不屈の鉄十字エ-ス: 撃墜王エ-リッヒ・ハルトマンの半生 (学研M文庫 ト 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784059012047

感想・レビュー・書評

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  •  著者達は赤軍が「野蛮な赤の軍隊」のように書いているが、1941年6月22日に戦争が始めたのはドイツと同盟国と対独協力政権の軍隊だという視点がないらしい。そもそもロシア文学に相当な偏見があるので、第三帝国のイデオロギーと親和性がありそうだ。
     エーリヒ・ハルトマンはダイヤモンド章をヒトラーから授与される時にSSから拳銃を預けるように言われて拒否したそうだが、1944年7月20日付という非常に覚えやすい日にちに騎士十字章を授与されたフィリップ・フォン・ベーゼラーガー男爵が勲章を授与された時の写真をネットで見ると彼や他の将校は拳銃を携帯したままだった。どうやら「7月20日事件後はSSが将校の武器を預けないとヒトラーと会えない」というのは「例外」ではなかったかもしれない。ひょっとしたら最期までヒトラーに忠誠を誓っていた国防軍の軍人達による卑劣な弁明なのか?ハルトマンは同著者の他の本で傷痍軍人のフォン・シュタウフェンベルク伯爵が拳銃を使ってヒトラーを殺さなかったとバカにしているが、左手に残った三本の指で拳銃を抜いてヒトラーに向ける前に取り押さえられるのが筋だ。本当は「総統を殺そうと軍旗宣誓を破った貴族出の将校共」を軽蔑していたのだろう。
     ハルトマンは「零時」を迎えた時の最終階級は少佐なので働く必要がないのに、まだ捕虜扱いされていた時に食堂で働いていたと分かる個所がある。戦犯として有罪判決を受けてから「将校として労働を拒否する」と「主張」していたという人物にしては不可解だ。そもそもソ連の捕虜収容所で食堂という「超特権的な」場所で働いていたというのは実はこの男は一時期、反ファシスト学校に行った反ファシストだった時期があるのではないか?同じように類推するのは、この男はスメルシュの将校に捕虜取り扱いの書類を見せてもらったとの事だが、ロシア語が話せると「スパイ」と見做されるのに「ドイツ・ファシストの将校」がロシア語でスメルシュの将校に書類を見せてほしいと頼むと射殺されるのが筋だ。よくいってドイツ軍の捕虜になったスメルシュの将校から捕獲した書類を読んだか、あるいは反ファシスト学校で何かの弾みで書類を読む機会があったのか。
     「ブランデンブルク隊員の手記」にハルトマンの伝記と重なるようなラーゲリでの戦友達を紹介されていたが、終生ヒトラーを崇拝していたハヨ・ヘルマン大佐の名前があって上官格だそうだ。しかしハルトマンの伝記には出て来ないのはヘルマンのイデオロギーが絡むのだろう。ドイツ連邦空軍の将校が「実はナチでした」では軍歴を重ねられないだろうし、DDRから「復讐主義者のナチ」だと攻撃されてしまう。またスヴェルドロフ州にもいたとあるのに、ハルトマンの伝記には出て来ないのは不可解だ。
     こう思うとエーリヒ・ハルトマンは「不屈の英雄」どころかナイツェルの「兵士というもの」の表現を借りれば「グロテスクなまでに誇張されたパイロットによる報告がどこまで真実なのか」と疑ってしまうし「自分の成功を誇張する行為で札つきである」男のように見えてくる。実はハルトマンの「輝かしい戦果」なるものはエルンスト・バルクマンの架空の「戦果」みたいに丸っきりのフィクションか部下の戦果を横取りして「自分の戦果」にしたのか。ハルトマンの容姿が第三帝国が求める「アーリア人」なので「ボリシェヴィキに率いられたスラヴ・アジアの野蛮人と戦う英雄」にふさわしくダイヤモンド章を貰うまでに至ったのか。ハルトマンが連邦空軍に入隊する時に大尉で入隊するように求めたという政治家に取り入っていた「臆病者」の将校が出て来るのは本当のところはハルトマンの正体を知っているか見抜いたか、あるいはハルトマンの国民社会主義イデオロギーを口実に入隊を拒否しようとしていたのかもしれない。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    某アニメの影響で名前は知っていたのだが、実際にどのような人物なのかはこの本を読むまで全く知らなかった。そして、この本を読んだ感想は物語の主人公みたいな人が現実に存在するのだなと感じた。
    意外だったのは初陣と初撃破が1942年の終わりに近い時期だったことだ。世界一の撃墜数を記録に持っているのだからもっと長期間に活動している人だと思っていたので驚いた。
    それと『帽子事件』に関しては読んでいて思わず笑ってしまったよ。

  • 前人未踏の352機撃墜のエース・ハルトマンの評伝。

    期待していなかったのだが読むのが止まらなくなった。もっと早めに読むべきだった。
    読みだして大時代的な言い回し、もうちょっと客観的に書けよと宗教書かと思う著者の大げさな言い回しがあったが、内容が良いので気にならなくなった。

    彼のナチ・ドイツ空軍時代のお話が前半にあり、彼の空戦テクニックが具体的に説明してある。豊富なエピソードが実に興味深い。後半は、戦後ロシアに抑留されロシア側につくように徹底的に心理的に追い詰めようとするが、不屈の精神ではねのける。戦後10年後、ようやくドイツに戻れたが、新空軍に復帰するも、もはや平時の軍隊組織は彼の奔放なで頑固な性格には合わず、やっかみもあり、孤立してしまうのだった。

    面白いと思ったエピソード。
    ロシア軍は、数百機を撃ち落としたハルトマンに賞金をかけるが、ロシア兵は彼の機の黒いトレードマークを見ると逃げ出してしまう。撃墜数が稼げなくなったので、ハルトマンはトレードマークを消すことにした。ロシア機はようやく逃げ出さないで向かってくるようになったと。

  • 既に“古典”という価値を備えている、ルフトワッフェ(独空軍)のエースパイロットの物語である。戦時の事も興味深いが、主人公ハルトマンが辿った過酷な戦後の話しが凄い…

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