竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る (メディアワークス文庫)
- KADOKAWA (2024年2月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049155228
感想・レビュー・書評
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何コレ…世界観とイミフさが強烈!人を残虐に傷つけて異形を接待…怪奇な家業を継いた少女 #竜胆の乙女
■物語のはじまり
時代は明治の終わりころ、亡くなった父の家業を継ぐため17歳の少女が実家に戻ってきた。父から譲り受けた家業とは、夜おとずれる「おかととき」という異形をもてなすという不可思議なものであった。しかもそのおもてなしの内容は、人を残虐に傷つけるというな遊びで…
■きっと読みたくなるレビュー
独特の世界観と訳の分からなさが強烈な本作、これは確かに話題になりそうな作品ですね。全体的に若干の青臭さがありつつも、それがまた魅力。その反面パワーと勢いがありありと感じ取れました。
本作とても幻想的な強みに溢れているんですが、物語が混沌としていて、残酷で耽美な描写に優れているからだと思いました。
〇混沌
兎にも角にも、さっぱりワカンナイ。ずっーーーーーと、はてなマークが頭の上についたまま読み進めることになる。何故そんなことするの? この家業は何なの? 彼らは誰なの? おかとときって何モノなの? 【五五分十二秒】って何?
単に謎をいれてるだけでなく、不思議な世界にしっかりと誘ってくれる書きぶりが見事なんですよね。すっかりとストーリーに夢中になってしまいました。
〇残酷で耽美な描写
残忍な描写の数々、強い者から弱い者への厳しい台詞など、不愉快な気分になりまくりですね。ただこの汚らわしさの引力があるおかげで、花や色など細部にこだわった美しさが引き立たされているんです。そして死の世界、永遠の闇に踏み込んでしまったような恐ろしさもゾワゾワと伝わってきました。
そして登場人物では、なにより主人公がいい!圧倒的に推せる。辛い境遇に置かれた主人公なんですが、それでも歩んでいる姿が目に浮かんでくるんです。ラストは主人公を抱きしめたくなってしまいました。
どこにいるのか分からなくなる不思議な物語、先生の今後の作品に期待しちゃいます。
■ぜっさん推しポイント
さて、最大の問題作と名高いこの小説。ここまで何も語ってきませんでしたが少しだけ。
いつも面白い物語を紡いでくれる作家先生の皆さんには、感謝でいっぱいです。ただその物語も、作家先生のアウトプットだけで完成するものではなく、読者も一緒に完成させるものだと思っています。
単に楽しい読書の時間を提供してくれるだけでなく、知らなかったことの学び、新しい価値観の吸収、経験のないことへの挑戦、苦しみや悲しみからの救いなど、様々なことを読者が感じ取って完成となるのです。そして今まで読んできた本、すべてについて何も感じ取れない本などありませんでした。読書って、なんて素晴らしいんだろう…
物語が終盤に入った頃、ずっとこんなことを思いながら読み進めていました。最後の最後まで読んで、あらためて世の中のすべての作家先生に感謝したいと思ったのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本屋で目についた帯。
世界を一変させる、「ある一行」
ネタバレ厳禁の緘口令が敷かれた最大の問題作
帯の魔力に魅せられ、購入。
舞台は明治時代。父の死去に伴い、家業を継ぐために東京から金沢にやってきた17歳の菖子が主人公。父の仕事は異形の者を凄惨な遊戯でもてなすものであった。父はなぜこの仕事を始めたのか・・・
といったあらすじ。
物語の合間合間に違和感をもたらす一行が登場。その一行は触れられることなく、物語は進んでいきます。そして、終盤の一行で物語は爆ぜます。
世界をひっくり返されたような気持ちになりましたが、その後の展開は、個人的には気持ちが乗りませんでした。
物語の終盤では読解力に乏しい自分は置いていかれてしまいました。
序盤の世界観は好きでした。 -
物語の力を強く感じることができた作品だった。
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後半。
物語の力を信じている人が書いたのだなぁ。
と、思いながら読んだ。
そして、あとがきを読んで、なるほど、と思った。
こちらにあるネタバレ感想を読んで「賛否両論」の「否」と思った人たちの意見を知りました。なるほど、そういうことか、と。確かに。
でも私は、帯のコピーや散りばめられていた違和感についての納得感の方が上回り、気持ちの良い読後感を得られたので、賛否両論、とはこのことかーと理解しました。