竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049155228

感想・レビュー・書評

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  • 何コレ…世界観とイミフさが強烈!人を残虐に傷つけて異形を接待…怪奇な家業を継いた少女 #竜胆の乙女

    ■物語のはじまり
    時代は明治の終わりころ、亡くなった父の家業を継ぐため17歳の少女が実家に戻ってきた。父から譲り受けた家業とは、夜おとずれる「おかととき」という異形をもてなすという不可思議なものであった。しかもそのおもてなしの内容は、人を残虐に傷つけるというな遊びで…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    独特の世界観と訳の分からなさが強烈な本作、これは確かに話題になりそうな作品ですね。全体的に若干の青臭さがありつつも、それがまた魅力。その反面パワーと勢いがありありと感じ取れました。

    本作とても幻想的な強みに溢れているんですが、物語が混沌としていて、残酷で耽美な描写に優れているからだと思いました。

    〇混沌
    兎にも角にも、さっぱりワカンナイ。ずっーーーーーと、はてなマークが頭の上についたまま読み進めることになる。何故そんなことするの? この家業は何なの? 彼らは誰なの? おかとときって何モノなの? 【五五分十二秒】って何?

    単に謎をいれてるだけでなく、不思議な世界にしっかりと誘ってくれる書きぶりが見事なんですよね。すっかりとストーリーに夢中になってしまいました。

    〇残酷で耽美な描写
    残忍な描写の数々、強い者から弱い者への厳しい台詞など、不愉快な気分になりまくりですね。ただこの汚らわしさの引力があるおかげで、花や色など細部にこだわった美しさが引き立たされているんです。そして死の世界、永遠の闇に踏み込んでしまったような恐ろしさもゾワゾワと伝わってきました。

    そして登場人物では、なにより主人公がいい!圧倒的に推せる。辛い境遇に置かれた主人公なんですが、それでも歩んでいる姿が目に浮かんでくるんです。ラストは主人公を抱きしめたくなってしまいました。

    どこにいるのか分からなくなる不思議な物語、先生の今後の作品に期待しちゃいます。

    ■ぜっさん推しポイント
    さて、最大の問題作と名高いこの小説。ここまで何も語ってきませんでしたが少しだけ。

    いつも面白い物語を紡いでくれる作家先生の皆さんには、感謝でいっぱいです。ただその物語も、作家先生のアウトプットだけで完成するものではなく、読者も一緒に完成させるものだと思っています。

    単に楽しい読書の時間を提供してくれるだけでなく、知らなかったことの学び、新しい価値観の吸収、経験のないことへの挑戦、苦しみや悲しみからの救いなど、様々なことを読者が感じ取って完成となるのです。そして今まで読んできた本、すべてについて何も感じ取れない本などありませんでした。読書って、なんて素晴らしいんだろう…

    物語が終盤に入った頃、ずっとこんなことを思いながら読み進めていました。最後の最後まで読んで、あらためて世の中のすべての作家先生に感謝したいと思ったのです。

  • 本屋で目についた帯。

    世界を一変させる、「ある一行」
    ネタバレ厳禁の緘口令が敷かれた最大の問題作

    帯の魔力に魅せられ、購入。


    舞台は明治時代。父の死去に伴い、家業を継ぐために東京から金沢にやってきた17歳の菖子が主人公。父の仕事は異形の者を凄惨な遊戯でもてなすものであった。父はなぜこの仕事を始めたのか・・・
    といったあらすじ。

    物語の合間合間に違和感をもたらす一行が登場。その一行は触れられることなく、物語は進んでいきます。そして、終盤の一行で物語は爆ぜます。

    世界をひっくり返されたような気持ちになりましたが、その後の展開は、個人的には気持ちが乗りませんでした。
    物語の終盤では読解力に乏しい自分は置いていかれてしまいました。

    序盤の世界観は好きでした。

  • FUDARAKUのデビュー作。大賞作品。
    少し甘めの星5。

    非常にしっかりとした明治浪漫溢れる世界観で、引き込まれた。
    これは下調べせず読んでほしい。

    惜しむらくは、似たような形で有名な先行作品があること。その点と、後半の展開が少し駆け足気味で残念。

  • ネタバレしないと感想が書けない…

    斜線堂有紀さんの「本の背骨が最後に残る」みたいな、儚くて、美しくて、けれども残忍な世界観を期待して読んだんですけれど(実際前半はそうなんだけれど)、後半突然「これは現代の高校生が書いた小説の世界でした」のオチが、本当に残念だった。

    この部分をどう評価するかでこの小説の評価は大きく分かれるかと思い、選考委員会では高く評価されたようだけれど、自分はとても残念な展開だった。

    ・父の謎の家業を継ぐ2台目竜胆
    ・風流なものと残忍なものをこよなく愛する「おかととき」のために、商物の美しい男性たちに「出し物」をさせる(花を食べさせるとか、人を剣山に見立てて生け花をするとか…)
    ・下男の「檜葉」とか、商物の「惜菫(せきすみれ)」とか出てくる人物の名前もとてもきれいだし、「おかととき」を前に一生懸命女将として振る舞う竜胆も健気…なんだけれど!!!

