長い散歩

著者 :
  • 学習研究社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054032798

作品紹介・あらすじ

一人の初老の男と5歳の少女の旅。奥田瑛二の映画『長い散歩』を、人気エッセイスト・安藤和津さんが書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 奥田瑛二氏の映画「長い散歩」を奥田夫人の安藤和津氏が小説化した作品だそうです。2006.12発行。妻や娘への思いより自分の立場、出世を気にして生きてきた元高校校長、安田松太郎65歳と水商売の母親とその情夫に無視・虐待され続けてきた横山幸(さち)5歳の2人の「再生の旅」が描かれています。人生は長い散歩。人は愛がなければ歩けない。今、世の中で何が欠けているのか。生きて行く上で一番大切なものは何か。やさしさ、ふれあい、ある意味でのまさつ・・・、そんな人間の営みの真実を教えてくれた物語です。

  • 安藤和津は奥田瑛二監督の奥さんである。最初映画「長い散歩」の映画と同時期に作ったノベライズかと思った。あるいは、脚本家による小説なのかと。しかし、読み終わった後に奥田監督のあとがきを読んで分かったのは、まったくの独立した小説らしい。監督が「書いてみないか」と提案し、安藤さんは時には監督に色々聴きながら、小説世界を作ったらしい。

    だから、映画は映画、小説は小説としてみる必要がある。映画の中で、サチが熱いものを嫌がる理由をワタルが簡単に見抜く場面がある。映画的作法では、そのことは物凄い大きな事件だったのであるが、小説のなかではさらりと描かれている。松太郎の「人間として不足している部分」はそのような映像ではなく、独白の中でゆっくりゆっくりと彼に覚らすのではある。

    よって、あの映画は主に安田松太郎の視線だけで作っているのに対し、この作品では時には少女のサチの視線で、あるいは母親の真由美の視線で、松太郎の娘亜希子、妻の節子、あるいは旅の途中で知り合った帰国子女のワタルの視線を実現する。

    あの映画は名作だった。しかし、唯一不可解なシーンだったのはワタルの自殺だった。この小説では、それを衝動的な自殺だったと描いている。それはそれで一応納得はしたのであるが、映画の欠点を拭った感がしてならない。松太郎の過去も、小説らしく詳細に描かれる。映画ではなぜあそこまで松太郎を嫌うのか突発な感があったが、単に母親を追いつめてアルコール依存症にさせただけではないということも分かった。思春期のプライドをずたずたにしたのである。松太郎は本当には自分の罪が分かっていなかった。サチとの長い散歩も、これをすれば罪になる等何もかも自覚した上での行動ではなかった、しかし、そのような無様な姿のほうが、私にはリアルではある。校長まで歴任した男の巡礼の旅とも言えるサチとの「長い散歩」は、やはり彼にとっては大きな財産になるだろう。

    あの映画を豊かにするためには、格好の小説だった。監督の妻もやはり只者ではなかった。「CNNデイウォッチ」の元キャスターらしいが、私は顔は知らない。

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