美しい日本の私 (講談社現代新書)

著者 :
制作 : エドワード.G・サイデンステッカ- 
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (74ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061155800

感想・レビュー・書評

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  • 頭から読むと日本語のスピーチ文、おしりから読むとその英訳。川端康成の小説を読むときのような美しさがスピーチにも感じられました。日本語の文章がどういうふうに英訳されているのかが気になり、一行ずつ書き写しました。わたしは旧仮名遣いが好きなのですが、英語でその良さを伝えるのは難しいのと、和歌もやはり日本語のほうが奥深くて良いなぁと思いました。むつかしくてよく分からない日本語の語彙は英文で理解しました。言葉も内容も厳選されているだけに、心に残ります。

    明恵上人の、

    雲を出でて我にともなふ冬の月
    風や身にしむ雪や冷めたき

    という歌を初めて知りました。「雲に入ったり雲を出たりして、禅堂に行き帰りする我の足もとを明るくしてくれ、狼の吼え声もこはいと感じさせないでくれる「冬の月」よ、風が身にしみないか、雪が冷めたくないか。」という内容です。

    「自然、そして人間にたいする、あたたかく、深い、こまやかな思ひやりの歌として、しみじみとやさしい日本人の心の歌として」この歌を人に書いてあげる川端康成の心根の優しさも感じずにはいられません。

    そして、「雪月花の時、最も友を思ふ」という詩語を挙げ、「雪の美しいのを見るにつけ、月の美しいのを見るにつけ、つまり、四季折り折りの美に、自分が触れ目覚める時、美にめぐりあふ幸ひを得た時には、親しい友が切に思はれ、このよろこびを共にしたいと願ふ、つまり、美の感動が人なつかしい思ひやりを強く誘ひ出すのです。」と述べています。茶道もそれが根本の心であり、「茶会はその「感会」、よい時によい友どちが集ふよい会なのであります。」

    道元や良寛の歌、一休さんの二度の自殺未遂、達磨大師の「面壁九年」、日本の庭園や「枯山水」の「わび・さび」、茶室の床に飾る一輪の花のつぼみ、日本最古の短編小説『伊勢物語』と『源氏物語』と『枕草子』が、その後の日本文学に「影響をおよぼすといふよりも、支配した」こと、平安の勅撰和歌集の『古今集』は小野小町、鎌倉初期の『新古今集』は道元禅師や明恵上人の時代であり、西行法師は「平安と鎌倉とをつなぐ代表的歌人」であったこと、川端康成の作品はしばしば「虚無」と評されるが、ニヒリズムという言葉は当てはまらないことなど。

    彼の作品は禅の心に通じているという理解でいいのでしょうか。今後彼の作品を読むときはそれを念頭において読んでみようと思います。

  • 古典の話が多い。英訳部分は途中までで(読過の)匙を投げた。図書館本。

  • ・春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり/道元

    ・雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪や冷めたき/明恵上人

    ・天くもり月くらきに花宮殿に入りて座禅す。やうやく中夜にいたりて、出観の後、峰の房より下房へ帰る時、月雲間より出でて、光り雪にかがやく。狼の谷に吼ゆるも、月を友として、いと恐ろしからず。下房へ入りて後、また立ち出でたれば、月また曇りにけり。かくしつつ後夜の鐘の音聞こゆれば、また峰の房へのぼるに、月もまた雲より出でて道を送る。峰にいたりて禅堂に入らんとする時、月また雲を追ひ来て、向ふの峰にかくれんとするよそほひ、人しれず月の我にともなふかと見ゆれば、この歌。

    ・山の端にわれも入りなむ月も入れ夜な夜なごとにまた友とせむ

    ・隈もなく澄める心の輝けば我が光とや月思ふらむ

    ・形見とて何か残さん春は花山ほととぎす秋はもみぢ葉

    ・霞立つ永き春日を子供らと手毬つきつつこの日暮らしつ

    ・西行法師に来りて物語りして言はく、我が歌を読むは遥かに尋常に異なり。花、ほととぎす、月、雪、すべて万物の興に向ひても、およそあらゆる相これ虚妄なること、眼に遮り、耳に満てり。また読みだすところの言句は皆これ真言にあらずや。花を読むとも実に花と思ふことなく、月を詠ずれども実に月とも思はず。ただこの如くして、縁に随ひ、興に随ひ、読みおくところなり。紅虹たなびければ虚空いろどれるに似たり。白日かがやければ虚空明かなるに似たり。しかれども、虚空は本明かなるものにあらず。また、色どれるにもあらず。我またこの虚空の如くなる心の上において、種々の風情を彩るといへども更に証跡なし。この歌即ち是れ如来の真の形体なり。

    ・日本、あるひは東洋の「虚空」、無はここにも言ひあてられてゐます。私の作品を虚無と言ふ評家がありますが、西洋流のニヒリズムといふ言葉はあてはまりません。心の根本がちがふと思ってゐます。道元の四季の歌も「本来の面目」と題されてをりますが、四季の美を歌ひながら、実は強く禅に通じたものでせう。

  • 川端康成がノーベル賞受賞時におこなったスピーチである。

  • 日本人として初めてノーベル文学賞を受賞した時の記念公演をまとめた、新書で36ページという短い文書。この中に、日本文化の特徴が分かりやすくまとめられている。著者が強調するのは、「自然との一体感」。日本人にとって「死」とは「自然への回帰」であり、「無」という言葉の背後にも、無限の宇宙の広がりを見ると説く。

  • 古今東西の美術に博識の矢代幸雄博士も「日本美術の特質」の一つを「雪月花の時、最も友を思ふ。」という詩語に約められるとしてゐます。

  • これまで読んでなかったのですが,ちょっとしたきっかけで手に取りました。講談社現代新書の一冊ですが,和文とサイデンステッカーの英訳が併載されています。「雪国」や「伊豆の踊子」の文章が心に染みいり,好きな作家の一人ですが,この「美しい日本の私」は,私には難しい。サイデンステッカーの英訳(苦労した英訳だと思う)も,同じように簡単ではないのですが,英訳を見て,川端の文章がどう解釈されうるのかを再認識したりして,短い本なのに,3度読んでも,まだ,明らかじゃない感じがしてます。

  • 「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷やしかりけり」
    日本人でよかったと思える本。

    英訳が載っているのがまた良い所であると感じました。

  • 川端康成がノーベル文学賞を受賞したときのスピーチの日本語と英語訳。日本の美しさの原点がたくさん。こういう感性を日本として大切にしたいもの。

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著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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