NHKスペシャル 人類誕生

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054066519

作品紹介・あらすじ

大反響のNHKスペシャル『人類誕生』(全3回)が一冊の書籍になった。最新の超高精細CGビジュアルも豊富に、世界の研究者たちのインタビューなど番組では少ししか触れられなかった部分も掲載。オールカラーで人類進化700万年の歴史に迫る決定版!

感想・レビュー・書評

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  • Nスペの番組は、愉しんで観させてもらった。某CMの原始人ではなくて、最新学術的研究に裏打ちされたリアルな原始人並びに旧人類や新人類の姿は、録画に値する映像だった。私ももちろん録画した。ところが、残念ながら機器の不調で全て消え去った。でも大丈夫。大型Nスペは大抵本になっているということに最近気がついた。しかも、番組に盛り込められなかった情報満載である。

    いろんな切り口があるのだが、私の最大関心領域は、実は弥生時代だ。縄文時代の技術や習俗が弥生に引き継がれているように、人類学の知見も弥生に引き継がれているものもあるはずだ。というわけで、それに限って以下にメモしていく。

    ・アウトラピテクス・アレファレンシス(370-300万年前)で、男女の体格差が起こる。食物を獲得するオスと比べて、メスは子供を産み育てられる大きさがあれば良く、小さいとエサの消費を抑えることができる。大きいからといってオスの暴力性が増したわけではない。犬歯は小さいままだった。

    ・ホモ・ハビリス(240-160万年前)。最初に石器(オルドヴァイ型石器)を作った可能性がある。狩に使っていない。動物の死体から皮を剥ぎ、肉を削ぎ落とし、骨から脊髄を取り出すために使ったと思える。これが出来るのは人類だけだ。

    ・ホモ・エレクトス(180-5万年前)。握斧(アシュール型石器)を作成。現代人とほぼ変わらないプロポーション。体毛はなく、全身の汗腺から出る汗で体温調節ができて、長距離走が得意、それで狩を行う。頭髪で直射日光を避け、溜めた汗で脳を冷却させる。常に白目を見せ、視線でアイコンタクトが出来た。唇がめくれて、性的魅力に繋がった。また、肉食を始めたので、出アフリカを180万年前に果たして黒海東のドマニシ遺跡(ジョージア)にたどり着いた。

    ・ドマニシ遺跡に30-40代の歯のない老人骸骨化石がある。歯が無くなっても数年間は生きていた。人類史初の介護老人の証拠である(180万年前)。彼らは「心」を持っていた。

    ・ホモ・エレクトスはアジアに出て、北京原人とジャワ原人になって行く。一方、アフリカのエレクトスはハイデルベルゲンシスに進化、ヨーロッパや一部アジアへ。ヨーロッパのハイデルベルゲンシスはネアンデルタール人に。アフリカに残ったハイデルベルゲンシスはホモ・サピエンスへ。

    ・ホモ・サピエンス(新人20万年前-)で初めて人類は複雑な石器や道具を作った。七万年前に埋葬やおしゃれの貝殻アクセサリーを作って、想像力と芸術性があることを証明している。巧みに話すことの出来るサピエンスは物語も作っただろう。

    ・ネアンデルタール人(旧人30ー4万年前)が滅亡したのは、「ハインリッヒ・イベント」という氷河の滑落による海流変化のヨーロッパ気温の乱高下のせいだ。極端な暑さと寒さが10年単位で入れ替わる(最終氷期は1万年前に終わり、現代は間氷期)のについていけなかった。最高20人ほどの集団しか作れなかったために、数百人の集団を作って協力して食料を確保したサピエンスに負けてしまう。

    ・約7.3ー6.3万年前には、少なくともホモ・サピエンスはスマトラ島まで達していた。そこから、氷期で100m低い海水面を利用してオーストラリアまで海を渡りアボリジニの祖先になる。

    ・約4ー2.5万年前、大陸と北海道は地続きだった。大型動物を追って、日本人の祖先は寒さを乗り越えて歩いてやってきただろう。4万年前にサピエンスがシベリアに到達できたのは、骨製の縫い針を発明していて革製の防寒服を作っていたから。

