赤江瀑名作選 (学研M文庫 あ 14-1 幻妖の匣)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
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  • Amazon.co.jp ・本 (735ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784059004523

感想・レビュー・書評

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  • 上空の城
     一章の夏
     二章の夏
    野性時代 1976年6月

    花曝れ首
    小説現代 1975年11月

    阿修羅花伝
    小説現代 1973年12月

    春喪祭
    太陽 1976年4月

    春の寵児
    小説宝石 1983年2月

    平家の桜
    週刊小説 1979年3月2日

    月曜日の朝やってくる
    小説新潮 1976年12月

    悪魔好き
    小説現代 1976年6月

    八雲が殺した
    小説宝石 1981年7月

    奏でる艀
    小説新潮 1984年9月

    隠れ川
    小説新潮 1992年1月

    伽羅の燻り
    問題小説 1992年6月

    海峡 この水の無名の眞秀ろば
     破片A 遊芸師のように
     破片B 阿片のように匂やかに
     破片C 肉体の華のように
     小笠原挿花 1976年6月(原題 私の花論・肉体の華)
     破片D 花のみち考・魑魅のように
     芸術生活 1975年8月(原題 花のみちは魑魅魍魎)
     破片E 海は海人のように
     破片F 血天井・苦海のように
     破片G アルカロイドの翅のように
     演劇界 1972年11月(原題 アルカロイドの翅)
     破片H 永歌のように
    白水社「海峡」 1983年8月

    赤江瀑インタビュー
    幻想文学 第57号 2000年2月

    解説 東雅夫

  • 長編小説も短編小説もエッセイも全部入った豪華な一冊。質も量も濃密です。
    長編「上空の城」がインパクトもボリュームも抜群。どこかに必ず存在するはずなのに見つからない城に囚われてしまった女性の物語。本当にその城はあるのか、あるとすればその正体はいったい何なのか。城のイメージがあまりにも鮮烈で、この物語の主役はむしろこの城なのかもしれません。
    短編は有名なものが多く収録されているようですが。他の作品集やアンソロジーで読んだ「花曝れ首」はやはり絶品。残忍で美しく、哀しくも優しい物語です。「八雲が殺した」もいいなあ。小泉八雲のある作品についての文学的解釈にもなるほど、と思わされました。ホラー好きとして一番ぐっと来たのは「春喪祭」かな。とにかくどの作品も、情念の濃さが恐ろしくも美しい作品ばかりです。
    そしてエッセイ「海峡」もインタビューも読みごたえ抜群。赤江瀑初心者にはこの一冊で必要十分すぎるほどの濃度でした。むしろ濃すぎてあてられるかもしれませんが。もっとほかの作品も読みたくなるのは間違いないです。