    もう本当に後半が残念。
    家庭環境が悪く不登校の少女、唯一心をひらいていた従兄弟が彼女を励ますために書いていた小説。本当の小説はハッピーエンドらしく、竜胆は機転をきかせて窮地を乗り切る話らしいのですが、後半の現代パートで「機転を利かせて乗り切った」とだけ言われても…そこの具体的なエピソードを読む側としては期待しているのに。

    世界観は思いついたけれど広げた風呂敷を畳みきれないパターン。伏線はばらまかれて、世界観も不思議なことだらけなのに「小説の世界なので」のオチは…。

    結局最後は、心理カウンセラーが、彼女がバッドエンドに改変していく小説を聞き取って、なんとか軌道修正を試みるというなんとも興ざめな展開でした。

    本当に惜しい小説。現代への場面展開などせずに、明治の時代の怪奇なお話のままきれいにまとめられていたものを読んでみたい…。

  • 驚愕の一行は、確かに効果的だったと思う。あの有名な綾辻行人さんの『十角館の殺人』を彷彿させるもので、ガラリと変わる展開は魅了させられる。
    表紙が鮮やかで艶やかなので、文中の風景や情景描写はもっと艷やかであると良かったなと思いつつ、作者のあとがきとは裏腹に物語の仕掛けをメインで打ち出しているので、表現はあまり重視する必要はないか。

    テイストも物語も違うのになぜな乾緑郎さんの『完全なる首長竜の日』を思い出した。
    ファンタジーと現実が入り交じる小説だった。

  • タイトルの竜胆は、花の「りんどう」。設定も展開も違和感だらけのストーリーが進んだが、後半は頭がよく回ってなかったこともあり、ついて行けず。

    主人公の菖子は、病死した父の商いを継いだ。「竜胆」の名で、夜にやってくる怪異「おかととき」を饗すという。そのもてなし方は、不思議を超えて、奇妙。商物(あきもの)の身体を使うのだが、生花を刺したり、爪を剥いだりすることも。夜が明けて宴が終われば、身体の傷は癒えるが、おかとときの機嫌を損ねると、身体の一部や、その機能を奪われてしまうことも。菖子は、初めて務めた宴席で、興を削いでしまい、商物の一人は片腕が傷んでしまう。

  • 物語の力を強く感じることができた作品だった。

  • とりあえず父と兄はクズすぎん?
    前半、なかなか救われない展開に気持ちがやるせなくなったけど、後半嶺くんが込めた切実な思いに涙が出た。ほんとは嶺くん自身が、隣にいてあげたかっただろうにね。

  • 後半。
    物語の力を信じている人が書いたのだなぁ。
    と、思いながら読んだ。

    そして、あとがきを読んで、なるほど、と思った。


    こちらにあるネタバレ感想を読んで「賛否両論」の「否」と思った人たちの意見を知りました。なるほど、そういうことか、と。確かに。
    でも私は、帯のコピーや散りばめられていた違和感についての納得感の方が上回り、気持ちの良い読後感を得られたので、賛否両論、とはこのことかーと理解しました。

  • うーん、この物語をなんと評していいのか悩む。

    十七歳の少女が亡くなった父の代わりに"おかととき"と言う妖を持て成す役割を継ぐのだけど、そのもてなしは残虐かつ危険に満ちていた、という始まりはまさに和風ダークファンタジー。
    作中、姿を現さない語り手の私は何者なのか?
    竜胆の乙女は窮地をどうやって切り抜けるのか?
    様々な想いに満たされ読み進めるのだが、物語半ばで明かされる真相に唖然となった。
    まさに世界が逆転する感覚。
    これは好きな人は好きそうだけどちょっと人を選びそう。

    つまりこの物語は一人の少女の救いの物語であり、物語の力を信じる作者自身の物語でもあるのだ。

    電撃小説《大賞》受賞作にして確かにこれは問題作と言えるだろう。

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