哲学のすすめ (講談社現代新書)

  • 講談社 (1966年1月16日発売)
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  • 本 ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061154667

作品紹介・あらすじ

人間はなんのために生きているのだろう?どうしたら幸福になれるのだろうか?哲学はいったいどんな役に立つのだろう?哲学と科学はどうちがうのか?哲学はいつの時代も変らないのだろうか?本書は、こんな疑問にやさしく答えながら、「考える」ことの重要さを説き、生きる上の原理としての哲学を深めた、よりよく生きるためのユニークな哲学入門である。――著者のことば

哲学というものは、その本質上、文章では説明しにくいことが多く、そのため用語も必要以上に難解になり、わかりにくくなる傾向があるが、著者は、日本の哲学書にありがちな特殊な専門語をできるだけ使わずに、ごく平明な文章で説明することに努めている。哲学的な「考え方」を説明し、哲学と科学とはどう違うかというような根本問題を説いている。表現はやさしくできているが、扱われている問題は高度に哲学的である。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の岩崎武雄氏(1913~76年)は、ドイツ観念論を専門とし、1970年代に日本哲学会会長を務めた哲学者。
    本書は、「哲学とは何か」を語った、1966年発刊の50年に亘るロングセラーである。
    著者は本書で、哲学とはひとことで言えば「いかにあるべきか」という価値判断を問題とすることと言い、以下のように敷衍している。
    ◆科学は従来哲学の一部であったが、近世になって、「なぜ」という問いを止めて、ただ「いかに」と問うのみに転換したときから発展を遂げた。科学は「いかにあるか」という事実を問い、哲学は「いかにあるべきか」という価値を問う。哲学と科学は補い合うものだが、両者が対立するのは、哲学が本来の領域を越えようとし、科学が自らを万能と考えようとするときである。
    ◆哲学は、何を幸福と考えるかにおいて個人生活を規定し、いかなる政治的・社会的見解を持つかによって社会生活を規定する。
    ◆哲学も科学と同様に、古い理論の欠陥を補うことを繰り返して、より客観性の高い理論とすることが出来る。
    ◆古代・中世には、人間以上のものに絶対的な価値判断基準を求めていた(形而上学的世界観)が、近世において、人間は人間以上のもの持たなくなった。人間以上のものを持たなくなった現代においては、ひとりひとりの人間の生命こそが絶対的な価値基準であり、そのかけがえのなさが、人間というものは全て尊重されるべきだ(基本的人権の尊重)という価値判断を生み出す。そして、そうした考え方こそが哲学の客観性を担保する。
    歴史上の哲学者の思想を引用しつつも、専門用語は極力使わずに平易な文章で説明されており、哲学的な考え方を理解する入門書として、非常に有益な一冊である。

  • 平易な言葉で哲学とは何か、哲学の必要性を説く。
    軽い文体で読みやすく中高生におすすめしたい好著。

  • 古すぎるから現代には当てはまらない部分もチラホラ

  • 大学の哲学の一般教養の宿題を書くのに買った本。初めて読んだ哲学の本で、なんか気になって、捨てずにずっと持っていた一冊。そして、バーコードが付いていない驚き。

  • #哲学のすすめ #岩崎武雄 著
    
    これほど、平易でグイグイ読ませる哲学書は僕は知らない。哲学特有の語彙などは一切使わず、終始やさしく語りかけるように書かれている。しかし、内容は深い。生きるとは、幸福とは、といった根本原理を一緒に考えることができる。哲学がいかに身近な存在であるかを肌で感じることができる良書。半世紀前の著書だが、まったく色あせていない。
    
    “直接役に立つもの以上にほんとうに役に立つ根本的なものが、哲学とか思想というものではないかと思うのです。”
    
    “価値判断はけっして科学的知識から導かれるもんおではなく、したがってわれわれが価値判断を行わずに行為することができない以上、われわれはどうしても哲学を必要とする。”
    
