- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784054062146
作品紹介・あらすじ
TPP、消費税の値上げ、少子高齢化、国防など、現代の日本が直面する問題点は、実は「世界史」の中で繰り返し登場してきたテーマでもある。歴史上の国々は、その問題にどう対処し解決してきたのか。知恵としての「世界史」をひもとく一冊。
感想・レビュー・書評
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元代ゼミの世界史講師で、現在は著作家となられている著者による、なかなかセンセーショナルなタイトルの1冊。
結構期待して読んだのですが、なんと言うか…全般的に「荒っぽい」印象を受けました。
まずは情報の選択。歴史の教科書からストーリーに合う特定の箇所だけを抜き出したような。。
また本著、参考文献が示されてないのですが、情報の真偽という面でも不安を感じました。(そこまでのフォーマルな本ではない、ということなんでしょうか)
その上で本著のタイトル。「解決している」のであれば、どう解決しているのかハッキリ書いてくれれば良いのですが。。
例えば情報の選択という点では、少子化対策のくだりでフランスの戦前の試みが紹介されていましたが、今の日本に役立つのは最近の試みでは?と思いました。結婚していないパートナーシップ契約下での出産が6割らしいので、著者か、誰かのお好みには合わなかったのかもしれませんが。
情報の真偽という点では、日本が朝鮮を植民地支配していた時代、米作のモノカルチャー化を推し進めた…と書かれていたんですが、ホントそれ?となりました。
戦後の朝鮮の発展に寄与したかどうかは別として、軽く検索しただけでも工業化や商品作物の栽培等は進んでいたようなのですが。。
https://www.jkcf.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/11/06-0k_j.pdf
その他、読んでいて感じた点…というか違和感です。
「もし、先進国が今の10倍の値段で石油を買えば、産油国の貧困層にまで、その利益は、浸透する」というのは普通に意味がわからなかったです。イスラムの人々を貧困と困窮に追い込んでいる最大の原因を、「我々」に求めるべきなのか…(無実だとは言いませんが)。
また、中国について、「広大な国土、多様な民族で構成される中国を統治するには、独裁的政権が必要」と言い切っているのは「おぉ。。」となりました。広大な国土と多様な民族…。仮の話として、今後地球が1つの政体に纏まったとしたら、それも著者は「独裁的政権が必要」と言うのでしょうか。
なお、本著で触れられていた「国家の体制が、国家の貧富を決定する主要因である」とする学説「制度論」について、本著の文脈ではないですが、日本に当てはめたらどうなのか興味が湧きました。
タイトルでハードルが上げすぎちゃったかなぁ。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
元予備校世界史講師・現在著作家による、現代日本の各種問題点について、「歴史に学ぶ」本。
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WORLD HISTORY:
The Problems Japan Now Faces Have Already Been Settled
https://hon.gakken.jp/book/1340621400 -
解決しているのかどうかは微妙だが、過去の指導者・国民がどのように取り組んできたか、まさに「歴史に学ぶ」ことが出来る。このベースの教養があって初めて、現代は未曽有の前例無き時代である云々、とか言う資格があると言える。
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世界史と現代との接点をいくつも示してくれる本。
世界史の教科書を眺めてるだけでは分からない、歴史の視点、社会の仕組みを教えてくれる。
何度も読み返したい一冊。 -
薩摩・長州は幕府の鎖国政策のおかげで、密貿易という形でありながらも、対外貿易を独占することができた。
黒船の来航以来、幕府は開国政策を余儀なくされます。開国すれば、薩摩・長州は対外貿易を独占することができなくなってしまいます。
開国、横浜開港、薩長の没落という心配
薩長に近代革命という理想への志向や情熱が芽生えていたかどうかは疑わしい
将軍という世俗の権利者の上に、天皇という超越的な存在があったことが、近代日本に幸いしたともいえます。
景気のサイクル
キチンサイクルとジュグラーサイクルは、2012年に谷をつけ、上昇に向かっている。クズネッツサイクルは2001年に谷をつけ、上昇に向かっている。
自由貿易のベテラン日本
日本は世界の中で最も開かれた国で、関税なども他国に対し、優しすぎるのではないかというくらい低く、自由貿易の先端を走る国なのです。・・外国人労働者の受け入れなど、一部の分野で閉鎖的なところがあるのは否めませんが。
攻めの姿勢、イギリスに学ぶ
