日本のアートマーケットが1兆円になる日 「日本美術市場再生プロジェクト」始動!

  • 学研プラス (2020年2月6日発売)
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  • 本 ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054067783

作品紹介・あらすじ

低迷する日本美術市場を100倍にし、1兆円市場を目指すための「日本美術市場再生プロジェクト」とは一体どういうものなのか。上場美術オークション会社社長自らが語る、日本の美術市場を1兆円市場にするための熱き提言と決意表明の書。

感想・レビュー・書評

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  • アートオークション事業を運営するシンワワイズホールディングスの現取締役会長の著書。同社の前身であるシンワアートオークションは、日本で公開型アートオークションをはじめた最初期の会社。

    日本のアート業界をビジネス・経済・投資といった観点で見られるかと思い、読んでみた。知らない内容ばかりで新鮮だった。
    知らない内容ばかりなので、得るものは多かった。バブルの頃に日本初の公開型アートオークションが開催されてから、現在に至るまでのアート業界の歩みや課題、そしてこの先に目指しているものが述べられている。

    備忘録兼ねて、箇条書きする。

    ◼︎日本のアート業界の状況
    ・日本のアート市場は1990年代初頭のバブル崩壊から縮小を続け、現在では日本の近代美術の取引価格は当時の30分の1にまでなっている。これは欧米や他のアジア圏の国々とは対照的。現在の日本の経済規模を考えると、あまりに小さい。

    ・アート取引額が小さい反面、日本のアートは世界で大きな影響力を持っている。
     (1)高額で取引される作家が多くいること(草間彌生を筆頭とした現代美術作家、戦後美術として欧米に影響を与えた具体運動に関わった作家)。
     (2)日本が観光国家に変化していくプロセスの中で、ベネッセアートサイト直島をはじめとして、本格的にアートを楽しめる場所ができていること。海外からの集客も良好。

    ・著者は、日本のアートオークション市場の規模が小さい理由について、「日本のオークションハウスが世界に比べて圧倒的に弱いから」だと述べている。なぜ弱いのかについては、資金力、および人材の不足をあげている。
     →これについては、より具体的に調べてみたい。

    ◼︎アートの資産性
    ・アートは資産であり、価格がある。しかし、日本ではアートの資産性について、あまり快く受け入れられていない。単に素晴らしい・きれいという評価ではなく、何らかの基準が与えられる必要がある。その基準のひとつが価格。
     →海外ではアートは資産であり、世代を越えて受け継ぐという考えがある。

    ・欧米では、アートの価値付けの仕組みが社会の中に組み込まれている。アート関係者(※)がそれぞれの役割の中で、その価値付けを裏付ける構図となっている。ワインの評価システムも同様の例と考えられる。
      ※アーティスト、画廊、キュレーター、研究者、コレクター、マスメディア、批評家、美術館など。

    ・日本画はアートの頂点のひとつを極めており、欧米の頂点とも引けを取らない。問題は、日本がを取り巻く環境。ゴッホ、モディリアーニ、バスキアが100〜200億円を超えるのに対して、横山大観が10億円にも満たないのはおかしい。

    ◼︎アートオークション
    ・日本のアートオークションの歩み。
     - 1980年代まで、日本にはアートオークションというビジネスはなく、アート作品の取引は画商と百貨店が中心だった。
     - 1990年に2つのオークション会社(具体的な社名はないが、恐らくシンワアートオークションと毎日アートオークション)が誕生し、日本初の本格的な公開アートオークションが開催された。
     - その後のバブル崩壊とアート業界冬の時代。
      →バブル崩壊前後の世の中の描写が新鮮だった。

    ・ギャラリーはアーティストを発掘して世に出す役割(一次流通)を担うのに対し、オークションは既に有名になり価値も安定したアーティストの流通を担う(二次流通)。

    ・オークションの役割
     (1)価値の再現性
      →オークションで買ったものはオークションで売れる。また、競っていた人がいたという事実が作品の価値への信頼につながる。
     (2)価格の透明性
      →過去の落札記録はインターネット上で見られる。10年後に同じ作品が出品されれば、買いたい人はそれを参考にする。それが価値の再現にもつながる。

     この他、オークションの役割として(3)社交場としてのオークション、(4)広報・メディアとしてのオークション、(5)エンターテインメントとしてのオークションといった役割もあげられているが、日本のオークションはそこまでの域には達していない。(1), (2)の実現に努力している段階。

    --------------------
    読んでいて、熱い思いが読み取れる感じがした。日本のアートは可能性の塊のような気がしてくる。本書の出版は2020年だが、その後4年経ち「日本美術市場再生プロジェクト」はどうなったのだろう?

    また、同じアート作品でも評価の固まった近代美術、および作家が存命の現代美術では扱いが全く異なると思う。機会があれば、その点にも注目してみてみたい。

  • サザビーズ 2019年 4000億円でフランスの富豪買収
    クリスティーズ 1998年フランス富豪傘下に

    世界の美術品市場7.16兆円 日本の取引額1%以下。
     オークションハウス、ギャラリー資金力不足
     50億円あれば1000億の市場に?

    香港のマーケット
     関税、消費税、資産課税、相続税無し、16%法人税のみ

    日本の百貨店の美術部/外商 江戸時代の御用聞き
     売り上げの6割

    2005年日本初オークション会社シンワワイズ株式公開

    評価システム
     ワイン ロマネコンティ数百万円
     藤田 ピカソの1/30の価格 中国、台湾で上昇へ 
     日本近代美術 バブル期の1/30

    ビエンナーレ
     学術的視点

    VUCAの時代
     MBAからMFA Master of Fine Arts へ

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著者プロフィール

シンワオークション代表
東京大学経済学部卒業。外資系金融機関を経て、投資顧問会社創業。
金融危機の際に金融担当大臣秘書官として日本の金融システム再生に参画。
2001年にアートオークション会社社長に就任。
現在に至る。

「2023年 『アートが変える社会と経済』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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