よって、初恋は証明された。 -デルタとガンマの理学部ノート1- (1) (電撃文庫)
- KADOKAWA (2024年11月8日発売)


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本 ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784049156461
作品紹介・あらすじ
思うに〈青春〉というのは、よくできた推理小説のようなものだ。
失われてしまった恋愛成就の桜の謎。部活勧誘の小さな違和感。巨木の樹齢に秘められた物語。密室で消えたハムスター。壊れかけの生物部に捧げられた、高校生たちの切実な決断。
無関係だと思われたひとつひとつの因果はどこかでつながっていて、あとから振り返って初めて俺たちはそれを〈青春〉と認識する。そこでようやく気付くのだ。見落としていた大切なことに。
「検証してみようよ……科学的に!」
これは、科学をこよなく愛する高校生たちが日常で直面する数々の謎に挑む、綱長井高校「理学部」のささやかな活動記録。
――そして、一つの初恋が解き明かされるまでの物語である。
感想・レビュー・書評
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【Bookwalker】傑作『豚レバ』の作者・逆井氏だから間違いないという期待に加え、シンプルながら惹きつけられる標題と、『豚レバ』の絵師・遠坂氏による美麗な表紙に魅了され手に取り大正解。高校の理系の部活である『理学部』を舞台に、主人公・出田とヒロイン・岩間たちが、『科学的』な視点で日常のふとした謎に挑むことになる学園青春ミステリでした。シリーズ全体の導入部といった今回で、標題にある『初恋』に至る物語が、これからどのように描かれていくのか大いに気になる期待の新シリーズです。
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てっきりよくあるラブコメ系のラノベだと思っていたのでやりとりがガチガチの理学部のそれでびっくりした。面白いのだ。
学園もののラノベらしいいかにもな展開もありつつ、科学的な視点から根拠をもって日常の謎を推理していく様はまさにミステリ。振り返ってみて腑に落ちるところがいくつもある。衒学趣味に走らず、読者がついて来られるようになっているのも嬉しい。良い買い物をした。 -
ミステリにおいて犯人がトリックを用いるのはそりゃ自分の犯行を隠す為なのだけど、日常風景の中で探偵役に見破られないようトリックを弄する者が居たとしたら、何故トリックを使うのか?トリックを用いて何を為そうというのか?と理解できないだろうね
本作はそういった魔物のような恐ろしい存在が潜んでいた作品でしたよ……
ただ、作品そのものが恐ろしいかと言えばそうではなく
作品傾向としては青春風景に科学的推理要素が組み合わされた物語と成っているね
この科学的に推理するという要素は本書の青春っぽさをより増している印象を受けたよ
入学したばかりの高校一年生といえば新しい景色ばかりが目に飛び込んでくる時期でもある
だからめちゃめちゃ可愛い同級生やら裏山に咲く桜などが気になってしまう。そこで腑に落ちない要素が見つかればつい気になって考えてしまう
そうした瞬間に理系の樟が行う科学に基づいた推理は青春に潜む謎を解き明かすもの
また、本作の多くのシーンで扱われる謎がまさしく日常で見掛けても可怪しくないタイプであるのは良いね
桜から消えたハートマークの謎やらちょっと変な新歓の謎、消された大銀杏の樹齢の謎やら…
それらは悲劇的な殺人事件などでは決して無いから、樟や理桜が居る青春を崩さない
だからか、青春的なミステリを過ごす中で青春的な悩みも見えてくる
樟にも父との軋轢が有るようだけど、それ以上に目立つのは理桜の閉塞感だね
科学が好きなのに中学時代の経験から、科学が好きとひけらかす事に負い目を感じている。科学が好きと言うよりも他人が自身に求める偶像に従順になってしまっている
その悩みは青春模様として有りがちかもしれないけれど、だからこそ青春の中で解決してやりたくなるもの
そう思えば、水崎や甘南備のサポートが有ったとはいえ、入学してすぐの段階で科学の楽しさを共有した樟が彼女を生物部に誘って、それに理桜が応えられたのはとても良い流れだったように思える
だからこそ、そうした段階を踏んで前に進んでいく工程や謎解きを影から操る者が居るなんて微塵も想像していなかったけど
本作で度々示唆されつつも正体は見えなかった魔物。それが登場し、少しずつその恐ろしさが描写されるに従い、本感想文の序盤で記したような疑問が湧き、そして恐怖を覚える心地と成ってしまったよ……
いや、だって普通の学校生活の中に居ながら、あのレベルで全てを操る存在が登場するなんて理解を超えている。そんな存在を前にすれば自身の非力を自覚し、頭を垂れてしまうというもの
そう思えただけに仮説も検証も無く科学的ですら無い論拠を樟が持ち出して魔物の企みを乗り越えてみせたシーンには感銘を受けてしまったな
誰かが作り上げた秩序と必然ではなく、己の心から導かれる幸福を願った。そこには樟がつい口にしてしまったような感情が無ければ成し遂げられなかった暴挙
魔物の論理を崩したのは人の心だったわけだ
樟がそのような本気の心で向かい合ってくれたから、きっと理桜は魔物が用意した道であっても異なる心地でその道へと進めたのだろうし、樟も自身の選択が間違いでなかったと思えたのだろうね
2人がラストシーンで見遣る透き通っているだろう海面や青空のような気持ちよさを感じられる内容と感じられたな
物語としてはまだ高校生活が始まったばかり。けれど、プロローグとエピローグでは未来の姿が描かれているわけで
樟がカタクリの花言葉に気付くまでの青春物語をじっくり楽しみたいと思えるとても良い第1巻でしたよ -
最初が卒業式の話、そこで成立した初恋で、その直後に入学の話だったので3年圧縮したか、と思っていたら2カ月しか経過しなかった。
続くそうだけど、なんとなくもどかしい話が続きそうだけど、どうなるかな。 -
序章にすぎないんだね!
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登場人物みんな頭良いし、この本読んでるだけで登場人物につられて自分も IQ 高くなったような気がする。普通の日常会話に始まり疑問の見つけ方、 問題の解決の仕方、全てに渡ってどのキャラにも知性が感じ取れる。これが受験を潜り抜け進学校への切符を手にした人間の実力か……みたいなことをヒシヒシと浴びていた。
その名の通り多岐に渡る理系の分野の話が出てきて切り口は変わりながらも一貫した雰囲気が楽しめた。でも知識だけじゃなくて事件のロジックもきめ細やか。全てが明かされた時の衝撃と爽快感は必見。
著者プロフィール
逆井卓馬の作品





