ホテル・アイリス

  • 学習研究社 (1996年1月1日発売)
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感想 : 45
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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054007741

感想・レビュー・書評

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  • 小川作品にスパイスのように効いている歪さ。
    その歪さをこんなにストレートに押し出した作品もあったのか。

    海沿いの小さな町を舞台に、老人と17歳の少女のゆがんだ愛が描かれています。
    そもそもSMに対して痛い・こわいという印象しか持っていないため、なぜ快感や興奮を感じるのか、私にはわかりません。
    それでも、その行為によって少女が感じる恍惚を、普段の暮らしぶりから豹変する老人の姿を、物珍しいものを眺めるように読み進めていきました。

    登場する誰もに、たりないものを必死に埋めようとしているような切羽詰まった感じがあって、なんとも落ち着かない気持ちで読了。
    閉じた世界の中で進む物語ゆえ、彼らの欠落感や不自由さが強調されて、読み手をも絡め取ろうとするのかもしれません。

  • ナルホド、噂通りの問題作でした。
    島に住み翻訳家を自称する老人と、対岸のリゾート地で家内営業をするホテルの受付に立つ美少女の愛の物語。
    問題作たるゆえんは、普段は気弱な紳士の老人が二人になるとサディストに変貌し、少女はマゾヒストとして老人の苛めを喜んで受け入れることです。
    小川さんの物語の多くは暗い水底で演じられる舞台のような独特の静寂感を持ちますが、この作品は地上の物語という感じがします。ただ、やはりどこか異世界ではありますが。まあ『ミーナの日記』あたりと同じか。
    なぜ、小川さんがこういうSMの性愛物語を描いたのでしょうね。その点で小川ファンの中で評価が分かれる作品ですが、個人的には(もちろんそんな嗜好は有りませんが)意外にすんなり入り込めて、予想以上に一つの愛の形として面白く読むことができました。
    今年の2月に日台共同で作られた映画が封切されているのですね。主演の永瀬正敏はちょっとイメージが合いませんが。。

  • 初出の記載がなく書き下ろしか。

     夏のリゾート地にある小さなホテル・アイリスの娘で17才のマリは、母親に命じられるまま毎日働いていた。
     売春婦と泊まってトラブルを起こした男の命令口調の声に惹かれ、街で見かけた時に跡を付けて、50才以上も年上の男が遊覧船で行き来する島に住むロシア語翻訳家だとわかる。
     母を欺いて男の家に行くと、服を脱ぐよう命じられて胸が震え、服をはぎ取られて押さえつけられると痛みが甘美な香りを放ち、縛られて性器を探られると容赦なくおとしめて欲しいという願望があふれ出る快感を生んだ。
     8才で父親を殺され、母親に厳しく服従させられてきたマリがなぜ男との関係にはまっていくのかは、読者には理解できない。

  • 2016/07/15
    帯で「なぜ?」って煽っておいて、それだけ。
    SMでしか愛情を表現できなかったのだろうか。アレは愛情だったのか?
    私は、アレは愛情ではなく会話だったと思う。そう思えば、会話ができない甥の存在も気になる。

  • ホテルアイリスの若い娘が、初老で変人の男に魅かれ、人知れずいびつな関係を築いていく。

    なぜ、こんな男に惹かれたのだ。死に別れた父親の影で光が歪んでしまったのか。

  • こういう歪な世界観も書くのかと思ってびっくりした

  • 小川洋子さんらしい世界だけれど、倒錯した行為が普通のSMアダルトビテオにありそうな感じで、現実的過ぎ過ぎるきがします。陳腐に感じました。
    直接の行為ではなく、プラトニックなのに倒錯している恋愛を、小川洋子さんの小説に期待しています。

  • まりのホテルで、事件の軽いのが起こる。
    偶然その男に会った。
    変態男?
    Mに目覚めた?
    自分に興味を持ってくれたから?
    に、会いたいまり。
    終末は、お決まりの、男が捕まる。

  • 2015年1月7日読了。
    老人と、少女。
    こういう、歪みや狂気をうつくしく描くことにかけて、小川洋子さんはやはり一流。

  • 少女と老人の狂気的な愛のカタチ。
    賛否両論なのだろうけど、受け付けなかった…

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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