダムに駆け巡るオムニバス調の小説ながら、作品自体にバラついた印象は無くなく、前章で疑問だった要素が即回収される完結っぷりは小気味よかった。