- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061155350
作品紹介・あらすじ
日蓮が生きた貴族時代から武士団社会への過渡期は、強者が弱者をむさぼる混沌の時代であった。日蓮の目にそれは、末法の現われと映じ、末法であればこそ法華経に帰依し、武力に代わる仏法をもって、世の道理とせねばならぬと説いたのであった。本書は、法難の連続であった生涯を跡づけながら、その法華経への絶対帰依の思想を、現代との連関で明らかにしてゆく。宗教社会学者の手によって公平な場におかれ、なお魅力あふれる日蓮像がここにある。
日蓮の思想の系譜――日蓮の考え方を知るうえにおいて、心得ておかねばならぬことは、その思想の系譜に2つのものがあることである。1つは、古来外相承と呼ばれているものである。他の1つは、内相承と呼ばれているものである。外相承というのは、インドの釈尊、中国の天台、日本の伝教および日蓮という系譜であって、これを日蓮自身の言葉によれば、三国四師というのである。これに対して内相承というのは、釈尊から本化地涌の菩薩の上首、上行を媒介として、直ちに日蓮にいたるものである。事実日蓮は、佐渡へ流される前は天台沙門日蓮と称していた。佐渡に流されて以後は、本朝沙門日蓮と記すように変ってきている。――本書より
感想・レビュー・書評
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タイトルが示すとおり、日蓮の生涯と思想についてコンパクトに解説している入門書です。
日蓮の生涯の解説につづいて、『立正安国論』をはじめとする日蓮の著書についての簡潔な説明があり、さらに日蓮の思想そのものに踏み込んでいきます。また、日蓮の思想が宮沢賢治に大きな影響をあたえたことについても触れられ、現代的な観点から日蓮の思想を見なおすことの重要性が語られています。
古い本ではあるものの、入門書らしい構成になっており、日蓮について基本的なことを知りたいという読者にとっては有益な手引きとなるのではないかと思います。
本書の「はじめに」で著者は、迹化他方来の菩薩と本化地涌の菩薩にかんする日蓮の考えを紹介し、「前者は、仏教を観念的に把えようとしているのに対し、後者は、仏教を実践的に把えようとしている人間類型である」と述べています。また最終章では、「日蓮の思想は、だから人間中心の思想であるといえる」と述べられています。ただ、これらの「実践的」「人間中心」といったことばの中身についての具体的な説明は欠如しており、著者が日蓮の思想をどのように解釈史評価しているのかということは、本書の叙述からは十分に見えてきません。入門書なので立ち入った説明は差し控えたということなのかもしれませんが、もやもやした気分にさせられてしまいます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2016.02.29読了)(2002.01.11購入)(1991.07.12第36刷)
副題「その生涯と思想」
2001年にNHK大河ドラマで「時宗」が放映されたとき、蒙古襲来との関連で、日蓮に興味をもって、日蓮関連の本を読まねば、と思ったのですが、そのままになってしまいました。
2016年1月にEテレの「100分de名著」で内村鑑三の『代表的日本人』が取り上げられ、その中に日蓮が出てきました。また、2月に近所の高齢者の方が亡くなったので、通夜に出席したら、日蓮宗で、お坊さんの読経に合わせて信者の方々も唱和しているのを見て、強烈な印象を受けました。
というわけで、この機会に「日蓮 その生涯と思想」を読んでしまうことにしました。
副題に「その生涯と思想」とあるように、1章で、日蓮の生涯を簡潔に述べています。
日蓮といえば、法華経ですので、2章は、日蓮と法華経について、3章から5章までは、日蓮の著作である「立正安国論」「開目鈔」「観心本尊鈔」「撰時鈔」「報恩鈔」について、その内容を紹介しています。6章は、南無妙法蓮華経について。7章は、宮沢賢治など、現代に生きている日蓮の思想について。
この本を読めば、日蓮について一通りのことがわかるようになっています。
(まあ、一度読んだだけでは、なかなか分かったとは言い切れませんが、必要になったら読み直せばいいかな、と思います。)
【目次】
はじめに
1 日蓮の生涯
2 法華経と日蓮
3 立正安国論とその真意
4 開目鈔と観心本尊鈔―われは釈尊の直弟子
5 身延の山中より―撰時鈔と報恩鈔
