プロメテウスの罠 3: 福島原発事故、新たなる真実

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054055810

作品紹介・あらすじ

日本新聞協会賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などノンフィクション・ルポルタージュの賞に輝き、2012年もっとも注目された朝日新聞連載記事の書籍化第3弾。いまだ16万人が避難生活を続け、収束のきざしの見えない福島原発事故。人々の苦悩と、これからの日本の原発のあり方を問う、気鋭の記者たちのルポだ。

感想・レビュー・書評

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  • 三春町の自治力が素晴らしい。
    日頃から国などへの忖度や依存ではなく、いかにして住民を守るかを第一に考えていないと出来ないこと。
    当然と云えば当然の自治力が、今どれだけ地方の市町村にあるだろうか。

  • 2022/02/07

  • 新聞連載の書籍化第3弾は、福島県広野町の高野病院の奮闘から
    始まる。原発から22kmに位置する高野病院は、福島第一原発の
    1号機が爆発したあとも、入院患者を避難させることなく入院医療
    を続けた。

    勿論、避難するよう勧告もあった。病院を訪れた警察官からは「なぜ、
    ここにいるのか」と強い言葉で言われている。だが、動かせない患者
    もいる。実際に被災地の他の病院では避難の際の長時間の移動中
    に亡くなった方もいた。

    この高野病院のケースが突き付けるのは、被災地での地域医療
    継続の問題だ。住民が帰還するにしても、病院が必要になる。
    だが、「福島」というだけで看護師等が集まらない現実がある。

    福島県三春町は原発から西に45kmに位置する。原発立地自治体でも
    なく、自治体職員も放射能に対する知識はなかった。

    しかし、大熊町からの避難住民を受け入れたことで、住民につき添って
    来た大熊町職員が集めていたデータから放射性物質が自分たちの町に
    も危険を及ぼすことを悟る。

    政府はSPEEDIのデータを公開しなかった。海外の放射能観測機関の
    拡散予測を参考に、風向きを確認して全町民にヨウ素剤の服用を
    促した。これがのちに、県やマスコミから批判されるようになるのだが。

    他にも除染の問題、核廃棄物の地下保存施設の問題を扱っている。
    マスコミもそうなのだが、原発の安全神話に加担した戦犯として
    批判の矢を浴びてもおかしくない広告代理店なのだが、誰も批判
    しないんだよね。

    電通、博報堂、東急エージェンシーの有名広告代理店は原発安全
    神話で大儲けした上に、今度はがれきの広域処理や除染でも
    大儲けしている。

    環境省ががれきの広域処理の啓蒙の為に、日刊紙に全面広告を
    打ったことははっきりと覚えている。これも広告代理店が絡んで
    いるし、被災地にオープンさせた除染プラザも環境省が電通に
    丸投げ。

    いつ終わるとも知れぬ避難生活を送っている人たちを尻目に、
    二重三重に甘い汁を吸っている奴らがいる。それは、財政難の
    自治体に核廃棄物の地下保存施設を作らせようと暗躍する
    有象無象の奴らと同じじゃないのか?

  • 考えさせる

  • 星の数で評価するような本ではないと思うので、無評価。
    原子力というとても一般人には理解が難しく、その扱いが専門知識を要するもので社会基盤を作っていると、超巨大事故を起こした場合に経験則だけでは対応できないことが起こり続けるよ、ということを様々な事例で報告されている、と捉えました。

    そんな中でも、指導力、統率力、決断力、使命感がある人が何人かいて、耳を傾ける人たちがいれば、危機は乗り越えられることもわかります。

    そして、今やらなければいけないことは、復興と地域社会の再生。日本の社会構造を変えないと…と思いますが、どうなのでしょうね。

  • 30キロ圏外の飯館村、ヨウ素剤を飲用した三春町、瓦礫の広域処理、NUMOの核廃棄物処理。バブルで買ってしまったリゾートマンションのような手詰まり感に疲労を持ちつつも、福島を知り続けるためには誰もが読むべき連載。

  • 福島原発事故をめぐるルポルタージュ第3弾。この巻では、主に事故後の問題に焦点が当てられる。相変わらず、腹立たしくも信じられないような対応ぶりだ。とりわけその被害を被ったのが飯舘村長泥地区。ここは福島第一原発からは33kmの距離にあるものの、地形や風向きの関係で高濃度の放射線が飛来し滞留していた。原子力安全委員会はそれを知りながら、住民に一切避難勧告を出していないばかりか、考えてもいなかったのだ。誰のための何のための「安全」委員会なのか。そのために住民は最も危険な事故直後の2か月間そこに留まり続けた。

  • 原発事故は日本人に何をもたらしたのか?人気連載の書籍化第3弾です。早くも風化の兆しが見え隠れする中で、放射能汚染という目に見えない『恐怖』のために引き裂かれていく地域や人々の様子を描いております。

    朝日新聞紙上で大反響を起こしている連載記事の書籍化第3弾です。ここに収録されている内容は、2012年6月9日から2012年10月22日(第13~18シリーズ)までのものなのだそうです。僕はリアルタイムでこの連載を見てはおりませんが、書籍化されたものはすべて目を通しているので、震災、原発事故後の「フクシマ」の刻々と変わっていく様子は目を離さずにいるのではないかと思っております。

    本書が刊行された2013年の時点で、2年の歳月が流れており、早くも風化の兆しが見え隠れしているのですが、現地での生活は破壊されたまま元には戻らず、放射能汚染に関する恐怖から地域が、家族が、分断されていく様子が気鋭の記者たちによって浮き彫りにされていきます。


    第十三章では、医療体制のままならないまま奮闘する病院を取り上げ、被災地における地域医療を再生させるのが以下に困難かを記し、

    第十四章では原発危機のさなか、自治体の判断で、『安定ヨウ素剤』の服用を決断するという緊迫した会議の様子が描かれていて、ギリギリの状況下で『決断』を下さなければならないという『苦悩』が
    映し出されておりました。

    さらに第十五章では途方もない規模の除染をめぐっての話で、作業そのものが住民の負担にゆだねられているという現実や、後手後手に回っている行政当局の施策。住民の轟々たる怒りをまるでサンドバッグのように受け止めながら説明に回る担当者が印象に残っておりました。

    第十六章の『カワセミ日記』では原発から33キロという飯館村の長泥という区域で水戸市に住む写真家の関根学氏の撮影を通して、崩壊していく地域と、それにもかかわらずあくまで美しく残っていく自然との対比が描かれ、本当に読んでいて胸が詰まるくだりでありました。

    第一七章の『がれきの行方』では震災によって発生した途方もないがれきの処理をめぐっての話で、『広域処理』にこだわる環境省との攻防や、放射性物質拡散の恐れが処理を遅らせているという話も、本当に考えさせられるものがございました。こうした検証記事が書籍化され『3・11を忘れない』ということで後世に残っていくことを僕も切に願っております。

  • 福島第一原発事故後の住民像。フィクションorノンフィクション?

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著者プロフィール

朝日新聞報道局につくられた調査報道専門の取材チーム。2011年の福島原発事故による放射能汚染の惨劇を受け、検証記事を作製するために、特別編成取材班がつくられた。

「2015年 『プロメテウスの罠 9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝日新聞特別報道部の作品

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