ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~ (4) (メディアワークス文庫)

  • KADOKAWA (2024年3月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784049152982

作品紹介・あらすじ

三つの時代をまたぎ紐解く、鎌倉文庫の謎

まだ梅雨の始まらない五月の終わりの鎌倉駅。よく似た顔立ちだが世代の異なる三人の女性が一堂に会した。
戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」。千冊あったといわれる貸出本も発見されたのはわずか数冊。では残りはどこへ――夏目漱石の初版本も含まれているというその行方を捜す依頼は、昭和から始まり、平成、令和のビブリア古書堂の娘たちに受け継がれていく。
十七歳の「本の虫」三者三様の古書に纏わる物語と、時を超えて紐解かれる人の想い。

感想・レビュー・書評

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  • 令和編から始まります。
    令和の主人公といえば高校生の扉子です。
    高校でせっかく一緒になったもぐら堂の娘の戸山圭とけんかをしています。
    けんかの原因は圭が持っていた夏目漱石の『鶉籠』の初版本であることがわかりますが、その出所は…。

    第二話は昭和編。
    女子高生だった久我山尚大の隠し子だった智恵子とビブリア古書堂の前店主だった篠川登との出逢い。
    やっぱりビブリア古書堂で出逢ったのですね。
    鎌倉文庫の貸出本を巡るお話。

    第三話は平成編。
    主人公は智恵子の娘で扉子の母の栞子。
    『吾輩は猫デアル』の出品者を巡るお話。



    私は、漱石といえば『坊ちゃん』』『夢十夜』『こころ』あたりしか全部読めていないのに、この親子三代たちはいつものことながら、凄い博学だなあと感心しました。さすがビブリア古書堂!
    『行人』『草枕』は最近買ったので(この本にはでてきませんが)できれば読みたいと思います。
    初版本とか、鎌倉文庫が登場しますが、フィクションであると思うとなんとなくへんな感じをいとえなかったです。

  • 篠川昇さんに初めてスポットが当たってるんじゃないだろうか。新たなビブリアの歴史を知れて楽しかった。

    智恵子、栞子の10代の話も詳しく出ててシリーズを読んできた人は、とても楽しい本だと思う。

    喧嘩した扉子がちょっと可愛そう

  • 『ビブリア古書堂の事件手帖~扉子~』シリーズの四冊目ですね。

     夏目漱石の『鶉籠』を巡り、扉子は親友の戸山圭と、気まずい関係になっていたが、仲直りをする事になるが、『鶉籠』がもと鎌倉文庫所有の本であった事が謎になり、扉子は鎌倉文庫を探ると、祖母の智恵子の存在が浮かび上がってきた…………?

     智恵子、栞子、扉子の三代の十七才が織り成す、『鎌倉文庫千冊』の謎解きミステリーです。

     智恵子と篠川登の出逢いと、二人の『鎌倉文庫』をめぐる物語が、初めて明かされます。

         目次

      プロローグ
     第一話 令和編『鶉籠』
     第二話 昭和編『道草』
     第三話 平成編『吾輩ハ猫デアル』
      エピローグ

     智恵子の過去と、登が詳しく語られるのは、これが初めてで、二人のなれ初めを面白く読めました。二人の関係を本をめぐるミステリーに仕上げるとは、さすがですね。
     『鎌倉文庫』をめぐるミステリーを、栞子・扉子まで繋げる構成は、興味津々で面白く読めました。
     ビブリア古書堂のキーワードに漱石を持ってくるのは、三上延さんは、かなりの漱石好きだと思います。
     大輔と栞子の出逢いも漱石でした。
     ちょっと影が薄い栞子の妹の文香があどけなく、母智恵子の失踪後が、いじらしく描かれているのが、胸を打ちます(思いがけず大輔と出会っていました)。       
     文香が独立心が高いのは、早くに母と父と別れた事(登は死別)によるとわかります。
     少しずつ、篠川家の過去が、これからも話題に上るのを期待しましょう♪(まだまだ、栞子の過去の謎解きは明らかにされていませんから)

