- 本 ・マンガ
- / ISBN・EAN: 9784061086425
感想・レビュー・書評
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町の古本屋に寄ると、手塚治虫漫画全集が100冊ほど置いてあった。とりあえず一冊だけ抜いて持って帰る。手塚治虫がまだ健在で、一冊一冊にあとがきを書いたどころか、下手をすると原本までに手を入れたころの1980年発行の本である。
「新世界ルルー」は手塚のSF三部作(「ロストワールド」「メトロポリス」「来るべき世界」)と比べると、あまり有名ではない。話も、最初こそはタイムカプセルに閉じ込められた男が20年後に生還していた。何故か。という推理ものから始まって、そのあと見事に「モンテクリスト伯」の復習譚の焼き直しになり、後半はパラレルワールドものになってしまった。当時はともかく、現代感覚で見ると新味はない(←これは物凄く厳しい見方であることは承知している)。仕事が増え始めた手塚のやっつけ仕事の感は否めない。
ところが、そういう話でも「発見」が幾つもあるのが、手塚治虫の凄いところなのである。
一つは、「ふしぎな少年」の時を止める、というアイデアがここで初めて登場したという事。
一つは、パラレルワールドの人たちの造形が極めて斬新になっている。頭に口があったり、髪に窓がついていたり、最終的にその辺りの説明はしていないので、「広がり」を持った話になっている。
一つは、p71の絵にあるように、異次元空間に入る描写が坂口尚のような曲線を使って、いかにも上も下も無い、時間も無いような描写をしていること。上手いと思う。
また、昭和26年の作品なのだけど、それから20年後東京を予言する都市空間を既にさらさらと書いている。細かいところをいえば、このあと十数年後の東京を予言しているとも言えるだろう。
昭和20年代の手塚治虫は、改めて凄い。これから古本屋から少しづつ買ってこようと思う。
2014年5月24日読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロックが新世界ルルーで手に入れた時間を止める能力を使い、不思議な活躍をするファンタジー。後の「ふしぎな少年」のルーツになった名作です。ドン・ナ・モンデス、コンチック・ショオ公爵等、登場人物のネーミングセンスがさすが。新世界ルルーの斬新な描写が今も色褪せていません。
新世界ルルーの哲学者コッポポッコ氏のみ、他の新世界ルルー人と外見が違いすぎるのはなぜだろう…。 -
“「ま あなたは時間をとめたのね
どうりで急に消えたように見えたわ」
「そりゃいったいどういう意味だい!!」
「この世界では 時間を自由にすることができるのよ
思っただけで時間をとめたりはやめたりできるの」”[P.79_新世界ルルー]
「新世界ルルー」
「黄金都市」 -
この本を最初に読んだ時、子供心に「時間」の不思議を考えました。
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