壁のむこうへ 自閉症の私の人生 (学研のヒューマンケアブックス)

  • 学習研究社 (2004年9月28日発売)
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054025042

作品紹介・あらすじ

アメリカのアスペルガー症候群の男性・STEPHEN SHORE氏の半生記。幼児期から青年期への出来事や思い出、体験。BEYOND THE WALLの翻訳。精神医学、障害児教育等にとって、自閉症者の内面を知る貴重な文献でもある。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のスティーブン・ショア氏は、
    自閉症スペクトラム
    (autistic spectrum disorders)の当事者である。

    何度か来日し、講演もしている。

    スティーブン・ショア氏は、とてもポジティブな人。

    ムリしてそうなのではなく、呼吸するように
    自然にそうなのだと思う。

    プレゼンテーションも、おもしろくて、
    聴いていると希望がもてる内容である。

    彼のポジティブシンキングの元がこの本には詰まっている。

    ポジティブシンキングだけではない。

    自分にとって本当に困った状況の時には
    何ができて、何ができないのか、
    どういう援助が必要なのかを
    ちゃんと説明できる人なのだ。

    現状のすべてを甘んじて受け入れたりはしていない。

    だからこそ、彼は、自閉症の当事者として、
    発言し、学業も修め、研究活動もできるんだと思う。

    「主張すること」と「受け入れること」のバランスの大切さ、
    そういう力をどうやって身につけてきたのかが
    わかる自伝になっている。

    自閉症スペクトラムは、
    「自閉症にはいくつかの下位概念があるが、それらは
    個別の疾患ではなく、程度の差に過ぎないとの想定で
    命名された概念」(『日本LD学会LD/ADHD等関連用語集』)
    である。

    スティーブン・ショアもこの考え方を採っていて、
    米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル
    第4版(DSM-4)のように、自閉症、アスペルガー症候群、
    広汎性発達障害−他の亜型、レット症候群、小児期崩壊性障害
    と別々に見るのではなく、
    自閉症からアスペルガーまでを程度の問題、
    「表現するもののバラエティーの増加」で見ている。

    図に表すと、まさに「スペクトラム」であり、
    虹の光を発するプリズムのようにも見える。

    そのように捉えるのは、
    「受けた診断がどのタイプに該当するか考えこむよりも、
    子どもが必要としているサービスやプログラムを提供することに
    力を注ぐほうが断然意味のあることだろう」(p.242)
    と考えるためである。

    『壁のむこうへ』は、本人の言葉で書かれている。

    本に限らず、テレビ番組も含めて、
    親の言葉で語られている作品も多い。

    どちらでもない自分は、厳密にはどちらの立場にも立てないが、
    その立てないことを前提にできることは何かを考えることが
    必要なのではないかと思っている。

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