  • ヒトの体毛喪失が発汗作用のためとかはそうだったんだと思う。
    しかし根本的な疑問。多元進化でなく、一元進化、新たな種が、みなアフリカ発生なのはなぜ。なぜ、アフリカ以外の地で新種が発生していないのか。これは人類以外にも言えるのか。他の動物も、発生はアフリカ起源か?
    また、拡散の過程では、遺伝子の突然変異は起きてない。枝分かれはない。少なくともサピエンスは、世界中一種のみで、混血可能。新人類(ミュータント)は出ていない。
    ネアンデルタールとサピエンスは別の種。だったら、F1はできない。少なくも、F2は生まれないはず。亜種関係なのか??
    ボトルネック理論、ネアンデルタールには当てはまらないが、多様性は生まれなかったのか。とうとう興味は尽きない。
    一番は、アフリカで突然変異のなぞ。「2001年宇宙の旅」または、「星を継ぐもの」の世界観に通じるか?

  • サル学の本は実に興味深いが、おずおずと語られていた「仮説」が多くの証拠を積み重ねてきて「新説」となり「定説」となっていく。
    Nスペなどはその「定説」の最たるものだろうと思うと「我々はここまできたと」との思いを抱いてしまう。簡単に読める本ではあるが、ここまでの道のりを思うと深い本でもあると思った。

  •  見たかったTVシリーズ。
     書物で確認。 今年読んだ人類の進化に関わる書物をビジュアル的に補完できる好著(好企画?)。

     発掘等の地道な作業もすごいが、近年のDNAの解析による成果は目を見張るものがある(もちろん、こちらも発掘に負けないくらい地道な作業だとは思う)。
     カール・セイガンのTVシリーズ「COSMOS」で初めて耳にしたDNA(デオキシリボ核酸)という言葉。40年後に、こうしてその研鑽の積み重ねの成果を知ることができる幸せを噛みしめる。
     この先も、まだまだ驚きの発表があるにちがいない。長生きしたいものだ。

     最後、ホモ・サピエンスが日本に渡って来るところまで辿るのが、いかにもNHKだな、なんて思ったが、3万年前の人類がどのように海を渡ったかの検証を行ったのは、先日読んだ『なぜ我々は我々だけなのか』の監修をしていた海部教授のグループだったのか!

  • 人類の進化がわかる本。
    図や絵が多く、分かりやすい。
    人類の進化をまずは、知りたい方にオススメ!

  •  いつも利用している図書館の新着本リストで目についたので手に取ってみました。
     こういったタイトルの本は、ともかく気になります。本書は、“NHKスペシャル「人類誕生」” の書籍版、最新の研究成果が豊富なグラフィックとともに紹介されていてとても興味深い内容でした。
     テレビ放送を観ていないのが残念です。

  • 【書誌情報】
    編:NHKスペシャル「人類誕生」制作班
    監修:馬場悠男
    [判型]B5 160ページ
    [定価]:1,944円
    [発行]学研プラス
    [発売日]2018/08/10
    [ISBN]978-4-05-406651-9

     人類進化700万年の歴史において、20種にもおよぶ人類が誕生と絶滅を繰り返してきた。それは「優れた者が生き残る」という進化の物語とは少し違い、時には強者が絶滅し、弱者が生き残ることもあった。必ずしも強者ではなかった私たちの祖先は、なぜ生き残ることができたのか? そして、わずか20万年前に誕生した私たちホモ・サピエンスが、なぜこれほど急速に世界に拡散していったのか?そこには、身体の進化とともに、「思いやり」や「好奇心」といった心の芽生えがあったのだ。
    https://hon.gakken.jp/book/1340665100

    【メモ】
    ・番組の方。
    https://www.nhk.or.jp/special/jinrui/


    【目次】
    まえがき(制作統括 柴田周平) [002-003]
    CONTENTS [004-005]

    NHKスペシャル「人類誕生」の前に――人類以前「類人猿」からホモ・サピエンス誕生まで(馬場悠男) [008-014]

