殺戮の天使

  • 学習研究社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054007345

感想・レビュー・書評

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  • 「殺戮の天使」読了しました♪
    今作はいつも読んでいるミステリーと違って、犯罪を犯す側の視点からの作品で、率直な感想としまして、これはこれで面白かったです
    少々、物語の捉え方が慣れていないのか、難物しましたけど、いつものとは違ったジャンルで面白かったです♪

  • 持論だが、ストレートに悪と対峙して正義を成すことに比重を置くのが「ハードボイルド」、逆に悪の側面から正義のあり方を問い直す小説を「ノワール(暗黒小説)」と定義している。要は、主人公(=作者)の立ち位置がどちら側にあるか、で決まる。必然的に、前者の結末は〝再生〟、後者は〝破滅〟となるケースが多いが、共通する主題は「暴力」である。だがマンシェットは、そんな安易なカテゴライズを嘲笑するかのように、正義と悪の二項対立を相対化し、暴力の普遍性のみを抽出して、物語の軸に据える。そして、あらゆる権威を否定/破壊する虚無主義、アナキズムの思想を根底に置いたまま、暴力による破滅と再生の文学を構築する。その極点となるのが本作だ。全てのまやかし/幻想に鉄槌を下し打ち壊す。1977年発表、マンシェットの「最も黒い(ノワール)作品」。

    裕福な男を殺し、金を奪う美貌の女。すでに自分の夫も含めて8人を殺害していた。名と容姿を変え、次の街へと向かった女は、エメ・ジュベールと名乗った。港町ブレヴィル。この街の実権を握る実業家らが集うサロン。エメは購入した自転車に乗って通い、情報収集し、標的を吟味する。今回は一人に絞る必要もなかった。全員が腐り切っていた。エメは、街の住人に除け者扱いされている堕落した貴族に近づき、高慢な野郎どもに罠を仕掛けるために利用した。各々の醜聞を拾い出して脅迫する。〝ブルジョア〟らは結束して対抗しようとするが、エメは逆手に取り、一旦は投降したと見せ掛けて逃走。そして、ひとりひとり順々に異なる方法で抹殺していく。

    心理描写を排したドライ且つハードな視点、鋼の如き硬質な輝きを放つ文体、モノトーンの映像を喚起させる鮮烈な空気感。それまではジョゼ・ジョバンニなど或る種の泥臭さが際立ったフランスの暗黒小説は、マンシェットによって磨かれ、熟成した。洗練の極みともいうべき豊潤な味わいは唯一無二だ。
    終盤は、ひたすらに狂気の淵にいる女の殺戮を追う。マンシェットは暴力に一種の美を表出させ、俗物らが死に至るさまを冷酷に、しかもニヒリズムを漂わせつつ描く。原題は「ファタル」。返り血を浴びて真っ赤に染まったドレスを身に纏い、雪の彼方へと消えゆく女。ドラスティックでありながらも極めて甘美な世界観には圧倒される。マンシェットが最後の一文に込めた思いとは、何だったのだろう。
    創作期間は僅か10年余りに過ぎないが、筆を絶つ直前の三作「殺しの挽歌」(1976)、「眠りなき狙撃者」(1981)、そして本作でのクオリティは他を圧倒し、70年代ノワールの到達点を示している。

  • ただ、破滅に向かっていくだけ。

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