人はなぜ立ったのか?: アイアイが教えてくれた人類の謎 (科学ノンフィクション)
- 学研プラス (2007年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
- / ISBN・EAN: 9784052025624
感想・レビュー・書評
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島泰三『人はなぜ立ったのか』(学研,2007)は,子供向け「科学ノンフィクション」シリーズの一冊で,本文の漢字にふりがながついています。その内容は,同じ著者による大人向けの名著『親指はなぜ太いのか』(中公新書,2003)とほぼ重なっていますが,部分的にそれを上回っている箇所もあります。よく子供向けにこんな本を出したものだと,編集者の英断に感心しました。
著者はサルの研究者で,「口と手連合仮説」を提唱しています。サル各種の口(歯)と手(手のひらと指)の形態は,その種にとっての主食を捕食するのに適している,というのが「口と手連合仮説」です。それだけなら,それはなんてことない仮説かもしれません。しかし,著者はその仮説をヒトに応用します。600万年-400万年ほど前にチンパンジーと分かれたヒト属が,文明を持たない野生動物としてアフリカのサヴァンナに住んでいたあいだ(ということは数百万年間),なにを主食としてきたのか。さまざまな先行学説のうち,「口と手連合仮説」から支持できるのは,ソ連の人類学者ボリス・ポルシュネフが 1974年に示唆した「骨」説であると著者は言います。
http://home.clara.net/rfthomas/papers/porshnev.html
植物の「実」や「根」でなく,「肉」でもなく,ヒトが動物の「骨」を食ってたとはどういうことか。まずライオンなどの肉食獣が草食動物の肉を食べ,次にハイエナなどのスカヴェンジャーが残り肉を食べ,最後に残った骨をヒトが石で割って食べていた,というのが著者が示している図式です。一見非常識な説ですが,本書や,その大人向きヴァージョンである『親指はなぜ太いのか』を読むと,説得力があります。子供向きの本書は,挿絵が豊富で,著者の考えを追いやすくできています。
ぼくは,著者の「口と手連合仮説」および骨主食説の正否を判断する立場にありません。分かるのは,島氏が,孤独の思索の末に美しい結論にたどりついたということです。島氏は,全共闘の活動家を経てフリーランスの研究者を貫いています。そのことをもとにして,ヒトが骨を主食としていたといういささか陰鬱な人間観が,彼の世界観を反映しているという見方があるかもしれません。ぼくは,それほど単純な話でない思いますが,それでもなお,よほどの絶望を呑みこんだ強い知性でないと,こういった結論を論証しようとしなかったことだろうと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヒトが骨を食べていたとは驚きの説ですが、ヒトは雑食ですものね。
「口と手連合仮説」から二足歩行へ至るまでの科学的な検証も、危険なジャングルでの様子も興味深く読みました。
マダガスカルのサルの種類にも驚きました。
そして、ヒトがそのサルたちを脅かしている事実も忘れてはいけない。 -
https://www.youtube.com/watch?v=eJ4MkdVvZi4
口と手連合仮説
サルたちは食べ物によって口や手の形が決まる。
私たちの祖先の主食は骨髄だったんだって。彼らはスカヴェンジャーだったの?お腹を壊さなかったのかしら。
骨を砕くために、石の上手な握り方を覚えて、二本足で立つようになった。そしてその中から、段々と石器を作る人類が現れた。
日本アイアイ・ファンド
http://www.ayeaye-fund.jp/