- 本 ・マンガ
- / ISBN・EAN: 9784061087798
感想・レビュー・書評
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『ゴッドファーザーの息子』『ふたりでリンゲル・ロックを』『ブタのヘソのセレナーデ』……。
美しいタイトルだと思いませんか。僕ははじめの二編に小学生の頃から惚れ込んでます。こんな友情を築きたい。こんな絆に恵まれたいと、強く思いますね。 -
(内容)
漫画ばかり描いていた少年時代。
極道の親分の息子と手塚少年との間に奇妙な友情が芽生えた。
自伝的名作の表題作「ゴッドファーザーの息子」ほか、くずの葉伝説をモチーフに、人間とキツネの心が通いあう感動作「悪右衛門」など、情感あふれる7作品を収録。
(ブック・カヴァーより)
(感想)
手塚治虫名作集の1巻目です。
収録されたのは・・・
ゴッドファーザーの息子 (昭和48年1月号・別冊少年ジャンプ)
ZEPHYRUS (昭和46年5月23日号・週刊少年サンデー)
1985への出発 (昭和60年7月号・月刊少年ジャンプ)
紙の砦 (昭和49年9月30日号・週刊少年キング)
すきっ腹のブルース (昭和50年1月1日号・週刊少年キング)
いないいないばあ (昭和56年1月号・月刊少年ジャンプ)
悪右衛門 (昭和48年9月号・別冊少年ジャンプ)
の7作です。 ( )は、掲載された雑誌。
表題作は、手塚さんの少年時代をもとにした、フィクション(だよね?)ですが、極道の息子が、手塚の漫画を心の支えにする一方で、手塚を苦手なマラソンで十等にし、自信を持たせる・・といった具合に、対等の関係にあります。
友情って、こういう関係が一番理想的だよな〜。片方があげるばっかりじゃない関係。
ただ、この作品は、そこまで印象には残ってないです。
"へ〜"といった感じ。
で、"ZEPHYRUS"や"1985への出発"なんかは、反戦的な作品ですが、後者で提示されている未来って、悲しいけど当たってますね。
モデルガンか、ゲームにおけるヴァーチャル・リアリティの世界かどうかっていう差はありますが。
"紙の砦"って、以前観た、宝塚を扱ったドラマで、藤原紀香さんが、空襲か何かで顔にひどい怪我を負う、という場面があったと思うんですが、それを思い出しました(作られたのは、こっちの漫画の方が古いけど)
"すきっ腹のブルース"は、空腹で追い詰められた人間が、結局何を選ぶのか、という根本的な話。
虚しき愛・・ってな感じです。
"いないいないばあ"は、座敷わらしをテーマにした、幻想的な作品。
最後の"悪右衛門"に関して、モチーフになった"くずの葉伝説"について少し書きます。
陰陽師として有名な安倍晴明の父・保名が、キツネ狩りをしていた武士団と遭遇、キツネを庇ったため、傷を負います。
この保名を看病したのが、"くずの葉"という名前の女性。
実は、人間に化けたキツネなのですが、保名は、くずの葉と愛し合うようになり、子供(安倍晴明)が生まれます。
ところが、ある日、くずの葉は、正体の尻尾を出してしまい、それを晴明に見られてしまいます。
このため、自分が、キツネであることがバレるのを恐れたくずの葉は、涙ながらに、俳句を残して去っていった、というものです。
手塚さんは、このくずの葉を、キツネ狩りをしていた武士の妻(人間)とし、キツネがその姿に化けたものとして、キツネが人の子を産むという矛盾を解決しています。(このため、作品中、晴明は、実際には、保名ではない、ということになります)
こういう伝説を、無理ない話にさらりと仕上げるあたりにも、凄さを感じます。 -
表題作に限らず、「紙の砦」や「すきっ腹ブルース」といった自伝的名作を多く収録した、集英社の手塚治虫名作集1冊目。正直、この名作集1冊目は、収録されている1話1話ごとに泣けます。それほどの濃さです。手塚治虫ファンであってもなくても、一家に一冊レベルだと僕は思っています。取りあえず必見!
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レビュー書いておいていきなりですがこの作品を表現する言葉を持ちません。
話の流れや構成としては、「よくある話」に過ぎないといえば過ぎないんだけど、たんなるストーリー展開を超えて、ひとコマひとコマの台詞や筆致に、滲み出る作者の想いや当時の時代背景、人間同士の絆、深い人間愛が満ちています。内容はとにかく、読んでみてとしか言えません。くれぐれもこの本は、電車や喫茶店の中など、人目のあるところでは読まないほうがいいかも。
著者プロフィール
手塚治虫の作品