    “われわれが本当に幸福をめざして生きようとするなら、われわれは幸福がなんであるかを真剣に考えねばなりません。いかに生きるべきかについて哲学しなければならないのです。無反省な生活をつづけて、あとでその生活のむなしさに気が付いても、もうておくれなのです。”
    
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  • 2017/11/20 19:07:09

  • 今まで、科学方面ばかりの本を読んでいたが、その中で科学とは正反対の関係という記述が多くみられた哲学について興味が湧いたので読んでみた。
    哲学を身近に感じることができた。
    古い本、そして哲学という難解な学門(っぽい)内容にも関わらず読みやすい本であった。
    科学と哲学は補完する関係であり、目的を決めるのが哲学でその目的を達成する為に科学を用いる。
    どちらも欠けてはならない。
    また、「幸福とはなにか」ということについて考えてみたいと感じた。

    一通り読み終えてやはり学門的な哲学というものは必要かという疑問が残った。
    もちろん、一人一人の「人生観」を考えるという意味での哲学は必要だ。また、現代ではテレビやネットの普及により、それらを考えると内省する時間が減っているという事実は危惧しなければならない。
    しかし、考えること全てが哲学だというのは強引すぎるのではないだろうか。全体を通して、科学的学問と比べて哲学が必要であるという主張が多く、肝心の哲学自体がどのような学問なのかという記述少ないように思えた。

  • 哲学と科学は決して相反するものではない。

    それは哲学を目的、科学を手段として考えると分かりやすい。「これはこうあるべきだ」とか「こうしたい」という自身の価値判断である目的があったとしても、その手段が間違っている、あるいは考慮しなければ意味がないし、逆に事実関係から導き出した手段が確立されていたとしても、目的がなければそれを利用することはできないだろうし、何のための手段なのかもよく分からなくなってしまうだろう。

    哲学(目的)があるから科学(手段)があり、その逆もしかりである。

  • 哲学を科学と対比してその大切さを説く。

    哲学は価値判断の基になるが、科学はならない。
    哲学はよく言われる「なぜ」の学問に対し、
    科学は「いかにあるか」に重点を置いている学問だから。
    いかに科学を信頼があっても、
    価値判断の時において哲学は否定できないと最後締めくくる。

    ただ、論点のすり替えになってしまうが、
    自分の周りで哲学の分野に冷笑的な人は、
    何も哲学それ自体を否定しているのではなく
    答えのない物を追及して時間をかけているその姿勢に
    意味を見いだせないと感じているんだと思う。

  • 本とは無縁の友人から勧めらて読んだ。

    とにかく読みやすい。わかりやすい。

    哲学の迷宮の門を開けてくれた本。迷宮内を今も迷走中。

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著者プロフィール

1913年東京都に生れる。1936年東京大学文学部哲学科卒業。1956年東京大学文学部教授。1974年東京大学名誉教授。1976年死去。『哲学のすすめ』講談社現代新書、1966年)、『西洋哲学史 再訂版』(有斐閣、1976年)、『カント 新装版』(勁草書房、1996年)など。
解説:坂部 恵
1936年神奈川県に生れる。1959年東京大学文学部哲学科卒業。1985年東京大学文学部教授。東京大学名誉教授。2009年死去。『仮面の解釈学』(東京大学出版会、1976年 新装版2009年)、『ヨーロッパ精神史入門―カロリング・ルネサンスの残光』(岩波書店、1997年)、『坂部恵集』(全5巻、岩波書店、2006-07年)など。
解説:納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授。哲学博士。主要著書に、『ソフィストと哲学者の間――プラトン『ソフィスト』を読む』(名古屋大学出版会、2002年)、『ソフィストとは誰か?』(人文書院、2006年/ちくま学芸文庫、2015年)、『ギリシア哲学史』(筑摩書房、2021年)など多数。

「2023年 『カントからヘーゲルへ 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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