将軍の料理番: 包丁人侍事件帖 (学研M文庫 こ 12-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784059005919

作品紹介・あらすじ

江戸城の台所人、鮎川惣介は天性の鋭い嗅覚の持ち主である。将軍、家斉に気に入られ話し相手をさせられているうちに『台所人に身をやつした御庭番』などと陰口を言われる始末。幼なじみの御広敷の添番、片桐隼人と大奥で起こった盗難事件を調べていくうちに陰謀の臭いが漂い始める。御膳所に京料理人、桜井雪之丞が現れ、怪しい行動をとる。惣介は曲亭馬琴に相談するが、謎は深まるばかりだった。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸城の台所人・鮎川惣介が天性の鋭い嗅覚で様々な事件の謎解きに挑むシリーズ第一作。
    久しぶりの再読だが、改めて読むと様々な発見があって面白い。

    まず惣介も相棒の御広敷添番・片桐隼人も家庭内はギスギスしている。惣介の方は言いたいことを言い合っての喧嘩だけに救いがあるが、隼人の方はかなり重い。この時代、結婚して十年経っても子どもが生まれないというのは奥様にとってかなりの重圧だろうが、それだけではない疑心暗鬼を妻に対して抱えているようだ。
    確か後の作品では好転していたように覚えているので、それを楽しみに見守る。
    また上方から来た料理人・桜井雪之丞がこんな怪しい登場だったというのも忘れている部分だった。

    このシリーズは惣介のぽっちゃり体型と食べるの大好きなキャラクターからほんわかした雰囲気を予想し勝ちだが、事件は意外にもシリアス。
    大奥の権力争いに端を発した盗難事件が殺人に発展したり、連続無差別殺人が起きたり、付け火による連続火事。

    特に火事の事件は惣介が仕える将軍・家斉が指示したという噂が流れる。しかし惣介は時折直々に出来立ての料理を食べてもらう機会に家斉の本音を聞いているだけにそんなことをするとは思えない。
    ここで思い出したのは今村翔吾さんのぼろ鳶シリーズ。あちらは家斉の実家・一橋家の陰謀で様々な火事が起きていたが、こちらではその息子・家斉にこんな疑惑が掛けられている。

    第一作通してのテーマは親子や家族関係の難しさ。惣介のように言いたいことを言って喧嘩しているうちはまだ良い。言いたくても言えない、言っても届かないということが積み重なるともうどうにもならない事態になってしまう。特に家斉のような将軍家になると親子が面と向かって話をすることすら難しい。
    そこに様々な野望や陰湿な思いを抱えた者が周りを固めていたら、事は更に複雑になる。

    惣介の思いが家斉と家慶親子に届くのか、次回に期待。
    書き忘れたが、曲亭馬琴がなかなかのクセのあるキャラクターでこちらにも注目。

  • 文化3年(1820)十一代将軍家斉の世。
    江戸城の料理人・鮎川惣介は、丸顔で人がよい。
    夫婦になって十五年、二人の子供がいる妻とは他愛もない夫婦げんかをしている。

    惣介は天性の鋭い嗅覚を持つ。
    四十人いる料理番の一人だったのだが、将軍・家斉に気に入られ、直で会うことが出来る稀な立場になる。
    「台所人に身をやつしたお庭番」などと囁かれるが…
    あたたかいお汁や、煎り立ての黒豆、その場で淹れる宇治の青茶など、お毒味の後の冷め切った料理ばかりではさぞつまらないでしょうから、こっそり、こんな差し入れが貰えたとしたら楽しかったでしょうね。
    当時、将軍はあまり評判の良くなかったような。
    しかも、家斉は、跡継ぎの息子と上手くいっていないんですね。
    跡継ぎは「西の丸様」と呼ばれている。
    老中になろうという野心を抱く水野が27歳という時期。

    大奥で小袖の盗難事件が起きる。
    難事件かと思われたのに意外に早く白状した娘があって、里に帰されることになる。
    江戸城を出た父娘の跡を付けたが見失い、後に遺体で発見される。心中とされるが、疑いを持つ惣介と隼人。

    幼なじみの親友・片桐隼人は、御広敷の添番という近い役職にある御家人仲間。
    長身で美形で引き締まった身体、腕が立つという憎らしいような男。
    名コンビを組んで、事件に関わっていきます。

    曲亭馬琴が登場、時には相談役ともなります。当てになるとは限らないけど。
    馬琴の仕事もしている北斎を慕う安藤広重が安藤重右衛門といい、定火消同心で、町火消しの役もしていたとは。のんびりした人柄が微笑ましい。
    江戸では火事騒ぎが続き、付け火が上様のやったことという流言まで。
    自首して出たのは、う組の火消しの息子で、腕の良い櫛職人の竜吉。はたして?

