仏像のなぞとひみつ 種類から時代による造形の違いまで、仏像の見方を詳しく紹介 (学研雑学百科)
- 学研パブリッシング (2011年2月8日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784054048737
作品紹介・あらすじ
仏像の種類を見分けるための基礎知識、時代別に見た仏像の造形的な特徴、さらには仏像の知られざる横顔から、海外の仏像までを一挙に解説。仏像イラストレータの田中ひろみ氏による親しみやすいイラストと、豊富な仏像の写真で読み解く、「見る」仏像入門。
感想・レビュー・書評
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基礎から勉強になります。
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よくお世話になっている田中さんがイラスト担当。
彼女の暖かく親しみやすいイラストが好きですが、仏教学者・頼富本宏氏による解説がとても丁寧で、辞典のように網羅されていました。
仏教伝来より、脈々とその伝統を継承されてきた仏像だと思っていましたが、時代によって求められる仏像が違っていたことを知ります。
末法思想により人々の救済願望が強まると、「早く救いに来てほしい」という願いから、立像や歩きだそうとする仏像が増えるのだそう。
「走り大黒」の紹介もされて、奈良国立博物館の像を思い浮かべます。
東大寺南大門の巨大な仁王像が両足のみで支えられているという指摘から、当時の力学計算の高度さに言及していました。
これまで考えてみたこともありませんでしたが、たしかに800年も昔に完成形の計算がなされていたことに驚きます。
怒りの表情を浮かべる明王の外見は、当時のインドの奴隷がモデルだということは、これまで読んだどの仏像本にも書かれていなかったため、大きなインパクトを受けました。
まとめた髪を垂らしているのも「奴隷なので髪も切れない」という意味かもしれない、ということ。
奴隷が仏のモデルになったというのが、不思議です。
鬱屈した生のパワーを表現したかったのでしょうか。
東寺の立体曼陀羅を見た時、女性が明王に踏みつけられている像を見てかなり驚きましたが、それは降三世明王が、三世三界の主を自称する大自在天と烏摩妃を踏みつけている様子だとわかりました。
東寺にはその説明がなかったため、(女性が足蹴にされていいのだろうか)という気持ちさえ持ちながらはらはらと見ていたため、納得できました。
阿修羅を滅ぼしたのは帝釈天ですが、インド神話で阿修羅を滅ぼしたのは、弁財天なんだとか。
それで戦いの女神とも言われているわけですね。
弁財天と吉祥天は似て非なるもの。両者の広まり方の違いについての指摘が興味深かったです。
筋肉隆々とした仁王像を見て「当時の力士がモデルだったのかしら」と考えていましたが、ギリシア神話のヘラクレスがルーツだったという説があるそうで、なるほどと思います。
仁王の文化的変遷を追った資料があれば、見てみたいものです。
仏像に関する本はわりと読んでいる方ですが、それでもこれまで知らなかった知識がいろいろと紹介されている、満足感の高い、実り多い内容でした。
著者プロフィール
頼富本宏の作品





