生きることと考えること (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061156401

作品紹介・あらすじ

人間は経験をはなれては存在しえない。そして、ほんとうによく生きるには経験を未来に向かって開かねばならぬ。本書は、自己の生い立ちから青春時代、パリでの感覚の目ざめと思想の深まり、さらには独自の「経験」の思想を、質問に答えて真摯に語ったユニークな精神史である。

読者の皆さんへ――ここには、1つの精神の歴史が物語られています。森有正という、日本の思想界でもきわめてユニークな地位を占める1人の哲学者が自己を形成するにいたるまでのプロセスが、つつみかくさず物語られているのです。森氏は長い間、異国でのひとりぼっちの生活の中にあって、いやおうなしにすべてのできあいの観念を払いすて、自分自身の経験の上に思想を築き上げる道をえらばねばなりませんでした。観念をとおすことなく、自分の感覚に直接はいってくる事象をそのままうけとめ、そこから出発しておのずから1つの言葉に達する道を探索しなければなりませんでした。そうして獲得した独自の思想世界を、ここでは直截に、つまり経験をとおして思想を、「生きること」をとおして「考えること」を語っていただきました。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 少し古いけれど、
    今と通じる考え方も多い。
    今でこそグローバルが当然の時代だが、
    あの時代に世界に出、
    日本という国を冷静に分析している。

    面白いぐらい、今も昔も
    日本って変わらん国だなあ。

  • われわれは絶えず「体験」を「経験」に転化させるように努力しなくてはいけない。
    つねに自分に知られない未知のものを探求していく、そういう精神によって、経験が初めて正しくなる。
    自分の内側にあるものも、経験の深みにおいて知るということ、それが自己を探求するということです。
    自分がいままで心をこめてきたことをさらに続けて、それを深める。そうすれば、経験はおのずから成熟していきます。
    「よく生きる」ということは「よく考えること」、「よく考えること」は「よく生きること」なのです。

    一人一人の人が、大なり小なり、自分が中心となる世界を築き上げていく、それが大事なことではないでしょうか。そのためには、まず自分の「経験」というものを自覚的に確立しなければいけないのではないか。これはどんな仕事をしている人でも、どんなささやかな生活をしている人でもできることです。それがささやかな生活をしている人の強さを表すことにもなると思います。
    経験の中には何もかもあるのです。それは、経験は自分で自分を批判することであり、自分で自分を救うことだからです。
    大事なのは、ある人がほんとうに自分の立脚地をおくことができる世界を、自分の中に築きあげていくことだと思うのです。

  • 難しかった...

    ちょぼちょぼ読んでたら2年かかってしまいました。

    自分の中で深めていく努力。
    それが凝固的な体験を流動的な経験に転化させていく作業であり、そのために自分で考える批判的精神を持つこと。

    「よく生きることは、よく考えること。」

    パリに移って思索を重ねた著者による独自の視点が面白かった。
    50年以上前の本だけど、現代にも通じる普遍的な内容でした。

    森有正さんは
    神谷美恵子さんの兄である前田陽一さんと同級生だったんですね。

  • 今年最初の読書は、昨年末に読んだ「アイデンティティの心理学」中で触れられていて興味を持った森有正の、著作――ではなくインタビュアーの質問に応えて語った作品。そこでは当然、氏の著作についても語られているが、それらが未読でも問題なく読むことのできる(むしろこれから氏の著作を読もうと思っている身にとっては良い入門書的な)作品になっている。
    生きることと考えることは不可分、という氏の思想の根本にある、「経験」の考え方にはとても共感できた。生きる、とは「感覚」で瞬間的に世界と繋がること。そうした「感覚」による「経験」が、他の存在と置き換えることのできない“私自身”という人間を形作っている。ひとりひとり、個人個人の、「感覚」と「経験」――それらを他にコミュニケートするための、そして自分の中でオーガナイズするツールとしての「ことば」。
    喜びとしか言えない感覚がまずあって、それを「喜び」という言葉で表現する。それはつまり、幸せも、愛も、「幸せとは何か? 愛とは何か?」と探すものではなく、「これが幸せだ」「これが愛だ」という感覚、経験からやって来るものだということなのだ(と、私は理解した)。この、まず実体が、「経験」が、「感覚」があって、初めて「ことば」があるべき、という思想には、深く意味を考えずに言葉を操り、多く喋りすぎ軽く書きすぎる私自身というものを強く反省させられた。同時に、ネットやテレビを中心に溢れる、同様な態度から生まれている多すぎる「情報」「意見」のことも考えさせれられる。
    ひとは、自分の「経験」以外のものにはなり得ない。理解すべき哲学思想として、ではなく、純粋に自分の生き方の一つの指針として、私にとって忘れずにいたい言葉がたくさん詰まった一冊だった。

  • かなり前に読んで途中だったのを読み切った。
    私の友だちでとても面白い考え方をとる友人に教えてもらった森有正さん。内容は考えていくこと、やってきて感覚で理解していることを言語化してくれてるので面白さがたくさんある。もう少し自分の考え方が変わってきたらまたぜひ読みたいなと思う。

  • 森有正さんの愛読者向けに、氏の思想が大まかにわかるように解説した本か。
    インタビューにより人生を振り返り、どんなことを考えてきたかを語っている。

    森有正さんのことは知らずに読みました。
    約 40年前に出版された本で、当時の社会の状況が前提に記述されているし
    どう読んでいいものか、勝手がわからないところがそこかしこあったんですが
    それでも、今の時代にも通用する考えがいくつも書いてあるなあと思いました。

    既に出来上がっている知識を理解し、それに従って見ることよりも
    行動して「経験」すること、自分が生きていることと知識が関連していなければつまらない。
    というように書かれた部分があるのですが、
    これは自分もすごく共感。

    ただし後半、調子が日本人への批判に傾いていくのに対しては
    ちょっと像を大まかに捉えすぎていて、偏見がすぎないかな…とも思えました。
    この辺り、生きている時代が違いすぎているのでわからないのですが。

    ともあれ、読んでいて身に感じることも多々あり、刺激的な本でしたね。

  • とても興味をそそられた。

    森さんの哲学、生き方に共感した。

    どんな知識も自分の生きていることと関係のない知識はつまらず、また自然に学ぶという姿勢。
    体験ではなく経験を。 旅行なんかでも名所を見て、はい終わりではない。そのものを見るという感覚を普段から意識して養う。

  • 第80回アワヒニビブリオバトル「出張!アワヒニビブリオバトル@天神さんの古本まつり」で紹介された本です。
    2021.10.17

  • 経験はわたしだけのもの。
    ひとつひとつ等閑にせず、敏感でいたい。

    古いながらも現代日本を表しているところがあって、驚いた。

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著者プロフィール

1911年東京に生れる。1938年東京大学仏文科卒業、卒業論文はパスカル。その後同大助教授をへて、1950年8月、戦後初のフランス政府給費留学生として渡仏。この時以降、一時的な帰国をのぞき、日本に戻ることはなかった。パリでは国立東洋語学校およぴソルポンヌで日本語、日本文学を講じ、1972年からはパリ大学都市日本館の館長をつとめた。『バピロンの流れのほとりにて』をはじめとする一連の著作は、経験と思索を独自の言語表現にまで高めたものである。1976年10月18日、パリで逝去。著書は『森有正全集』(全14巻・別巻1、筑摩書房、1978-82)にほぼ収められている。訳書にはデカルト『真理の探究』、バスカル『幾何学的精神』(ともに創元社、1947)、アラン『わが思索のあと』(思索社、1949)ほかがある。

「2019年 『定義集 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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