「なぜ?」がわかる世界史 近現代 オスマン帝国‐現代

  • 学研教育出版 (2012年5月22日発売)
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本 ・本 (440ページ) / ISBN・EAN: 9784053033796

作品紹介・あらすじ

「なぜ」がわかれば、「世界史」は、苦痛な「暗記科目」から、楽しみながら読める「物語」に。この一冊で、私大受験も、センター受験もOK。「わかりやすくて、面白くて、点につながる」、世界史参考書の最高傑作!やり直し学習にも最適な「近現代編」。

感想・レビュー・書評

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  • 前々回に書いた『「なぜ」がわかる世界史』(前近代)の続編です。上巻と同じく400頁以上の大部となっており、世界史の流れを詳しく知ることができます。ただ、第2次世界大戦以降の現代の分量が他の時代に比べて少なく、物足りなさを感じます。「歴史とは現在と過去との対話(E・H・カー)」であるならば、こういった通史は現代史こそ詳しく書いてほしいと思うのは私だけでしょうか? ちなみに手元にある山川出版社の教科書『詳説世界史』では、第2次世界大戦後の分量は40/376で1割以上、東京書籍の『世界史B』でも45/411で1割を超えています。本書では上下巻で約900頁あるにもかかわらず38頁にすぎません。
    ですので、個人的な感想ですが評価を低くしてしまいました。

    では、気になったところや参考になったところを抜き出します。
    ・「ウズベク人が西トルキスタンに南下したあとのカザフ草原では、さまざまなトルコ系遊牧集団が集まり、ウズベクから離れた者も取り込んでカザーフ人と呼ばれるようになり、16世紀頃には中央アジアで大勢力となりましたが、19世紀にはロシアの支配下に入りました。」(14頁)
    →カザーフ族って山川出版社の『詳説世界史』では登場しないけど、東京書籍『世界史B』ではしっかり太字ゴシックで取り上げられています。ただし、『世界史B』ではロシアの保護下に入ったのは18世紀としています(19世紀前半に直接管轄下においたみたいです)。
    ・(フランス革命開始後)「パリでの蜂起が地方に伝えられると、全国各地で農民が貴族・領主の館を襲い、借金の証文を焼き捨てはじめました。実力行使で封建的支配体制を壊そうとしはじめたのです。地方の領主層はこれを「大恐怖」と呼び、恐慌状態に陥りました。」(78頁)
    →非常に細かいのですが、この「大恐怖」という用語について山川出版社の世界各国史シリーズ『フランス史』では「のちの歴史家が呼んだ」と書いています。当時からの言葉なのか、歴史用語なのか私にはこれ以上確認できませんが・・・

    ・(空想的社会主義者ロバート=オーウェンによるニューラナーク運動で)「また特に(オーウェンは)次世代を担う子供たちの教育に力を入れ、親が工場で働いているあいだ、幼い子供たちの面倒を見るために幼稚園まで作ります。世界最初の幼稚園です。」(142頁)
    →私たち教員は教育史で「世界最初の幼稚園はフレーベルのキンダーガルテン」だと勉強します。ウィキペディアの記事で恐縮ですが、今につながる幼稚園の創始者はフレーベル、幼児教育のための学校を最初に作ったのがオーウェンらしいです。

    ・(第7代アメリカ大統領で初めて西部出身で大統領となったジャクソンについて)「大統領になってから書類を決裁するときに、「All Correct(承認)」の略でACと書くべき所を、つづりを知らないジャクソンはOKと書いていました。しかし、大統領の無学を指摘することもはばかられるので、皆もOKを使い続け、いつの間にか一般用語になってしまったという逸話があります。」
    →逸話は逸話ですので史実はどうか知りませんが、非常に面白い話で授業にも使えそうです。

    ・「1838年、イギリスはオスマン帝国とトルコ=イギリス通商条約を結びました。この条約は、オスマン帝国に関税自主権のない不平等条約であり、形式的にはオスマン帝国の一部であるエジプトにもこの条約が適用されるため、エジプトの貿易は大打撃を受けることになりました。この条約の適用から逃れるためには、オスマン帝国からの完全独立が必要でした。ムハンマド=アリーは独立を求め、1839年、第2次エジプト=トルコ戦争がはじまりました。
    →エジプト総督の世襲とシリアの領有以外にこういう理由があったことは私の不勉強で初めて知りました。

    ・「ヒトラーが率いるナチスは、正式名称を国民社会主義ドイツ労働者党といいます。ナチスという呼称は反対派による別称が通称化したものです。」(367頁)
    →山川出版社『詳説世界史』の欄外には「ナチ党が「政敵がつけた呼称」であり、「ナチ党員やナチ関連組織メンバーをナチスという」と解説されています。

    ・「ナチス(原文ママ。以下同)は政権を握ると、・・・失業者を減らし、国民の支持を集めました。これには世界恐慌が最悪期を脱し、景気上昇期と重なったという幸運もありました。具体的には1933年1月に600万を超えていた失業者数が、35年1月には300万を切り、37年秋には50万以下となったのです。ただし、ナチスは政権掌握後に失業者算出の統計基準を改変することで、33年中に100万人減らしたとの指摘もあり、ナチス政権の性格を考えると、驚異的な失業者の減少を額面どおり受けとれるかどうかは疑問です。」(369頁)
    →後半部分のこういう指摘は重要だと思います。ただ、ヒトラーが当時のドイツ国民の求めるものを見極め、それを叶えることで支持を集めたことも一方の事実だと思います。

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著者プロフィール

高等学校教諭(地歴公民科)。大阪府立高校勤務。1960年、愛知県生まれ。小学6年生のとき、学級文庫にあった漫画、横山光輝『水滸伝』で中国の歴史に興味をもつ。以後、吉川英治『三国志』、井上靖『敦煌』などを読んでますます中国史にはまり、大学でも中国史を専攻。金岡新の筆名でWEBページ「世界史講義録」を開設し、授業で話した内容を公開している。著書に、『なぜ?がわかる世界史』(学研プラス)、『ものがたり宗教史』(ちくまプリマー新書)など。

「2022年 『だれが歴史を書いてるの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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