なぜ格差は広がり、どんどん貧しくなるのか?『資本論』について佐藤優先生に聞いてみた
- Gakken (2023年6月29日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784054068810
作品紹介・あらすじ
【予備知識ゼロでも大丈夫。現代の「つらい」を『資本論』から理解する】
【「お金」か「命」で、なぜ「命」を選べないのか?私たちが「資本の論理」に洗脳されているから。】
「どうして毎日満員電車に乗って会社に出かけて、夜遅くまでクタクタになるまで働かなければいけないのか?」
「どうして生活していくギリギリの賃金しかもらえないのか?」
「嫌な上司になんで我慢して従わなければいけないのか?」
資本主義の限界や、歯止めの利かない格差社会、環境問題など、現代社会の問題に通ずるヒントが書かれている『資本論』が、今ふたたび注目を集めています。しかし、原書は膨大なページ数があり、難解で、普通の人が理解するのは難しいものです。そこで、佐藤優先生が一度は読んでおきたい『資本論』をわかりやすく解説します。
▼今でも共感できる「つらい…」は150年前から予言されていた!
・給料は「翌日も元気に働くのに必要な最低限の金額」に決まる?だから上がらない?
・どうして「過労死」はなくならないのですか?
・労働環境がブラックなのに、なぜ人はそこまで頑張ってしまうの?
・出来高制は実は資本家の巧妙な〝搾取〟?
・非正規社員や派遣社員の増加をマルクスは予言していた?
・ワーキングプアはどうして生まれるの?
・「働き方改革」は労働者のためではないってどういうこと?
・「分業」が労働者を追い込んでいる?
・AIによって労働者は自由を手にできる?
・機械に仕事を奪われた労働者の末路は?
・エッセンシャルワーカーが低賃金・長時間労働なのはなぜ?
・「やりがい搾取」が横行する理由とは?
・「近代経済学で環境問題は解決できない」ってホント?
・SDGsで環境問題は本当に解決するのでしょうか?
・世の中はSNSなどで意味なく欲望を喚起された、必要もない商品で溢れている
・無意味な仕事が消えていく…社会の再生産にとって意味のない仕事―(マーケティング、広告、コンサルタント、証券やFX、仮想通貨などの投資関連会社……おおよそ実体がなく、消費者の欲望を喚起させるためだけの仕事)
・労働者は資本家だけでなく、国にも搾取されている?
・地方と首都圏との経済格差の問題はどうしたらよい?
「本書の目的は共産主義的なイデオロギーを人々に伝えることではなく、資本主義体制に内在する暴力性からいかに身を守り生き抜くかという道を示すことにあります。資本主義に組み込まれてブラックな労働環境の中、心身ともに病んだり、過労死や自殺をしてしまわないように、主体的かつ戦略的に生きる一助に、本書がなることを願って止みません。」(本文より引用)
感想・レビュー・書評
-
『人新世の「資本論」』の前に基礎知識をつけるための本として選んだ本のうちの1冊。
「資本論」の基礎知識の習得という目的に合っていて、本書をチョイスしたのは正解だった。
3章と4章は、『人新世の「資本論」』をかみ砕いて簡潔に説明したような内容になっていた。
「なぜ、私たちの給料は上がらないの?」といった問いに、2ページで答えるという構成も読み易い。
佐藤優さんと斎藤浩平さんは、以下のような対談もしているのを見つけた。
ポスト・コロナの『脱成長』社会を生きる
https://filt.jp/lite/issue108/s01.html
佐藤優さんは、『人新世の「資本論」』をすごく評価しているようで、本書の中でも紹介していた。
その影響もあってか、本書はタイトルからは読み取れないが、環境問題をすごく意識していて、
SDGsに取り組んでいるという自己満足が環境問題の解決を妨げているとも言っている。
地球環境を守るためには、経済成長を諦めるしかない。
