先の大戦における我が国の最新兵器となった零式艦上戦闘機。若干二十代にしてその主任設計者となった堀越二郎氏と、海軍の参謀として過ごした奥宮正武氏の共著。
「私の進路を決定するに与って力あったものは、心の隅に残っていた少年の頃の憧れであった。私の幼い夢は道路からでも飛び立てるような小型の航空機、汽船に代わって世界をつなぐ交通機関となる豪華な輸送機、極地や山岳を冒険するに便利な形式の航空機などにあったが、現実はそれに反して軍用機のみに没頭した」(堀越氏の初版のまえがきより)。
零戦が世に出るまで、特に堀越氏が取り組み、革新的な設計を施した九六式艦上戦闘機の逸話が詳細に記録されており、技術者が卓越した発想を形にし、実用機に育てるまでの話が心ゆくまで語られる。
また、堀越氏は、零戦の先を見ていて提案もしたが、それが用兵者に受け入れられることなく、零戦は相手国の新鋭機との戦いにおされていく。それが切ない。