    京都から来た謎の人物・桜井雪之丞も加わり…
    跡継ぎ・家慶の正室が京都出身なのですね。
    展開の予想が出来ないので新鮮でした。
    惣介の人の良さが救いになっています。

  • 設定が面白い。
    人並みはずれて嗅覚の優れたお侍さんがそれを
    いかして事件を解決に導いていく。
    中には、嗅覚はそれほど解決にかかわってないかな
    というものもあるけれど、主人公の人柄がいい。
    シリーズ1作目。
    この先も読んでいこうと思う。

  • シリーズ第一弾
    将軍家斉に気に入られた台所人・鮎川惣介とその親友御広敷の添番片桐隼人の活躍?
    三話の話が関連を持って続く?

  • セールで安かったから以外の理由もなく読み始めたのだが、思いの外面白くて良い拾い物した。台所人の鮎川惣介は後家人でありながら、将軍家斉に時々呼び出され て毒見なしの料理を振る舞い、愚痴の聞き役になるという不思議な関係。幼なじみの片桐隼人と共に、大奥がらみの事件に巻き込まれていく。謎が謎を呼ぶ事件、魅 力的で愛嬌のある登場人物たち、美味しそうな料理、と楽しみが多い。豆腐食べたい。和食の、特に出汁の話題は夜中に読むもんじゃないなとしみじみ思った。ただ 謎解き部分は伏線の張り方が独特でちょっと読みにくい。

  • L 包丁人侍事件帖1

    将軍家斉に可愛がられる料理御家人。大した役でもないのに料理の腕と異様に効く鼻で大活躍。
    やたら活躍しすぎて町方同心はなにやってるんだ!と突っ込みたくなるものの憎めないキャラが幸いしている。
    嫁や娘には頭が上がらず、職場では家斉の寵愛で御庭番扱い。更に町屋にも足を運び人情に厚い。少し広げすぎの感はあるが、文体にクセもなく読みやすい。
    料理人だけに料理素材の描写も多いがそれはいらないかな。

  • 1巻だけ読むと先を読もうかどうか迷うが、我慢して読むと(笑)、次から面白くなってくる。かっこよくない主人公がスルメのようで味わいがある。

  • 話としては好きな類なんですが、どうも文章がうまくないような・・・。
    料理人が事件を解決していくけど、ヒントが強引だったり、後から、「え?そう言う意味だった?」と感じるような、読んでてスッキリしない部分が多い。
    たぶん続編がありそうですが、別に読まなくてもいいかな、って感じ。

  • 料理描写は実に上手い。
    読んでいるだけで、目の前に料理がありありと浮かび、匂いや味も感じられそうなほど。
    しかし、料理描写が上手すぎて、心理描写や情景描写との差が激しい思えてしまった。
    登場人物は割に魅力的だと思うのだが、話の中で生かしきれていないような…。
    物語もありがちなところで落ち着いてしまっていたように思う。
    読み終わって思い出せるのが料理の場面だけというのはもったいない…。
    次巻以降でもっと人物や話も面白くなるのかも知れないという期待はある。

  • 太った料理人と、幼なじみの添番がかかわる事件簿。
    このシリーズ、脇役の口の悪い、智慧のまわる料理人@京男が妙に活き活きとでしゃばってきて魅力的。
    人物描写には舌を巻きます。

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著者プロフィール

三重県伊勢市生まれ。愛知教育大学教育学部教職科心理学教室卒業。高校時代より古典と日本史が好きで、特に江戸に興味を持つ。日本推理作家協会会員。三重県文化賞文化新人賞受賞。主な著作に「包丁人侍事件帖」シリーズほか、「大江戸いきもの草紙」シリーズや『芝の天吉捕物帳』『冷飯喰い 小熊十兵衛 開運指南』がある。

「2019年 『料理番 旅立ちの季節 新・包丁人侍事件帖(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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