との意見だと読み取れるが、どうすれば経済成長から脱却できるかには触れられていない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本を読むと資本家だけが儲かるように思えてしまう。悲しい。
-
『感想』
〇原本の資本論は難しい。しかしその解説本や現在の社会にどう生かしていくかを説いた本はたくさんあり、そこで勉強している。
〇世の中は平等ではない。お金を稼げるかどうかは人の能力の差だけによるわけではなく、運が多くの部分を占めている。先天的な能力は遺伝で決まっているし、後天的な能力は育つ環境に依存される。
〇自己責任論を強く打ち出すのは、たまたま強者になった者の驕り。でも誰にだってその優越感は心にあり、自分が勝てる弱者を作ってつい見下してしまう。人間の弱いところ。しかしこの弱さが資本主義に合っているのかもな。
〇資本主義は資本家のための制度であり、ただの労働者には幸せな制度ではないということは大概の知識者は知っている。でも知っている人の大部分がそこから抜け出せない。
〇金を稼ぐための本を読むと、会社に雇われている労働者になるな、自分が仕事を作れという。それが本当に稼ぐにはよい道である。でも失敗するリスクがあるわけで怖い。
〇資本主義の元での労働者は働きと得るお金のバランスが悪いのかもしれない。そして仕事に対するやりがいを隠れ蓑に一部の人が儲けているのかもしれない。
〇でも社会的な格差は埋めていく努力をするにせよ、最後は自分がどう思うかなんだな。
『フレーズ』
・マルクスは商品には「使用価値」と「価値」という2つの側面があると言っています。使用価値は文字通り、「使って役に立つこと」です。(略)価値とは、ある商品が別の商品と交換可能であるときの交換基準をいいます。(p.20)
・マルクスはすべての商品がイコールで結ばれる理由を、そこに労働が内在しているからだと考えたのです。このように労働によって商品の価値が決まる説を「労働価値説」といいます。(p.23)
・資本主義が発展していくと、構想(精神的労働)=資本家、実行(肉体的労働)=労働者という分離が起こり、労働者は無味乾燥な単純労働をひたすら行うようになりました。(p.73)
・マルクスは資本の構成要素を2つに分けました。1つは労働力購入に投じられて価値を増殖させる可変資本、もう1つは機械や原材料などに投じられて価値が変わることのない不変資本です。(略)機械化が進めば、やがて労働者は不要になっていきます。すると、全資本のうち可変資本の割合が減り、不変資本の割合が増えますが、マルクスはこのことを「資本の有機的構成の高度化」と言いました。(p.102)
・資本主義の高度な発展は、労働者の余剰を生み出すのです。(p.103)
・資本主義の本質をそのものズバリ「無限に価値を増殖させる運動」と看破しました。(p.120) -
資本論について学びたいと思いつつ、ハードルが高かったところ、図書館でたまたま出会った本。
資本論がなんぞや、ということが分からないのでこれが資本論にどう繋がってくるのか分からないけれど、内容はかなり噛み砕いてあり、図解も分かりやすい。
資本主義がいいのか悪いのか、そこは慎重に判断しないといけないけれど、資本主義でずっと育ってきた人に対してそのままで本当にいいのか、疑問を投げかけるきっかけになると思う。
資本主義の中で労働者が幸せに生きていく方法もあるのではないかと思うし、もっと学ばねばならないと実感。
順番に難しい内容に挑戦していって、最終的には資本論に挑戦できるよう頑張りたい。 -
なかなかマルクスの資本論について難しい本で学ぼうとは思えないが、この分かるやすいシリーズで基本を分かりやすく知れたことは良かった。
-
図解が分かりやすかった。
なぜ給料が上がらないのか、なるほど、と合点がいった。
ただ、内容は薄め。斎藤 幸平さんの「ゼロからの『資本論』 」のような衝撃はなかった。 -
登録番号:1027313、請求記号:331.6/Sa85
著者プロフィール
佐藤優の作品





