詩画とともに生きる たくさんの愛につつまれて

  • 学研マーケティング (2015年7月30日発売)
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  • 本 ・本 (92ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054061668

作品紹介・あらすじ

怪我をして手足の自由を奪われた中で、字を書き、絵を描き始めて、ついには詩と絵を融合させた詩画という世界を確立させるまでの過程で、絵といかに向き合い、生きる希望をつないできたかを絵の変遷をたどりながら、創作への熱い思いを語りつくした1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 星野富弘さんの詩画集。2015年の作品。
    この作品は、自伝的なエッセイとともに、絵だけの作品群が多く掲載されている。

    前半には、小学生の頃の絵を交えて、少年時代の様子を窺い知ることができる。
    お母さんが、なんでも取っておいてくれたとの事……小学校時代に描いた絵が残っているって、ステキなことだ。


    引用

    群馬大学病院の銀杏 1976年
    銀杏のあでやかな黄葉がほんとうにきれいで、今ならスマホで写真を撮るところだろうが、将来そんな便利なものができるなんて夢にも思っていなかった。しかしなんとかこの感動を残したいという思いは同じだ。
    美しいものに出合った人間って、そういうものではないだろうか。そして感動が大きいほど、散り始めたときの、寂しさも深い。でも、その寂しさもいつの間にか好きになった。
    買ったばかりでうれしくて仕方がないのだろう。銀杏の木の下に止めた真っ赤な新車を、しょっちゅう見にくる若い医者もいて、人間も楽しい。自動車を描いたのは、後にも先にも、この一枚だけだ。
    当時お世話になった医師がまだいらっしゃり、お誘いを受けて桜の花の季節には毎年のように病院を訪ねている。この絵の銀杏は何本か残っているが、校舎と病院を結ぶ渡り廊下は、取り壊されてしまった。

    銀杏と、木の間から見える渡り廊下の絵とともに


    長い病院生活の中で、定点観測をしながら、絵を描く。昔のことを幾度となく思い返していた様子がありありと浮かびます。

    寂しさもいつのまにか好きになった…なかなか言えないセリフが刺さった。

    若い医師の真っ赤な新車…
    今はない渡り廊下…
    過ぎ去っていく時間を感じる

    僕たちは、生き急いで、やるべきタスクに追われ、逆に無駄な時間を過ごしているのではないだろうか…

    「未来」のことを考えすぎて、「今」をおろそかにしてはいけない事と同様に。
    「今」を大切にしようとするあまり、「過去」を、「思い出」をおろそかにしてはいまいか…

    そんなことを思いました。
    立ち止まる大切さ
    過去に出会った人たちへの感謝
    そう言うものも、今の自分を輝かせるために大切

    絵と向き合い、ゆっくりと考える時間があった富弘さんの病院での時間。田舎に帰った時の時間。
    そんな時間を感じながら、
    そんなことを思いました。

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著者プロフィール

詩人・画家。群馬県勢多郡東村に生まれる。群馬大学教育学部体育科卒業。中学校の教諭になるがクラブ活動の指導中頸髄を損傷、手足の自由を失う。入院中、口に筆をくわえて文や絵を書き始める。1979年、前橋で最初の作品展を開く。1981年から雑誌や新聞に詩画作品や、エッセイの連載をはじめ、1982年、高崎で「花の詩画展」開催以後、全国各地で大きな感動を呼ぶ。1991年、村立富弘美術館開館。ニューヨーク(97年)、ホノルル(00年)、サンフランシスコ、ロサンジェルス(01年)、ワルシャワ国立博物館(04年)で「花の詩画展」を開催。05年、(新)富弘美術館新館開館。群馬県名誉県民。

「2019年 『女声合唱組曲 神様ありがとう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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