イギリスや、過剰な保護を受けていた時代にはなかった新しい時代の農業経営のモデルを構築することに成功していたのです。そのため、1870年代に保護貿易に回帰したときも、イギリスは自国の農業生産だけで、十分に食料需給をまかなえました。
南北戦争、血によって獲得した関税
リンカーンが国内勢力拡大と国際世論を味方につけるため、奴隷解放宣言を行ったりしたため誤解されがちですが、南北戦争の本質は、関税や貿易政策のあり方とその利権をめぐって争われた戦争といえます。
中世においてバルト海の物流を担ったのが、ヴァイキングと呼ばれるゲルマン人の一派でした。彼らは、北方に住んでいたため、北方の人=ノルマン人とも呼ばれます。
水上の交易ネットワークを独占したノルマン人は巨万の富を蓄積し、9世紀バルト海沿岸にノブゴロド国がつくられ、これがロシアの母体となります。ロシアの語源は、ノルマン人のルス族のことです。
ドーヴァー海峡にはノルマン王国がつくられますが、これがイギリスの母体となります。
日本の経済の中心は瀬戸内海を取り囲む西日本でした。
京都は、瀬戸内海の交易圏と琵琶湖の交易圏をつなぐ中継都市としての機能を持ち、地政学上、日本の物流を統括する地位にあった。
平氏もまた、ヴァイキングの将であった
香辛料はヨーロッパでは生産することができず、遠くアジア・インドから運ばれていました。胡椒バブルも起きた。
信長の時代に、日本はヨーロッパを超える世界最大の銃保有国となる。
働かない者と働けない者
カトリック的な教義の価値観では、金を貯め、利益を追求することは卑しいこととされていました。これに対して、カルヴァンは「すべての職業は神から与えられたものであり、それに精励することで得られる利益は、神からの恩恵である」として、利益の追求を認めました。
アローが主張するように、供給は需要を生むというするセイの法則が医療の世界ほど、見事にあてはまるマーケットはほかにありません。
日本の、国家負担の医療費は増大していくので、遅かれ早かれ財政は破綻してしまいます。
アメリカはじめ諸外国は、巨額の支出が伴う可能性があるため皆保険制に踏む込むことができません。
欧米とイスラムの紛争を、キリスト教とイスラム教の文明対立と容易にとらえるのは大きな誤りです。実態は、領土や利権の争いにすぎません。
植民地政策
輸出用の商品作物を作らせ、モノカルチャー化し、現地の経済をグローバルな商品市場に組み込み、偏った生産制のもと、自給能力を失わせます。
モノカルチャー化された旧植民地でも、独立後、高度成長をとげた国があります。韓国です。
日本は、気候は温暖であるものの、地震や台風など、厳しい自然にさらされている。そのような自然が日本人を受容・忍従型な性質にした。和辻哲郎
ハダルは快適な都市生活の中で連帯意識を失っていく
砂漠の勢力であるバドウは虐げられた状況や試練に耐え、連帯意識を強め強大化していきます
バドウは中心たるハダルを征服し、自らが新しいハダルとして君臨します。イブン・ハルドゥーン「世界史序説」 -
初めて目にする著者の本の場合、少しは中身を見てから買うようにしている私ですが、この本だけは例外でした。タイトルと帯を見た瞬間に買って読もうと決意してしましました。
読後感は、自分の直感に従って行動して良かったと思いました。歴史を学ぶことは大事で、過去に起きたことと似たようなことが現在にも起きる可能性があります。
この本は、日本の今の問題を解決するヒントとして、過去の世界史に学ぶことができるのでは、という問いかけをしたものです。私にとってはこの種の本は初めてだったので、GWに良い読書ができたと思います。
特に、この本で初めて知りましたが、あれだけ騒いでるTPPの件ですが、アメリカはまだTPP加盟国ではなく、日本と同じ位置づけのTPP交渉国のようですね。もっとも交渉をし始めた時期が早いので、アメリカが有利だとは思いますが。TPPも数ある経済協定の一つであることも再認識しました。
以下は気になったポイントです。
・歴史から教訓を得る、のではなく、歴史から視点を得る、歴史とは山の上から広い風景を見渡すことのできるポジションを我々に与える(p11)
・明治維新は、ブルジョワ市民ではなく、特権階級の武士によって起こされたもの。大商人や町人には革命を指導する力はなかった(p13)
・2000年以上の世界史の中で、自分で自分の特権を切り捨てた勢力などない。さらに、ブルジョワ市民階級が育ち始めると彼らに政治の門戸を気前よく開いた(p14、19)
・最大の密貿易は薩摩藩によって行われていた、藩主の島津氏は幕府による領土縮小案を受け入れる代わりに、1609年、琉球の支配を幕府に認めさせた。狙いは琉球を介して中国と密貿易を行うこと。長州藩は、対馬と経由して、朝鮮や中国と密貿易をした(p21、22)
・幕府が鎖国政策をやめて、横浜を開港し欧米諸国と貿易を始めれば、日本の対外貿易の中心は横浜になる、薩長は打撃を受ける可能性があったので利害が一致した(p23)
・グラバー商会は、革命の成功をもって、商会の資産と経営を、三菱財閥の岩崎弥太郎に引き継がせた。三菱財閥と協働して、三菱関連会社を設立(p28)
・フランスにおいてジャコバン派は、財政赤字の大問題を一気に終わらせるべく、ルイ16世とマリーアントワネットを処刑して、ブルボン王朝を終わらせてデフォルト宣言した(p53)