  • 2019.01.23 図書館

  • 赤江瀑作品はじめて読みました。「花曝れ首」「八雲が殺した」が好き。

  • 普段絶対手に取らないような作品を読める面白さ。
    幻妖の匣wあいたた〜と嫌々開いたら全然ばりばり読めた。
    【上空の城】幼い頃から一つの城のイメージに取り憑かれている螢子を彼女の弟の幹生と共に眉彦は同じ絵のある寺に連れて行くが、影の城の絵は開けることを許されない。住職が彼女の出生の秘密を話す許可を取りに行った為に‥‥
    【花曝れ首】京のかげ子の秋童と江戸の飛子の春之助。あだし野の念仏寺に篠子は二人に会いに行く。血潮モミジがふたりのしゃれこうべを抱えている。婚約者が男と浮気していたことに悩む篠子に、石工に匿われ暮し始めた春之助と、1年後石工に手ごめされた秋童、しかし飽きられた秋童は顔に傷を付けることで石工の気をひくようになり、刃傷沙汰となった話を聞かせ、『おちとみやす』と告げる。
    【阿修羅花伝】孫次郎の面を被て野宮を演じる春睦は『孫次郎調伏 綾』と書かれた護摩木を見つける。また、若い面打ちの雨月の作った孫次郎を見せられ、それが作者に似ているから使えないと言う。春睦の後見役の雪政は雨月に会いに行くが姿を見せない。彼の姉の綾が鑿で目をついたことで病院へ運ばれ、鍵をあけて彼の家に入ると、摂食障害になっていた雨月は自分の顔を忘れるため刀痕をつけていた。姉の綾はやめさせようとして、目を潰された。雪政を姉と勘違いしたまま独白し死ぬ。雪政は春睦に雨月の面で演じてくれるよう頼むが断られ、懐に隠して座した。
    【春喪祭】婚約していた深美の死亡と消息を新子に聞いた涼太郎は二人で奈良の長谷寺近くの彼女が女中として働いていた旅館へ行く。琵琶を抱え撥で手首を切って死んだ彼女は琵琶歌を作りに来ていた。消灯しても開いている長谷寺で二人は生身でない坊さんを見る。口をきいたら深美と同じになると牡丹の世話をする老婦に教えられる。
    【春の寵児】性の明るい礼讃
    【平家の桜】3年浪人で慶大医学部に受かった篤彦は彦山温泉なる山奥の秘湯へ遊びに来た。歩いていたらそこに出たいう美濃村が桜の谷を見たという。しかし宿の女主人は、その谷は平家の落武者達がこれ程美しい桜があると人眼につくと全て切ったという。篤彦は桜を見る為留まることを決意する。
    【月曜日の朝やってくる】路面電車の幻。それがあると身内が死ぬ法則。
    【悪魔好き】花作りが好きなハルオ少年の兄の赤ン坊が、おとなしい日本犬ランにのっかられ死んだ。ハルオ少年はランのため、赤ン坊を隠す。兄の妻の京子はハルオを疑い、ハイドランジアの鉢をひっくり返された。彼は警察を連れてきて、何と言うか。
    【八雲が殺した】『茶わんのなか』という怪談の原話と八雲のものとを比較し、なぜ「思ひよりてまゐしものを、いたはるまでこそなくとも」を削ったのか乙子は不満だ。さて夢の中でそれが我が身に起こると。怪に対する殺意。
    【奏でる艀】ようやく母のいる地元に帰ってこれた
    【隠れ川】釵子は千川の本宅の襖絵を描いた。一筋墨がどの襖も横切っているものだ。微妙は川だと言うが、釵子は卒中を起こし道成寺の蛇であることを明かす。
    【伽羅の燻り】尺八の名手だった夫の弟子の息子が訪ねてきた。尺八一本で夫に尽くしてきた弟子だけに驚く。まだ桃源郷で行き会っていない二人に笑う。
    【海峡】狂人となったAのこと、小野小町、海で死んだ人を助けない風習、血天井、歌舞伎

  • 赤江瀑の作品に触れたのは本書が初めて。 Wikipedia の彼に関する項目によれば、瀬戸内晴美は彼を「泉鏡花、永井荷風、谷崎潤一郎、岡本かの子、三島由紀夫といった系列の文学の系譜のつづき」とするようだが、本書に触れた限りでは到底そのようには思われなかった。これらの作家の作品は、その作品が書かれた時代を越えた普遍性を持つに至っているものが、赤江の作品にはその時代の匂いが濃密に感じられると共に時代性から脱却しえない要素が見受けられ、時代の越えた普遍性を持つに至っていないように思われた。

    ただ、本書に収録されている作品のうち頭一つ抜けている「花曝れ首」は、作者本来の魅力を十全に引き出しているものと思われた。これは、「花曝れ首」の主要な登場人物が江戸期の人物であるため、このことが物語をある特定の時代に留めてしまう作者の時代性を巧妙に打ち消しているものと思われる。

  • 昭和30年代から40年代の雰囲気
    若者にあまり楽しみがなかった時代のせいか若者のエロスが淫靡でした
    奇をてらったような内容ではないのですが、底知れぬ薄暗さと背徳感を伴ってなんだかすごく怖いお話が多かった
    しっかりした京都弁もさらに淫靡さを増長させていたような気がする
    今時はここまで世界観を緻密に書き上げる小説家さんいない気がする
    素晴らしかったです

  • 和の歓戯と汚濁

  • 1099.初.カバスレ、帯なし。
    2010.12.20.鈴鹿ベルシティBF

  •  東雅夫編集の赤江瀑の短編アンソロジー。

     官能とは、匂いだ。
     
     真にHな機関は脳だという。人は、脳の中で色々変換したり考えるから、欲情という。
     そして、それに強く関与しているのは匂いだ。
     視覚や聴覚であろうと、思う人がほとんどだろうと思う。が、赤江瀑の世界のおいての官能とは、嗅覚なのだ。
     決して他者とは、分け合えぬ感覚。同じものとはまた遭遇できないであろう儚さ。
     このアンソロジーの中は、そんな儚げでありながら、濃厚な、そして切ない匂いに満ちている。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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