適応の条件 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061157002

作品紹介・あらすじ

異なる文化に接した場合の〈カルチュア・ショック〉は、日本人において特に大きい。そこには、日本社会の〈タテ〉の原理による人間関係と、ウチからソトへの〈連続〉の思考が作用している。本書は、欧米・インド・東南アジアなど、ソトの場での日本人の適応と、そこに投影された〈ウチ〉意識の構造を分析し、〈強制〉と〈逃避〉という2つの顕著な傾きを指摘する。(講談社現代新書)


異なる文化に接した場合の〈カルチュア・ショック〉は、日本人において特に大きい。そこには、日本社会の〈タテ〉の原理による人間関係と、ウチからソトへの〈連続〉の思考が作用している。本書は、欧米・インド・東南アジアなど、ソトの場での日本人の適応と、そこに投影された〈ウチ〉意識の構造を分析し、〈強制〉と〈逃避〉という2つの顕著な傾きを指摘する。著者のゆたかなフィールド・ワークをもとに、国際化時代の日本人の適応条件を考察する本書は、ベストセラー『タテ社会の人間関係』につづく必読の好著である。

システムの発見――ゴムの産地として名高いマレーシアでは、英国統治時代からいわれてきた「ラバー・タイム」というのがある。ゴムのように伸びる時間の感覚である。熱帯ではどの国でも多少こうした傾向があるのがつねである。これに対して、約束した日時を守らないといって2年間も憤慨しつづけて過す日本人などがある。何度か同じように日時が守られなかった経験をもった場合には、怒るよりも、まず「なぜだろう」と考えるべきである。必ず何か理由があり、そのおくれ方自体に一定のシステムがみつかるものである。たとえば、1ヵ月といった場合はだいたい2ヵ月を意味するとか。表現というものは必ずしも実際の数を意味しないということは、どこの文化にもあることである。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 前著『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)で語られたような集団主義に染まった日本人が、他の社会や文化に触れる際に起こる、さまざまなカルチャー・ショックのあり方を分析した本。

    とりわけ、当時東南アジアなどに進出していた日本企業の海外駐在員が、現地の人びととの間で相互不信を引き起こしている原因について、詳しく語られています。

    現在の日本では、東南アジアの国々の人びとの親日的な姿が多く伝えられているため、ほんの少し前には、日本人と東南アジアの人びととの摩擦が喧しく論じられていたことを忘れてしまいそうになります。現在の東南アジアの人びとの親日的な姿勢にも、「美しい誤解」が含まれているのかもしれない、と顧みることは必要なのかもしれません。

  • 思索

  • 異文化理解がメインテーマです。40年くらい前の本なので時代考証が必要ですが、そこを差し引いても何か物足りない…。

  • 今から45年前に書かれたとは思えない、日本の社会、人間関係について深く観察、分析された本。海外で様々な国の人と接してきた著者ならではの指摘が数多くあった。

  • そして、往路機中で読んだ本3冊目はこちら。日本社会論の名著『タテ社会の人間関係』の著者、中根千枝さんによる、日本人の「異文化適応論」。
    1970年代はじめの著書にも関わらず、ほとんど古さを感じないところはさすが。…というか、逆に言うと40年前から日本人の国際化は同じ課題を抱えているとも言える…。
    海外と何らかの形で関わりを持っている人は特に一読の価値あり。

  •  思っていた内容とは、だいぶ違っていました。2013年に読む本ではないな、と思いつつ最後まで読みました。

  • 日本の会社が、海外に出て行くときに、
    日本人が、その国の文化をどのように受け止めるのか
    というようなテーマを追求する。
    日本人が異なる環境におかれたり、予知しなかった場面に遭遇した時に、
    どのように反応するのか?
    その反応の基盤である日本的なシステム、価値観の理論的な特色。
    日本は、たて社会の人間関係が主であるので、どのように異文化に対応するのか。
    グローバリズムということが、言われる前の論評
    1972年の発行。