  • 孫娘の扉子が主役だった新シリーズだが、今回は祖母含めて3世代の17才時の同じ秘密が解き明かされて行く。
    プロローグで3世代の家族が勢揃い。次の章から令和、昭和、平成と展開して行く。戦後の混乱期に鎌倉に居た著名文士達が拠出して出来た「鎌倉文庫」の千冊に及ぶ本の行方。
    昭和の時代の祖母智恵子はビブリア古書堂に通う女子高生。店先で鎌倉文庫の情報に接し、のめり込んで行く。この時に店の息子と知り合って、後に結婚。ダークモード発動で、強引に解決に結び付けたのだが、ここでお互いに惹かれあって結婚するのが不思議。
    平成の時代の娘である栞子も鎌倉文庫に関わって行く。持ち前の洞察力と推理力で解決して行くのが凄い。2代と3代は本以外は駄目なキャラがホッとさせる。

  • シリーズ11作目。
    前作から2年、新しい扉子シリーズになってからは2年ピッチで新作が出版されてます。前回の栞子シリーズは1年でした。
    そういった意味でも前シリーズに比べて文章に筆の乗り具合が感じられず読み手側もなんとなく勢いに乗れないまま読む始末。
    物語も構成も悪くは無いし、レトロな物に価値があると思う私には古書にまつわる話は読んでいて楽しいのですが、いかんせん前作より2年も経つと前回の話など全く覚えてない。だから序盤から物語にすんなりと入っていけない。
    シリーズ物は勢いが大切なのでもう少し筆を早くしていただきたいですね。

  •  扉子シリーズになって4巻目だが以前の巻のようなダークさ、あるいはビターテイストはない。

     今回は、戦時中に鎌倉に住む文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」の貸出本がテーマとなっている。そのほとんどが行方不明になっているのだが、中には文豪夏目漱石の蔵書も含まれているという。

     それらの本に、扉子、栞子、そして智恵子がそれぞれ絡む。昭和、平成、令和と時代と世代を超えて「本」の行方を捜すことになるのだが…

     3人の17才時の過去が描かれていて興味深く読むことができた。栞子より2才年下で中学生の大輔も登場するするのはご愛嬌か。
     
     ラストは綺麗に収まっており、最初に述べたように後味は悪くない。というか、こういった終わり方は好きだな。

  • 身辺バタバタしていて、ここ最近じっくり本を読む心境になれなくて、読書量落ちてます。。。

    待望のビブリア古書堂シリーズ。
    今回も内容が濃く、しかも時代の変遷とともに智恵子、栞子、扉子に繋がっていくストーリー。
    古書にまつわる史実を織り交ぜたフィクション
    とっても面白かったです!
    あぁこれでシリーズ完結?と感じさせる充実のラストでしたが、著者あとがきでは「次の巻もよろしく」と。
    まだまだ古書の世界が広がっていくのか…すごい!

  • お久し振りに「ビブリア古書堂」、11作目。
    今回は、かつて鎌倉文士たちが設立した貸本屋、鎌倉文庫の蔵書の行方について、篠川家の女性たち3代の関わりが描かれる。

    夏目漱石の作品を中心に語られる物語は、扉子~智恵子~栞子の順で話が展開。
    前作の感想に『のほほんとした恭一郎が悩める扉子の良い後輩になってくれそうな雰囲気でいい感じと思っていたが、いやはや…。次巻、どうなることやら』と書いたが、令和編で語られる扉子と恭一郎はそれなりに進展?心配していた智恵子さんのダークサイドの影響は今のところなかったみたいだが、今回、扉子の推理はあまり冴えず。
    昭和編では智恵子さんがセーラー服を着ていた頃の姿が描かれ、既にその将来を予感させる不敵さ油断なさで今回もまた印象は強烈。これまで語られていなかった篠川登(その後の智恵子の夫にして栞子の父)が登場するのが珍しくまた面白い。
    平成編は作者さんか書きたかったという栞子さんの過去の話。こちらもまたセーラー服の栞子さんが登場してさすがの推理を見せるが、どちらかと言えば、それまで話を引っ掻き回してきた兼井健蔵花子の夫婦に良いところを持っていかれたみたい。

