少女星間漂流記2 (2) (電撃文庫)

  • KADOKAWA (2024年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (310ページ) / ISBN・EAN: 9784049156980

作品紹介・あらすじ

 馬車が銀河を駆けている。馬車を模した宇宙船に乗っているのは、科学者のリドリーと、相棒の内気な用心棒、ワタリ。
 環境汚染で住めなくなった地球に代わる安住の星を目指して馬車を走らせるも、二人が訪れるのはいつも風変わりな星ばかり。可愛いうさぎや、ねこや、あざらしのあかちゃんと戯れられる星、自分の望む見た目になれる星に、ほっかほかの温泉が湧く星……あれ、なんだか快適そう? でもそう上手くはいかないのが銀河の厳しいところ。
 「次こそ住める星だといいな」二人は今日も、広い宇宙を旅している。

感想・レビュー・書評

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  • 〔内容〕二人の背景が少しわかる/今回も神っぽい最強キャラが出てきたり、生命の危険があったり、ワタリの強さが活かせない相手が多くなかなか大変な旅です。
    〔感想〕読み始めてすぐオチのわかる話が多かった/SFではなくファンタジーですね。完全にSFにしてある程度リアルな理由が断念につながらないと面白くなりにくいのかもしれない/あるいは二人の能力をもっと活かしてほしいかも/あるいはもう少し奇をてらって中高生のとき初めて星新一を読んだときのようなニヤリ感とか驚きを/あるいはこの二人自身が常にトラブルメーカーとなって「あ、やっちゃった」とテヘペロで逃げ出すとかでもいいかも。

    【行程】明の星:石になりかけた人がいた→星の星:星を信仰する人たちがいた→子の星:芋虫型の子を愛する母たちがいた→獣の星:かわいらしい動物たちばかりいた→脂の星:美しい人ばかりいた→誘の星:まん丸に太った人ばかりいた→罪の星:黒い汚れを剥がすと美青年がいた→奴の星:優しいアレがいた→誤の星:移住できるはずだったのに→湯の星:また頑張れる→待の星:メイドが一人待っていた→白の星:百合→勲の星:いい人しかいない理由→無の星:神がいた→懐の星:アリスがいた→書の星:本の精霊がまたいた。内容から最終回かと思ったらそうではなかった。

  • 読了

  • 2巻目、このテイストでどこまでも読み続けたいですね。ラスト「書の星」はだいぶメタかったですが。

  • 宇宙版キノの旅。前巻より黒い。そしてきしょい。
    ヒトコマユバチはたがみよしひさのSFホラー漫画が記憶に
    あるけど、こっちはホラーとは違うと思った。
    さすがに育てるのはなぁ・・・
    チャイルドプレイみたいなのもあったし、わりとバリエーションはいろいろ。
    宙旅ならではのギミックもあってよいけど。けど。

  • 少女たちは星座を描く、旅の軌跡に物語が宿る。

    「コミックフラッパー」上でコミカライズ連載も開始されたことですし、ここはひとつ『少女星間漂流記』のレビューを書かなければ! という何かしらの潮流に押し流されて文を書いているのが私です。
    作品の性質などは一巻で紹介したので今回は割愛しますが、二巻もそれらに則り進行している印象でした。

    それでも作品について思ったことを軽く補記しますと。
    少女ふたり旅ということもあって、似通った先行作品と比較すればおとぎ話としての色合いが強く出ている作品だと存じます。加えてユーモラスだったりシュールだったりする味付けが強いのも特徴でしょうか。

    ここ二巻では「星新一」先生よろしくなショートショートも多い一方で、「ワタリ」と「リドリー」、このふたりだから描けるエピソードが揃い踏みです。
    ところで裏表紙のあらすじ紹介、主人公ふたりの名前の並びが一巻とは違うことにお気づきでしょうか?
    まぁそれはそれ。旅の終わりを示唆する包括的エピソードも、後半では大いに目立つことになりました。

    とびっきり苦い結末だったり、異星人の生態と思いきやな話だったり、認識を逆手に取ったり、とうとうリドリーの観察眼にツッコミが入ったりで、一巻から形成されたお約束をあえて裏切る展開も数知れず。
    この時点にしてここまで踏み込むか!? ってチャレンジャーな巻だったなあ……とも感じました。

    そんなわけでネタバレは避けたいのですが、ところどころ話の内容を示唆する形でレビューを書いていこうと思います。初見で驚きたいのは私も同じなので極力明言は避けますが、ある程度は話の核心に触れます。
    よって未読の方は覚悟の上、以下のレビューを読み進めていただけましたら幸いです。それでは!





