- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784059007838
作品紹介・あらすじ
チベット仏教の精神的指導者ダライ・ラマの伝説的なロンドン講演録が、ついに文庫化。人間にとって、よい生き方・死に方とは何か?怒りや憎しみなどの感情をコントロールする方法とは?愛と慈悲を実際に身につける方法とは?これまでで最高の境地に達したといわれるダライ・ラマが、人間の真実を明らかにする。巻末に、ロンドンの聴衆とのあいだで交わされた刺激的な「質疑応答」を収録。
感想・レビュー・書評
-
本書は、1993年にロンドンで行われたダライ・ラマ十四世の「慈愛の力(The Power Of Compassion)」と題された法話をおさめたものです。
邦題である「人間はひとりでは生きられない」という文言からある種の誤解が発生すると思いますので、少し補足します。
この法話は、「人は一人で生きれるほど強くない」とか「他者の助けが必要だよ」といったことを扱っているものではありません。
この邦題は、「絶対なるものは存在しない。一切は相対的である。」「すべての物事には多数の局面が存在する。」といった基本的な考えから発生しているものであり、これを最も良く表現している言葉を本書から以下に抜粋します。
【本書抜粋 ダライ・ラマ十四世】
生まれながらにして、特に人類の一員として、私の利益は他者から独立したところにはない。
私の幸福は他者の幸福に依拠している。
したがって、しあわせそうな人々を目にしたときには、困難な立場に立つ人々を見たときよりも、自然に少ししあわせだと感じるのである。
---
この法話は、宗教的な知識に関係なく(私は無宗教です)、とてもわかり易い言葉で説かれています。
同時に、チベット仏教の教え(仏教一般の教え?)は、日本人にとても親和性が良い、と感じました。
古くから神仏習合が進んできた歴史ゆえかもしれません。
わかり易い言葉と親和性の良さからか、この法話の内容はとても素直に私の中に入って来ました。
決して難しいことを言うのではなく、日本人にとってはある意味当たり前のことばかり、と言っても良いかと思います。
しかしながら、その教えは深く、到達すべき最終地点はあまりにも高い。
すんなり入ってくるだけに、今の自分に照らし合わせながら読み進めると、今すぐにでも自分が消えてしまいたいほど恥ずかしい、と思いました。
だからこそ、出家してまで修行する方々がいらっしゃるのだと、思い至りました。
でも、私は出家する訳にはいきません。
恥ずかしい自分をも認めながら進んで行きたいと思います。
一方で、紛れもなく今・そこに存在するチベットの現実。
氏の考えにさらに触れてみたいと強く感じました。
【本書抜粋 ダライ・ラマ十四世】
すべての要因や関係がほんとうの本物、長く通用する真実の物を創り出せるか否かを決定するのは、日常生活を生きるわれわれ自身の態度にかかっている。
われわれの姿勢に大きく依拠している。
そして、心の要素である動機が事を決める鍵なのである。
---詳細をみるコメント0件をすべて表示