    それぞれが招待され一堂に会したパーティーで、また智恵子さんが何かをぶっ込んで来るかと思っていたが、意外にも普通の家族の集まりみたいになってやや拍子抜けした。

  • ビブリア古書堂シリーズです
    このシリーズも長いな〜

    このシリーズの醍醐味は実在する本がでてくるところではないだろうか

    本作では夏目漱石の『鶉籠』『道草』『吾輩ハ猫デアル』が取り上げられている
    これら三作品に関わる事件を、
    令和(扉子)、昭和(智恵子)、平成(栞子)のビブリア古書堂の娘たちが解決していく

    シリーズを読んでいる人ならご存知の通り、ビブリア古書堂の篠川一家(智恵子、栞子、扉子)は、桁外れの博識と明晰な頭脳、人の心を読むような観察眼を持つ有能者である

    ブクログを見ていると実際に篠川一家に負けず劣らずの博識を人たちがいますよね〜


    例えば、、、

    我が師匠である、ひまわりめろんさん
    レビューの9割はテキトーだが間違いなく博識である


    さらには、土瓶さん
    辛口レビューで評価★1、★2は当たり前だがこれまた博識である


    また違った方面の博識と言えば、みんみんさん、おびのりさん
    シマシマ本の知識はハンパない


    シリーズものの読む順番も気にしない、ゆーき本さん
    シリーズ4作目から読んでも内容を理解することができる博識ぶりには驚き!w


    次世代エース、yukimisakeさん
    お若いのに読書量と知識はすごい
    特に濃ゆい本は!w


    積読本の神、ultramanさん
    積んでる本をぜーんぶ読んだらさらに博識にw


    で、ここに来て頭角を現し始めたのが、読書と酒に酔いしれるbmakiさん
    酔った勢いでポチッと本をどんどん購入
    このままいけばものすごい知識量を手に入れるのでは!?


    と、イジっても怒られない人たちをあげてみましたwww

    まぁ冗談はさておき、みなさんの博識ぶりには毎回驚かされます!

    自分の知らない本に関する知識が増えていくのもブクログの楽しみのひとつですね(≧▽≦)

    • 1Q84O1さん
      ユッキーさん

      間違ってます!
      もともと濃いという潜在能力を秘めていましたが、ブクログを通じて覚醒したのです!
      つまり、元から濃ゆいのです!
      ユッキーさん

      間違ってます!
      もともと濃いという潜在能力を秘めていましたが、ブクログを通じて覚醒したのです!
      つまり、元から濃ゆいのです!
      2024/06/27
    • 1Q84O1さん
      おびさん

      おびさんの本棚が濃くなる日もすぐそこかもしれませんね…
      おびさん

      おびさんの本棚が濃くなる日もすぐそこかもしれませんね…
      2024/06/27
    • 1Q84O1さん
      みんみんさん

      何をおっしゃいますやら…
      シマシママイスターじゃないですか!
      みんみんさん

      何をおっしゃいますやら…
      シマシママイスターじゃないですか!
      2024/06/27
  • 「鎌倉文庫」を巡って、昭和、平成、令和と時代が変わる中、祖母、娘、孫で話を紡いでいくかたちになっています。

    「鎌倉文庫」は貸本屋のことで、川端康成や久米正雄などの著名人が自身の持つ初版本、稀覯本や夏目(漱石)家から借りた本を店に並べていたそうです。
    しかし、お店はかなり早く閉店し、貴重な本は今も多くが所在がハッキリしていないという史実をもとに、ビブリアのフィクションを織り交ぜています。

    毎度の事ながら、史実とビブリアのフィクションが交わると、ロマン溢れる作品となり、ワクワクします。

    読了したため、また次のビブリアのロマン溢れる作品に逢えるまで、作中に出てくる、まだ読んだことのない川端康成や夏目漱石の本を読みたいと思います。

  •  作中の鎌倉文庫は、実在した鎌倉文士たちによる日本の貸本屋で、昭和20年5月1日鎌倉市在住の文学者たちが自らの蔵書数千冊を集めて開いた。
    発案者は、久米正雄や川端康成他(戦中から戦後昭和25年まで)でその後、在庫は、ゾッキ本として市中に流通し、今では稀覯本と言われる本も多数あった。中でも本書では夏目漱石の初版本の行方と謎について書かれています。