6 日蓮の信念
7 現代に生きる日蓮
法華経・日蓮関係年表
●十宗(16頁)
奈良朝時代の六宗―俱舎宗、成実宗、三論宗、法相宗、華厳宗、律宗、この六宗に加うるに、平安町時代になってから天台と真言の二つの宗が起こされ、鎌倉期にはいって念仏と禅が起こっているから、じつに十宗が並んで繁栄していたわけである。
●生死解脱(45頁)
大を恐れず、小を侮らず、得意のときにも高ぶらず、失意のときにも焦らない、真の意味における生死解脱の姿ではないであろうか。
●大衆部仏教(52頁)
大衆部仏教とは、むかしは大乗仏教と呼んでいたもので、またこれを北伝仏教とも呼ぶ。これはインドで起こった仏教が、シナ、韓国を伝わり、日本にも流通しているものである。ベトナムの仏教の主流も中国から伝わったもので、大衆部仏教の流れをくんでいる。
これに対して小乗仏教と呼ばれていたものが、上座部仏教で、これは南伝仏教とも称されている。現在はセイロン(スリランカ)、ビルマ(ミャンマー)、タイ等の諸国で行われている。
●救いの道(57頁)
人生の苦悩は真理に対する無知と、小さな自己への執着から生ずる。これを元品の無明というが、これを打破することによって、人はいっさいの不安や恐怖から解放される。
●宇宙の真理(64頁)
目の前の小さなことの中に、宇宙の真理が現れている。宇宙の真理というような大きなことも、目前の現象のほかにはないのである
●南無妙法蓮華経(159頁)
南無妙法蓮華経という場合の南無は、インドの言葉のナモウという音を漢字で表現したものである。ナモウということの意味は、絶対に帰依するという意味である。だから南無妙法蓮華経といえば、妙法蓮華経に帰依するという意味になる。
●即是道場(169頁)
法華経を信ずる者にとってはその人の居住するところがそのまま道場でなければならぬということである。すなわち、生活の場がそのまま修行の道場であるということである。
☆関連図書(既読)
「お経の話」渡辺照宏著、岩波新書、1967.06.20
「釈尊物語」ひろさちや著、平凡社新書、1976.05.08
「ブッダ『真理のことば』」佐々木閑著、NHK出版、2011.09.01
「ブッダ『最期のことば』」佐々木閑著、NHK出版、2015.04.01
「般若心経」佐々木閑著、NHK出版、2013.01.01
☆関連図書(既読)
「蒙古襲来(上)」山田智彦著、角川文庫、1991.06.10
「蒙古襲来(中)」山田智彦著、角川文庫、1991.07.10
「蒙古襲来(下)」山田智彦著、角川文庫、1991.08.10
「蒙古襲来(上)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古襲来(下)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古来たる(上)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「蒙古来たる(下)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「時宗 巻の壱 乱星」高橋克彦著、日本放送出版協会、2000.11.20
「時宗 巻の弐 連星」高橋克彦著、日本放送出版協会、2000.12.25
「時宗 巻の参 震星」高橋克彦著、日本放送出版協会、2001.03.30
「時宗 巻の四 戦星」高橋克彦著、日本放送出版協会、2001.07.05
「「蒙古襲来絵詞」を読む」大倉隆二著、海鳥社、2007.01.15
「青嵐の譜」天野純希著、集英社、2009.08.10
(2016年3月2日・記)
内容紹介(amazon)
日蓮が生きた貴族時代から武士団社会への過渡期は、強者が弱者をむさぼる混沌の時代であった。日蓮の目にそれは、末法の現われと映じ、末法であればこそ法華経に帰依し、武力に代わる仏法をもって、世の道理とせねばならぬと説いたのであった。本書は、法難の連続であった生涯を跡づけながら、その法華経への絶対帰依の思想を、現代との連関で明らかにしてゆく。宗教社会学者の手によって公平な場におかれ、なお魅力あふれる日蓮像がここにある。 -
20年ほど前に「文明論」授業の参考に購入した本。iPad用に自炊したのを機に再読。
宗教の話をそれに携わる人から聞く場合によくあるように、肝心なポイントでの客観性欠如に苛立ったりすることの多い本。 -
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