- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784059020509
感想・レビュー・書評
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失礼と雑さを承知で。
11世紀版「割とエリートだったのに、ブラック味を帯びてきた職場や人間関係に疲れたのか知らんけど、突発的に23歳で退職。家も家族も捨てて、異国を旅した時の記録や、迷いや悲しみの感情含め思った事をわかりやすく端的な言葉で投稿し続けて、70歳すぎで天寿を全うしたインフルエンサーの書籍の解説本」というのが、10年ぶりに再読した今回の感想。
人はいつの時代でも変わらないんだなあ、と、しみじみと親しみすら感じると同時に。
上記は私の偏った視点からなので誤解があるかもしれないので。
より丁寧に概要を書き直すと。
平安末期から鎌倉初期の源平動乱期を生きた僧侶にして歌人だった西行。
彼の個人歌集「山家集」を、昭和の文豪・井上靖が、丁寧に現代語訳するだけでなく。
西行の心に多大な影響を及ぼしたと思われる、当時の都人からすれば充分な異国であった陸奥の地を統べた豪族・奥州藤原氏一族の栄枯盛衰と独特な死生観や、源平の血なまぐさい戦いと多くの死、かつての君主だった崇徳院のあまりに不遇な人生やその最後の地を辿った軌跡などを解説しながら、謎に包まれた人生の断片を静謐かつ幻想的な文体で綴った作品です。
帝やその側近からの覚えめでたく、新進気鋭の歌人としても頭角を現していたエリート青年武士・佐藤義清。彼は23歳で謎の出家を遂げる。
以来、大寺院に属すわけでもなく、孤独に隠遁と放浪の生活を続け、70歳余りで死ぬまでに、たくさんの歌を残した。
貴族的な技巧に縛られない、心の内をストレートに描く実直質実な作品は、一世を風靡し、後世に多大な影響を与える…。
西行の人生はとことん謎に包まれているけれど、その飾り気のない言葉は、世の無常や人間の迷いなどを率直に綴っていて、約1000年後の今でも、解説が要らないくらい、胸に飛び込んできます。
井上靖の、不確かなことは言わないように冷静に努めながらも、どことなくロマンチックな淡い夢想を感じさせる解説もとても素敵。
「ねがはくは 花のもとにて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」
「かかるよに 影もかはらず 澄む月を 見るわが身さへ うらめしきかな」
「風になびく 富士のけぶりの 空に消えて 行方も知らぬ わが思ひかな」
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松尾芭蕉が、この人に憧れ、「奥の細道」の旅に出た気持ちが改めてよく分かったような気がします。
平安末期の、戦乱と災害によって荒廃の極みにあった世に生きた人。今のこの世をどう見るでしょう。 -
まあまあな充実感。痒い所には手は届いていないけどこんな感じか?
西行と言えば 願わくば~ の歌しか知らなかったので、いい勉強になりました。 聖人とも俗人とも言えない感じが伝わってきた -
「年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山」
がいいですね。 -
「地獄絵を見て」の歌が特に印象的。
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絶版になっていたのですが、どうしても欲しくってコレクター価格で入手しました。
復刊になったら、また絶対買います。保存用として(笑)
西行初心者の私でも浸れる本です。 -
ちょっと西行を好きになりそう。