     プロローグの中に、この三人(栞子・知恵子・扉子)の女性が揃うことは滅多にない。
    あらためて見比べると、本当によく似ている。似ているのは外見だけではない。三人とも並外れた知識を持つ「本の虫」で、それぞれ頭の回転が速く、記憶力も優れている。と書いている。

     第一話令和編「鶉籠」・第二話昭和編「道草」・第三話平成編「吾輩ハ猫デアル」
     何れの話も興味深く、時を超えて紐解かれる人の思いが活き活きと表現されているように思います。

     三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズは十一作目ですが、全て読みました。

     早くも次回作が楽しみです。
     読書は楽しい

  • 新シリーズ第4巻。今作のテーマは夏目漱石と「鎌倉文庫」。大きく3話構成になっている。
    第1話は漱石の「鶉籠」という著作集の謎に、高校生の扉子が挑む『令和編』
    第2話は1973年を舞台に、当時、高校生だった智恵子(扉子の祖母)が漱石の「道草」をきっかけに、事件の発端となる場面に出会した『昭和編』
    第3話は漱石の「吾輩ハ猫デアル」をもとに、栞子(扉子の母)が全ての謎を解決していく『平成編』

    前作までよりはダークさは控えめで、読み易さは戻った印象です。これまでほとんど描かれていなかった、栞子の父と智恵子との出会いが描かれた事で、そんな印象をもったのかもしれません。
    前作発売から丁度2年で出た第4巻。扉子はまだ高校生だし、まだまだ続編はありそうです。期待して待ってます。



  • 扉子4作目。
    実在した鎌倉文庫を巡る親子3代の物語。
    プロローグで祖母・智恵子、母・栞子、扉子が勢ぞろい。
    戦後に存在した鎌倉文庫のその後の行方を巡る謎を、令和を扉子、昭和を智恵子、平成を栞子で紡いでいく。
    祖母の智恵子の若い頃や、栞子の父の話はこれまでシリーズを読んで来たファンとしては新鮮。
    鎌倉文庫は鎌倉に縁ある作家たちにより創設されたものだが、その中に混じっていた夏目漱石の作品を軸に描かれるのが、さすがと言う感じ。
    「鶉箱」「浮草」「吾輩ハ猫デアル」
    実はいずれも読んだことがない作品。
    それでも、この謎解きは本格的で久しぶりに面白かったし、親子3代に渡る物語は読み応えがあった。

  • 前作のエピローグで触れられていた、ビブリアの今後を左右する、祖母、智恵子さんの「計画」が明らかになるのかと思いきや、今回は過去のお話。智恵子さんと登さん(栞子さんのお父さん)との出会いが綴られています。登さんは、すでに亡くなっており、今まで名前しか出てこなかったので、どんな人か気になっていました。高校生の時の智恵子さん。その頃から、人を自分の思い通りに動かすことに長けていたのですね。

    そしてもう一つ。孫の扉子ちゃんと、親友の戸山圭さんとの関係。この二人、前作では仲違いをしていて、お互い口を利いていませんでした。この本では、その原因が明らかになります。なんと、智恵子さんの過去の話とリンクしています。

    今回の謎に関する古書は、夏目漱石。私の好きな「吾輩は猫である」が出てきて、楽しめました。

  • 2024年3月メディアワークス文庫刊。書き下ろし。扉子シリーズ4作目。通算11作目。ビブリア古書堂の千恵子、栞子、扉子と3代にわたる鎌倉文庫ストーリーか興味深い。ただ、古書を収集する資産家の妻である花子が本好きを明かさないのはさすがに不自然極まりないと思うのだが…。これ、ちょっとした謎なんです。