    個々の話で言うと前半の「獣の星」、「脂の星」、「奴の星」、「湯の星」などはふわりと緊張感の抜け落ちた文体を活かしたうえで、小説媒体だからこその演出が光る話だったと思います。
    冒頭の言及を引くと、コミカライズは不可能とは言いませんがちょっと工夫がいるんじゃないかと頭を悩ませますね。いざ漫画化された際、どう話を組んでくるか大変気になってしまうところです。

    あと、これらのエピソードは「ソノフワン」先生のイラストがもたらす作品全体の雰囲気にも助けられた向きもあります。メルヘンなんだけど、等身高めで絵柄を比較的リアルに寄せたからこそって感じで。

    あと、巻の構成を追う分に、口絵イラストにも採用された「湯の星」はかなり重要とお見受けします。
    まず前半はショートショート重視ですが、作中でふたりが言及しているように(一巻の内容も含めると)ここまで数多くのシビアな結末を見届けてきたわけです。
    そして、この先にも輪にかけて強い話が待ち受けている。なのでちょうど中間地点の温泉でリフレッシュタイムを読者共々楽しみ、残る猛者(短編)たちを迎え撃つという運びです。まさにサービスシーン(?)。

    そういったわけで二巻の後半は比較的長めの短編が配置されました。「死」や「終焉」、「物語」といったシリーズの大まとめさえ意識させられるようなテーマを据える、大物エピソードが揃い踏みです。
    とは言え、ふんわりぼんよりとしたノリは忘れず、この中でも緩急はつけました。実にテクニカルです。

    イラストを含め、(最有力は私の中で決定ですが)さまざまな解釈を読者の中で渦巻かせる「無の星」。
    一巻ラストの「夏の星」と対になるのか、今度はリドリーの原点を教えてくれる「懐の星」。
    そして、それを上回るかのように二巻のラストエピソードとしてまさかのゲストも迎えた「書の星」。
    これら三連コンボが最高でした。星にちなめば「三連星」。布石を打つには十全か?

    以上。
    どちらかと言えば今回は星の特性にまつわる理不尽より、それを上回る宇宙的理不尽に振り回されるふたりに注目していた感はあります。
    一巻では訪れる星々(住民も込みで)の個性こそが第三の主役という感じでしたからね。

    よって、今回は星巡りを介して主人公ふたりの内面を深掘りする話も多かった風です。
    ここでひとつ。ひとりとひとり、ふたりの関係性の中に物語という名の、最小の宇宙が生まれると仏教的に考えてみましょう。
    さすれば星に降り立たず、ほぼふたりだけのやり取りで完成するエピソードが目立つのも納得かと。

    ふたり揃えば、どんな理不尽も怖くないと思えた。――そう、思えたのです。
    時に、二巻も一巻同様にシビアな結末も多いのですが、きちんと心地よくウィットを効かせた裏切り方をしてくれたり、きちんとリドリーがフォローを入れてくれたりしてくれたので小気味よさすら覚えました。
    機知を働かせるリドリーが等身大の少女であり、けして超越者ではないと再確認できたことも良かった。

    あと、今回はあとがきから圧倒的脱力感を受信できます。
    いまさら書くのも手遅れかもしれませんが、あとがきから先に読むことも推奨はしないまでも大ありだと存じます。本書を読む時でなくとも困った方は作者あとがきを読んで後押しするなにかをもらってください。

    それからこれは独り言なのですが、地球人の少女の評価が、良い意味はもちろん、闇社会的に考えてなんか嫌な意味でも高いのが地味に好きだったりします。
    ワタリとリドリーは、方向性こそ違えどきちんと美少女なんだと確認できてなんだか嬉しくなれますから。
    これは未来世界の話なのですが、ワタリが日系人じゃなく日本人だと語られてるのもいいですね。親近感。

    細かい理屈は置いといて、リドリーの懐中から振り出されるおもしろガジェットもSF的に楽しかったりもします。こういうのは原理の解説とかじゃなくて、読者をワクワクさせてくれればそれでいいので。
    地球が住めなくなってしまったのは個人的にはとてもとても残念で話の中でも寂しがられることもしばしばですが、こうして少女ふたりが様々な地物や風物を捜しに赴く冒険小説は望むところです。

    いい意味で細かいところは気にしなくて済む作風が固まった。
    それに、ふたりの過去の振り返りが済んで、改めて再出発という運びになった。
    これで、満を持して三巻を迎えられるというものです。

    と。そんなこんなで今後の話。要所要所でエゴを示していくあり方が眩しいリドリーと、確かに彼女を支えつつ我を示すワタリ、少女ふたりのゆるくとも力強いエゴイズムを目撃していきたいのが私です。
    今回は作品そのものを包み込むような、終わりと始まりが結びつくエピソードが目を惹きましたからね。
    果たしてふたりは旅の終わりに、どのような星座を作るのでしょう?

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著者プロフィール

第28回電撃小説大賞《銀賞》を受賞し、『竜殺しのブリュンヒルド』で電撃文庫よりデビュー。

「2023年 『クリムヒルトとブリュンヒルド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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