・イギリスでは、1688年の名誉革命によって制定された「権利の章典」で、国王による借金や課税は、議会の承認を必要とした(p55)
・1937年、日本国債ポンド建ての金利は10%を超えて、1939年には20%を超えた、このとき国債は日本銀行に引き受けさせていた。インフレが進行して敗戦前に日本経済は崩壊(p61)
・現在、TPP加盟国は、シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの原加盟4カ国のみ、アメリカはTPP加盟を目指すと表明したのみで決まったわけではない。日本も2013年3月に表明したのみ、交渉国は現在8カ国、中国・韓国・インドネシアは加盟しないと表明(p75)
・日本は、TPPは交渉中だが、FTAは多くの国と発効すみ、FTA交渉中は、モンゴル、韓国、カナダ、EU、日中韓、TPP(p81)
・アメリカは政治的に、北部勢力は共和党を組織、南部地主の農業者は民主党であった、南北戦争の本質は、関税や貿易政策の在り方や利権をめぐって争われた戦争(p98,99)
・バイキング=食べ放題は日本人がつくった和声語、1957年帝国ホテルで、北欧ブッフェ形式の「スモーガスボード」が発音しにくかったので、北欧の人々を表す古い呼称「バイキング」が使われた。(p109)
・京都は、瀬戸内海の交易圏と、琵琶湖の交易圏をつなぐ中継都市としての機能があり、地政学上、日本の物流
を統括する位置にあった(p110)
・コロンブスが大西洋の探検を主張したとき、ポルトガル国王はすでに東回りのインド航路を開拓していたので、支援しなかった。そこでスペインに助けを求めた。新航路開拓で後れを取っていたスペインは援助した(p120)
・スペイン人が、アステカ王国、インカ帝国を征服できたのは、病原菌のため(p132)
・古今東西の歴史上の国家が、失業保険制度、社会福祉政策を実施するうえで、最も悩ましいのは、「働かない者」と「働けない者」をどのようにしていくか、補償対象をどのくらいの範囲にするか(p138)
・16世紀イギリス産の毛織物がヒットするので、羊毛の原料を増産するために、農地を牧草地に転換した、これを「囲い込み運動」といい、このため多くの農業労働者が浮浪者となった(p143)
・ドイツは統一されても国民意識は統一できていなかったので、ビスマルクは社会保障制度によって国民の連帯を形成しようとした。1883年に、疾病保険、1884年に災害保険、1889年に老齢保険を創設した。史上初の拠出型積立保険で、今日の社会保障制度の先駆け(p153)
・社会保障制度は「ネズミ講」と同じで、人口増大がとまれば、制度がただちに破綻するもの(p156)
・ローマは、1~2世紀末に、少子化問題に直面したので、結婚しない女性に独身税、相続権認めず、3人産むと家父長権から解放され、経済的に男と同等の権利を認められたが、少子化を止められなかった(p157)
・フランス民法では、財産の均等分割を認めていたので、財産規模が小さくなることを嫌がる人々は出産をひかえた(p159)
・アジア地域で、イギリス商船を守るために集団的自衛権を行使した日本が、欧州地域で苦戦しているイギリス本軍を見捨てたという事実は、イギリスやフランスを怒らせた(p175)
・集団的自衛権が行使された事例として、2001年アフガニスタン攻撃、イギリス・フランス・オーストラリアが米国支援のために行使、1990年は、アメリカ、イギリスが、ペルシャ湾地域のために行使、アフガニスタン侵攻では、ソ連がアフガニスタンのために行使、ベトナム戦争も(p187)
・集団的自衛権の三類型について、明確な基準がないのが問題(p189)
・イスラム教とキリスト教は文明の衝突は起きていない、スペインのグラナダ攻防戦にキリスト教勢力が勝ったが、イスラム様式のアルハンブラ宮殿を保護継承した、同様にイスラム教徒は、コンスタンティノープルにあった、アヤ・ソフィア聖堂の建物を継承している(p210)
・第二次世界大戦にて、ソ連の犠牲者とされるのは殆どが、ウクライナ人で、1000万人以上。ドイツ侵攻の際に前線にウクライナ兵を投入し、守らなかった(p246)
・オスマン帝国は、軍の統率権をイスラム教徒から選ばずに、キリスト教徒から選ぶことで、キリスト教徒を懐柔、両教徒の勢力の均衡の上に権力を強化した(p251)
・綿製品が毛製品と決定的に異なるのは、水洗いできること、欧州人は水洗いのできない不潔なウール衣料をきていたので病原菌に侵された、そして乳幼児の死亡率が高かった(p266)
・ドイツと朝鮮で経済成長に明暗が分かれたのは、民族の気質の問題ではなく、体制が異なっていたから。私有財産権が保証され、貯蓄促進、投資の金融メカニズムがあるほうが栄える(p297)
・我々は今でもローマ帝国とあまり変わらない生産システムに依拠している、奴隷という言葉は使わないが、それに等しいことが行われている。貧困層を大量に雇い入れて安い賃金で生産に従事させている(p310)
2015年5月5日作成 -
題名の割に中身はそこそこ。書いた人の経歴がよくわからないので、書いてある歴史的事実をどこまで信じるべきなのかって、最後まで少し疑いの心で読んでしまったのが残念。各章ごとにテーマが違うので、興味のあるところだけを読んだ。