  • ビブリア古書堂の事件手帖の新シリーズ第4弾

    昭和、平成、令和の三つの時代をまたぎ紐解く、鎌倉文庫の謎。

    智恵子、栞子、そして扉子の本の虫たちに夏目漱石の初版本等が絡み合って面白いですね。

  • ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~
    著者:三上 延

    ---

    **あらすじ**

    三つの世代を超えて挑む、夏目漱石・名著の秘密。ビブリア新シリーズ第4弾。
    三つの時代をまたぎ紐解く、鎌倉文庫の謎。

    まだ梅雨の始まらない五月の終わりの鎌倉駅。よく似た顔立ちだが世代の異なる三人の女性が一堂に会した。
    戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」。千冊あったといわれる貸出本も発見されたのはわずか数冊。では残りはどこへ――夏目漱石の初版本も含まれているというその行方を捜す依頼は、昭和から始まり、平成、令和のビブリア古書堂の娘たちに受け継がれていく。
    十七歳の「本の虫」三者三様の古書に纏わる物語と、時を超えて紐解かれる人の想い。

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    **感想**

    今作では、物語が令和の扉子から始まり、昭和の智恵子、そして平成の栞子という順に進んでいく構成がとられています。時間の流れとは逆行しつつも、それぞれの時代に生きる三人の女性たちが、同じ「古書」と「想い」に向き合う姿が重なり合い、静かで奥深い感動を与えてくれます。

    現代を生きる扉子の好奇心と行動力は、物語の出発点としてとても自然で、読者を古書の謎へとスムーズに引き込んでくれます。そして、舞台が昭和へと遡ることで、智恵子と登の若き日の姿や、戦後の鎌倉で営まれていた文化の断片が描かれ、古書が単なるモノではなく、人と時代をつなぐ「記憶の媒体」であることが改めて感じられます。

    最後に描かれる平成の栞子の視点では、彼女が母・智恵子と娘・扉子の中間に立つ存在として、静かに物語をつないでいく様子が印象的です。彼女の視点によって、親子三代にわたる「本」と「人」の繋がりが完成され、読み終えた後には深い余韻が残りました。

    本を通して人間の歴史や記憶を辿るというテーマは、古着や古道具などを通して過去の持ち主に想いを馳せる感覚にも通じるものであり、「人は人との繋がりに魅了される生き物である」という本質を静かに語りかけてくるようです。

    そして、いつの時代も変わらず彼女たちを支える登や大輔といった存在が、家族の物語に優しい安定感をもたらしています。時代が変わっても、大切なものが変わらないということの象徴のようでもあります。

    この巻がシリーズの転機になるのか、それとも新たな展開の序章となるのかはまだ分かりませんが、ぜひこれからも令和の時代にふさわしい「古書ミステリー」として物語が紡がれていくことを期待したいです。

  •  智恵子さん、栞子さん、扉子ちゃんの3世代が醸す深〜い洞察を堪能できる作品でした。それぞれの時代を背景に俯く女子高生。色白で真っ直ぐな長髪で黒縁メガネをかけた姿は指紋が照合されるかのようにピタリと重なる。そんなイメージを描かせてくれる時代錯誤な情景でした。
     漱石はだいぶ前に読んだはずですが、すっかり他の本のストーリーに上書きされて思い出せませんでした。坊ちゃんにしても、吾輩は猫であるにしても、そんなに辛辣な描き方だった?と疑ってしまった。
     世に二つとない初版本の陳列を前に3世代の"ロン黒白肌メガネ"は我を忘れて悦に浸る姿は微笑ましくもあった。(文香ちゃんが何話目かで表現した"おっぱいメガネ"には劣ります)

  • 扉子シリーズとなり4作目、今回は夏目漱石がメイン古書、そしてかつて鎌倉に存在した「鎌倉文庫」なる貸本業がキーとなり、さらに3世代親子の17歳時の事件が紡がれていくという、今までにない構成であった。鎌倉文庫についてはwikiでも調べること可能で、その在庫がほとんど行方不明という事実にも多いに興味が持てた。土地柄を組み合わせての展開であり、作者の創作性にただただ脱帽である。


