子ども虐待という第四の発達障害 (学研のヒューマンケアブックス)

  • 学習研究社
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  • 本 ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054033658

作品紹介・あらすじ

虐待された子どもたちは心だけでなく、脳の発達にも障害が生じる。そして自閉症などと極めて似た症状や問題行動に苦しむ。子ども虐待と発達障害という今日明らかになり始めた問題について第一人者の著者が臨床事例から明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 幼児期に保護者から度重なる虐待を受けた場合、子どもの脳に影響が出ると聞いていた。なぜ、どのような影響が出るのか、また、その影響を軽減する、もしくは再生するにはどうしたらよいのかを知りたくて読んだ。

    臨床医が書いただけあって説得力がある。事例とデータとで説明もわかりやすい。なるほど、あれはそういう意味だったのかと何度頷いたか知れない。

    大人も子供も「自己実現」が中心になったがために、もっとも支援を必要としている幼子が邪魔になる世の中になった、との筆者の指摘には深く納得する。

    幼児虐待の負債は計り知れない。
    一刻も早く、手を打たねばなるまい。

  • 子ども虐待の治療は解離性障害の治療と言ってもいいほど。
    現在の児童養護施設に暮らす子どもたちは昭和30年代を生きているよう。家庭に恵まれず保護された、心に深い傷を負う子どもたちへのこのような扱いは、国家レベルのネグレクトではないか。

    まぁ、なんせ最初から最後までgkbrでしたわ。

  • 発達障害の専門家である著者が、子ども虐待という問題にからんだ発達障害(虐待の結果障害が起こる&障害があるゆえに虐待を受ける&その両者すなわち親も虐待児であったという虐待の連鎖)に関して、一般向けに症例を交えて述べた本であるが、やはりかなり専門的な内容になっていて、養護教員や障害児施設のスタッフ、小児科医師などの専門家にこそ読んで欲しい本になっている。これを読むとつくづく「愛着」が人として、更には動物として必要であることが理解できる。

  • 易変性 適応障害 愛着行動 定位行動 信号行動 接近行動 飛行場現象 離散的行動モデル 依存抑うつ 転換ヒステリー 自動化現象 水密区画化 過覚醒 蟄居(ちっ居)既往 自我状態 病理 ポリサージャリー 代償機能 世代間連鎖

    子ども虐待の通告件数は年々増加している。……今はもっと多い。
    「子どもや弱者を保護するための文化装置が働かなくなってきていることを、象徴的に表している」p12

    p26「乳幼児は瞬間を生きている」

    愛着の中核は官能的な記憶にあるp27

    人が持つ様々な感情は、愛着抜きでは成立しない。p28

    パースペクティブ(空間的、時間的、対人的な視点の移動を行うこと)……この機能の障害がある。p34
    サリーアン問題だな。

    解離……心身の統一が崩れて記憶や体験がバラバラになる現象の総称p38

    防衛反応としての解離性健忘とPTSDの麻痺症状に違いはあるのか。

    離散的行動状態モデル……生理的な状態と意識状態とがワンセットになった行動状態の間をスイッチを切り替えて移動することを表した行動モデルである。

    p85しかし虐待のような反復性のトラウマの場合には、徐々に刺激内容にかかわらずフラッシュバックが引き起こされるようになる。被虐待児は、体の警戒警報が鳴りっぱなしの状態となって、すべての刺激に検討を行わず即座に過剰反応を示すようになるのだ。
    普通の外傷体験との相違

    虐待的な対人関係以外は存在しなくなる……虐待的きずなp98

    なぜか虐待家族は子どもが多い。(支配-隷属 の関係でしか人間関係を築けない歪んだ愛着を持つ人が家族を作るのだから……当然と言えば当然である。)

    過去につながれた自己意識から離れ、自分を大切な存在として新たにとらえなおす作業
    (歪んだスキーマからの解放か)




  • 10年以上前の本だが、いま読んでもなかなか良い本だと思う。発達障害と愛着障害の鑑別など、臨床実践に基づいたデータが多くて貴重な資料である。脳科学的なデータも紹介されており、一冊でかなりの満足感。

    今でこそトラウマインフォームドケアの概念が本邦でも広まり、発達障害と思われる子どもの背景にトラウマが潜んでいることに目を向けられるようになったが、それ以前からこうした実践をしていたことが驚きである。自我状態療法やEMDRも当時からしていたのかと思うと、本当に頭が上がらない。

  • P.174
    レジリアンシーの反対、ぜい弱な個体の特徴の方が、子ども虐待のケアには学ぶものが多いと思う。それはちょうど強い個体の反対の次のような特徴である。

    無力感、孤立、低いコミュニケーション能力、状況に対する受け身性、知的なハンディキャップ、衝動性、暴力的、著しく低いストレス耐性。こうした状況をつくらないことこそが、我々がなすべきサポートだが、これまで述べたことから分かるように、困ったことに上記のような特徴は、実は被虐待児のもちやすい特徴にぴったり重なるのである。それでも確かに、被虐待児の中にも、明るさや人への信頼を失わない子どもたちも存在する。その特徴を敢えて取りあげてみると、次のようになる。
    「人からのサポートを受け入れることができる」「記憶の断裂が比較的少ない」「衝動性が比較的乏しい」

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/734778

  • 読んでいると、自分の関わってきた子どもが浮かんできたりして苦しかったが、一気に読んでしまった。
    当事者、関係者にとっては理解が進む本かと思う。
    難しすぎずに、分かりやすかった。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:493.937||S
    資料ID :95170561

    子ども虐待を発達障害の視点から考えてみることに役立つご著書です。

    (小児看護学 鎌田佳奈美先生推薦)

  • 杉山は発達障害の権威らしい。日本で軽度発達障害という概念を樹立した人物でもある。海外の研究や事例も豊富だ。しかし人間性が伝わってこない。本の体裁も変わっていてフォントが大きい二段組で読みにくい。私が誤読しているかもしれないので、お気づきの点があればご指摘を請う次第である。
    http://sessendo.blogspot.jp/2016/07/blog-post_25.html

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著者プロフィール

福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授

「2023年 『そだちの科学 40号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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