- 本 ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784054025042
作品紹介・あらすじ
アメリカのアスペルガー症候群の男性・STEPHEN SHORE氏の半生記。幼児期から青年期への出来事や思い出、体験。BEYOND THE WALLの翻訳。精神医学、障害児教育等にとって、自閉症者の内面を知る貴重な文献でもある。
感想・レビュー・書評
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著者のスティーブン・ショア氏は、
自閉症スペクトラム
(autistic spectrum disorders)の当事者である。
何度か来日し、講演もしている。
スティーブン・ショア氏は、とてもポジティブな人。
ムリしてそうなのではなく、呼吸するように
自然にそうなのだと思う。
プレゼンテーションも、おもしろくて、
聴いていると希望がもてる内容である。
彼のポジティブシンキングの元がこの本には詰まっている。
ポジティブシンキングだけではない。
自分にとって本当に困った状況の時には
何ができて、何ができないのか、
どういう援助が必要なのかを
ちゃんと説明できる人なのだ。
現状のすべてを甘んじて受け入れたりはしていない。
だからこそ、彼は、自閉症の当事者として、
発言し、学業も修め、研究活動もできるんだと思う。
「主張すること」と「受け入れること」のバランスの大切さ、
そういう力をどうやって身につけてきたのかが
わかる自伝になっている。
自閉症スペクトラムは、
「自閉症にはいくつかの下位概念があるが、それらは
個別の疾患ではなく、程度の差に過ぎないとの想定で
命名された概念」(『日本LD学会LD/ADHD等関連用語集』)
である。
スティーブン・ショアもこの考え方を採っていて、
米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル
第4版(DSM-4)のように、自閉症、アスペルガー症候群、
広汎性発達障害−他の亜型、レット症候群、小児期崩壊性障害
と別々に見るのではなく、
自閉症からアスペルガーまでを程度の問題、
「表現するもののバラエティーの増加」で見ている。
図に表すと、まさに「スペクトラム」であり、
虹の光を発するプリズムのようにも見える。
そのように捉えるのは、
「受けた診断がどのタイプに該当するか考えこむよりも、
子どもが必要としているサービスやプログラムを提供することに
力を注ぐほうが断然意味のあることだろう」(p.242)
と考えるためである。
『壁のむこうへ』は、本人の言葉で書かれている。
本に限らず、テレビ番組も含めて、
親の言葉で語られている作品も多い。
どちらでもない自分は、厳密にはどちらの立場にも立てないが、
その立てないことを前提にできることは何かを考えることが
必要なのではないかと思っている。詳細をみるコメント1件をすべて表示 -
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