    令和編「扉子」昭和編「智恵子」平成編「栞子」と進んでいくが、なんといっても白眉は昭和編「智恵子」の章である。これまでのラスボス的キャラにも17歳という時代があり、そこには年相応の出会いがあり、抱えている悩みなどがあったりしたのだろう。直接描写はなものの、智恵子を描写する際の言葉や空気感などがとても好ましかった。そして智恵子の配偶者、栞子の父親、篠川登氏が昭和編、平成編に登場する。大学生の青年期から父となった壮年期の彼に、おどろくほどの篠川大輔との相似性を見出したのは、おそらく自分だけではないだろう。親子3代異性の好みは似通ってるのかも?昭和編での智恵子、登のやりとりに、おもわずにんまりしてしまう。栞子、大輔のやりとりとはまた別の、古書を離れた青春を感じるのもシリーズ初の体験であった。


    まだまだ終わりの見えないシリーズであり楽しみである、と、ここで個人的に挑戦してみようと思ったのが、ビブリア古書堂年表であるのだ!以下時間をかけつつ整理していきたいと思う。



    ビブリア古書堂年表

    1956 三浦智恵子誕生(父:久我山尚大 母:三浦英子)




    1973 扉子4 智恵子(17歳)篠川登(20歳)と出会う。
       栞子7 直後に実父 久我山尚大からの試験を拒  
       絶 以降絶縁






    1985 栞子誕生




    1993 篠原文香誕生


    2000 智恵子突然の出奔



    2002 扉子4 栞子(17才) 父登とともに「吾輩ハ猫    
           デアル」解決




    2010 7 栞子ケガを負う


    2010 8 栞子1 栞子(25才)大輔(23才)と出会う

        栞子1~7栞子と大輔様々な事件を解決





    2011 10 栞子 大輔 入籍


    2012 4 扉子2 栞子妊娠発覚
    2012 10?扉子誕生



    2018 秋 扉子1 扉子6才


    2021 扉子3 扉子9才(小3)戸山圭と出会う



    2028 扉子3 扉子(16才)樋口恭一郎(15才)と出会
           う

    2029 扉子4 扉子(17才)

  • 今回は前作のようなダーク感は少なく、後味もスッキリしてて良かったな。
    今回の依頼は、戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」の謎解きを篠川家の「本の虫」3世代(智恵子、栞子、扉子)が三者三様で紐解いていく。各々の十代を比べながら読めるのも面白い。
    令和編では扉子、昭和編は智恵子、平成は栞子の順で話が進でいくのだけど、時代ごとに夏目漱石の別々の古書が絡んでいるのも巧妙である。
    特に昭和編の17才の智恵子、今とはちょっぴり違う一面が見れて面白い。夫の登との遣り取りは、栞子と五浦くんを見ているようで微笑ましい。また、登も五浦くんと同じように事件手帖を書いているというから驚きである。事件手帖は全部で4冊?あと、本の買い手を探す場面で登が発した言葉にあの智恵子が目も口も開けたまま言葉を失って驚く姿は今の智恵子からは想像出来ないし可愛らしさすら感じる。
    平成編では、栞子の妹の文香も出てくる。小学生の文香が雨のなか、踏み切りの前で失踪した母の智恵子の帰りを待っている。そんな姿を思い浮かべると、いじらしく胸が締め付けられる。扉子編になってから文香の出番が減ってしまったので、事件手帖3のときのプロローグやエピローグのような、元気で明るい文香ちゃんの出番を増やしてほしいな。
    あと、太宰治と檀一雄や夏目漱石、芥川龍之介など文豪や作家さんなどの面白いエピソードなども知りたい。
    うーん、次作も待つ身がつらい。
    余談ですが、鎌倉文庫は戦争で荒廃した人心を明るくする目的で川端康成らで作られた様です。川端康成は後に、「鎌倉文庫は悲惨な敗戦時に唯一開かれていた美しい窓であったかと思ふ」と綴っている。

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著者プロフィール

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズが累計700万部を超えるベストセラーとなる。同シリーズで、文庫作品初の『本屋大賞』候補、『本の雑誌』が選ぶ「この40年の書籍 第1位」に選ばれるなど、幅広い層からの支持を集める。

「2022年 『ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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