ノアの大洪水: 伝説の謎を解く (講談社現代新書 398)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061157989

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  • ◆オカルト雑誌にも取り上げられそうなテーマだが、豈はからん哉、地質学的見地から伝説を解剖して見せる。歴史研究において、今では当然視される文字史料に考古学・地質学をコラボさせる手法。この先駆とも言うべき書◆

    1975年刊。著者は都立立川高校教諭(元東京大学地震研究所研究官)。

     この著者略歴を見て、本書読破の意義を再確認したところ。
     そもそも旧約聖書にある「ノアの大洪水」は、「箱舟」という言葉の響きとロマンティズムを刺激するイメージとが相俟って著名な伝説となっている。ところがこれに類似する神話は、世界各地に存在する。
     では、どうしてそうなったのか。伝播という考えもあろうが、ここでは地質学・構造地形学を専攻した著者ならではの解読が見事である。

     種明かしをすれば、直近1万年間の地球の気候変動、氷河後退・縄文海進と呼ばれる現象に関わる。

     70年代の刊行時という制約もあり、メソポタミア古代の環境に関する最新の知見は盛り込まれていないものの、そこを除けば、地質学徒らしい雄大な分析が目の前に広がって見えるだろう。

     旧約聖書、あるいはそれより遥かに先んじているギルガメッシュ叙事詩絡みでは、メソポタミア、シュメールが地域的な対象となるが、さらに洪水伝説の存する、アメリカ、欧州に筆が及び、また、浦島太郎伝説との関わりで日本にも言及される。

     勿論判明している文字史料、特にメソポタミア関係のそれは疎かにしているわけではない。
     言うなれば、考古学的知見のみならず、地質学的知見が、文字史料の穴を埋め、誤謬を正し、実証性を付与する。現代では当然の営みだが、70年代の新書で展開させた。この点に、研究手法における、ある種のパイオニアの匂いを感じずにはいられない。そんな一書である。

  • 読書録「ノアの大洪水」4

    著者 金子史郎
    出版 講談社

    P198より引用
    “大洪水というものは、古老の語り伝えるよ
    うに、何十年かに一度はおこるもの、という
    ことも忘れられている。”

    目次から抜粋引用
    “「ノアの大洪水」とその時代
     「ノアの大洪水」はあったのか
     ヨーロッパをおおった氷河
     水没した大地と島々
     せまりくる「ノアの大洪水」”

     理学博士である著者による、世界中の伝説
    に見られる大洪水について著した一冊。
     シュメールの粘土板に書かれた記録につい
    てから現代の洪水への警鐘まで、歴史や地質
    学的な研究を元に書かれています。

     上記の引用は、現代の人びとが作り出して
    いる洪水の原因について書かれた項での一文。
    災害に備えて治水工事をするだけではなく、
    生き方についての見直しも考えなければなら
    ないのかもしれませんね。
    自分たちの子どもや孫の事を考えるのなら、
    今を気楽に過ごすということを諦める、とい
    う選択肢も頭の隅において置かなければいけ
    ないのではないでしょうか。実際に出来るか
    どうかは別として。難しいことかもしれませ
    んが。

    ーーーーー

  • 世界の洪水伝説をもとに、陸地と水際のせめぎ合いの構図を、地質学敵に解き明かす。表題のノアの大洪水は、最初と最後に登場するのみで、宗教的な解釈はほぼ皆無だか、この有名な大洪水に相似する伝説は、世界各地に伝わるようで、どれも選ばれ生き延びた者が、世界再生の礎になる。洪水というと、豪雨と河川の氾濫を思い浮かべるが、必ずしもそうではなく、氷河解氷や海面上昇が、伝説化されたものもあるという(本書では触れていないが、津波の場合もあったであろう)。1975年の本なので、地質学や地球上物理学の話題が、ちょっと陳腐化しており、プレートテクトニクスが出てこない事に違和感を覚えた。

  • 気象学、地形学からみた世界の大洪水と古代都市(集落)。

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