    まずは、海外で仕事をすれば、カルチャーショックがある。
    言葉、風俗、習慣の違いに出会う。
    日本的な思考のパターンに馴染んでいる。
    異なるシステムに、弾力性をかき、正面衝突をしやすい。
    ➡自分たちのやり方が、通用しない。
    1 拒絶反応。日本文化(システム)への逃避。しがみつく。
    2 日本人コミュニティの形成。➡仲良し。
    3 現地人への悪口を言って、気晴らしをする。➡解決しない。
    時間を守らない。約束を守らない。
    4 カルチャーショックは、感情的な要素が大きい。
    ➡コンプレックス、自信のなさ、自己防衛。

    発展性、積極性、弾力性を持って対応し、システムを堅持して、譲歩する。
    表現と実行の間の距離と表現のスタイルが違うことを理解する。

    遅れているという認識。民度が低いと思う。
    反応が、画一的で、同じスタイルで、よく似ている。

    日本的なシステムを押し付ける。
    その国のシステムが、非能率で非合理に見えても、そのシステムを認めて、
    そのうえで、効率性をイカに高めるかである。
    日本は、分業システムが遅れているが、インドなどは分業の仕組みが進んでいる。

    日本は、信頼関係を構築するのに、時間をかける。
    親分子分の情緒的な人間関係を尊重する社会的な習慣がない。
    縦社会は、『同じ釜の飯を食う』という言葉に表される。
    相手に、大きな期待があり、リターンを想定している。
    研修させても、職場が変わるという問題にどう対応するか?
    自家製人材育成システムがある。
    契約重視と 立場と社会的地位の重視。

    どう、社会に入って行くのか?
    日本コミュニティに群れる。『日本志向』
    現地社会に沈没する。『沈没組』

    国によって、当然、その魅力は違う。
    イカレポンチ的なタイプ。➡個性が弱く、思慮に乏しい。
    異国文化の吸収力が、極端となる。

    日本人は気心のあった人と共にいるというムードを楽しむが、
    会話自体のやり取りを楽しむという風習はない。
    決して、まずいことや、相手をきづつけることを言わない。
    礼儀正しく、非礼なことをいわない。
    それが、海外に出るとハメが外れる。

    日本人はよく働く、もくもくと働く。そのことが、美徳。
    それが、誤解を招く大きな要因。
    よく話す人より、よく聞く人の方が、信頼がある。
    寛大さ、洞察力、謙虚さ。相手を見下す優越感。

    縦社会。
    集団の凝集性、孤立性、順応性、そして、排除性。

    そして、日本にはどんな問題というか、
    壁が、あるのかを解明する。
    家の構造で、個性が確立できない。
    ウチとソトという考え方。
    日本人の異質を認めない連続の思考。
    ➡異質であるという認識に立って始めて相手を認識する。
    現場軽視の思想。中央中心の価値観。
    コンポジションではなく、要素のつながりとして考える。
    義理人情とは何か?
    エモーショナルと持つものと持たざるものの関係。

    社会人類学で解き明かしても、解決できないものがあるということだ。
    でも、日本人はという切り口で解決しないような気もするが。

  • (1982.03.08読了)(1982.03.01購入)
    内容紹介
    異なる文化に接した場合の〈カルチュア・ショック〉は、日本人において特に大きい。そこには、日本社会の〈タテ〉の原理による人間関係と、ウチからソトへの〈連続〉の思考が作用している。本書は、欧米・インド・東南アジアなど、ソトの場での日本人の適応と、そこに投影された〈ウチ〉意識の構造を分析し、〈強制〉と〈逃避〉という2つの顕著な傾きを指摘する。(

    ☆関連図書(既読)
    「タテ社会の人間関係」中根千枝著、講談社現代新書、1967.02.16

  • 異文化に長く接したことのある人なら、誰もがうなずきながら読んでしまうでしょう。
    世界がグローバル化していく中、私たち日本人はその時代の変化に適応できるのだろうか。

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