    PART 1 こうしてヒトが生まれた 

    人類の直立二足歩行はアフリカの森で始まった 016
    二足歩行ができた最初の人類アルディピテクス・ラミダスとは 020
    人類の進化の運命を左右した地殻変動と気候変動 024
    人類はなぜ直立二足歩行を始めたのか 026
    初期の人類から始まった夫婦と家族の関係性 030
    本格的に地上で生活を始めた人類アウストラロピテクス・アファレンシスとは 034
    アウストラロピテクスに見る化石の調査と発見のドラマ 036
    足跡化石が明らかにする直立二足歩行生活と家族の始まり 038
    環境と食物事情の変化がもたらした集団生活と集団行動 040
    氷河時代の到来と新しい人類種の登場 046
    同じ場所で化石が発見されたホモ・ハビリスとパラントロプス・ボイセイ 048
    石器を本格的に作った最初の人類ホモ・ハビリスとは 050
    頑丈型猿人との生存競争に打ち勝ったホモ・ハビリスの戦略 052
    狩りをし、肉を食べ、脳が大きくなった人類ホモ・エレクトスとは 060
    ホモ・エレクトスの姿を現代に甦らせたトゥルカナ・ボーイ 062
    狩りの開始と新たな石器作りに見られる知性の進化 064
    アフリカからユーラシアへ拡散した ホモ・エレクトス 072
    原人ホモ・エレクトスから旧人ホモ・ハイデルベルゲンシスへの進化 076
    ドマニシ遺跡が語る 人類の「心」の芽生え 078


    PART 2 最強ライバルとの出会いそして別れ 

    わずか20万年前に登場した私たち ホモ・サピエンスとは 082
    ホモ・サピエンスに突然訪れた絶滅の危機 084
    多地域進化説とアフリカ単一起源説 私たちはどこから来たのか 088
    ホモ・サピエンスが開花させた文化的能力 090
    ● ホモ・サピエンスの芸術 094
    共通の祖先を持つ最強のライバル ネアンデルタール人とは 098
    ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの狩猟 104
    ネアンデルタール人の知的で文化的な暮らし 110
    なぜネアンデルタール人は地球上から姿を消したのか 114
    現代人に受け継がれたネアンデルタール人の遺伝子 120
    ● 比べてみた! ネアンデルタール人vs. ホモ・サピエンス 126


    PART 3 ホモ・サピエンスついに日本へ! 

    ホモ・サピエンスの拡散 本格的に世界へ拡がっていく人類 128
    日本の白保竿根田原洞穴遺跡から人類拡散のカギが見つかった 130
    海を渡った古代のホモ・サピエンス その方法はいまだ謎が多い 132
    3万年前の航海徹底再現プロジェクト‐① 134
    3万年前の航海徹底再現プロジェクト‐② 136
    続出する遺跡の新発見 アジアは人類史のホットスポット 140
    ユーラシアから日本列島への道 極寒の北ルート 142
    縫い針の発明が、ホモ・サピエンスの寒冷地進出を可能にした 144
    ホモ・サピエンスが到来する以前 アジア各地に暮らした先住者たち 148
    ホモ・サピエンスの道具作りと言語能力の関係を解き明かす 150
    ついに、世界中へ拡散していったホモ・サピエンス 152

    あとがき ご先祖さまから子孫たちへ(柴田周平) [154-155]
    索引 [156-157]
    放送記録 主な参考文献 主な参考サイト [158-159]


    ■Interview 世界の研究者が語る人類学の最前線■
    (1)ティム・ホワイト教授(カリフォルニア大学バークレ校) 032
    (2)オーウェン・ラブジョイ教授(ケント州立大学)  033
    (3)フィデリス・マサオ教授(ダルエスサラーム大学) 045
    (4)ヘンリー・バン教授(ウィスコンシン大学) 055
    (5)ダニエル・リーバーマン教授(ハーバード大学) 071
    (6)デビッド・ロルドキバニゼ教授(ジョージア国立博物館) 080
    (7)カーティス・マレアン教授(アリゾナ州立大学) 087
    (8)ロビン・ダンバー教授(オックスフォード大学) 093
    (9)イスラエル・ハーシュコヴィッツ教授(テルアビブ大学) 108
    (10)スティーブン・チャーチル教授(デューク大学) 109
    (11)マリー・ソレーシ教授(ライデン大学) 118
    (12)クライブ・フィンレイソン教授(ジブラルタル博物館) 119
    (13)スヴァンテ・ベーボ教授(マックス・プランク進化人類学研究所) 123

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